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【109カ月目の汚染水はいま】「内堀知事は海洋放出に反対しろ!」 陸上保管求める市民団体が福島県に要請書 「コロナ禍に紛れて決めるな!」

原発事故後に大量発生している〝汚染水〟の陸上保管を求めている市民団体「これ以上海を汚すな市民会議」が21日午後、環境中への放出に明確に反対する事などを求めた要請書を福島県の内堀雅雄知事に提出した。安倍晋三首相や梶山弘志経産大臣などには、国内外325団体の賛同を得た共同声明を郵送。陸上保 管を続けるよう訴えている。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、国は福島県内で「関係者の御意見を伺う場」を強行。大気や海洋への放出を軸に夏にも結論を出す方針で、市民団体は「どさくさ紛れに決めるな」と声をあげている。

【「国民的合意が必要」】

 福島県庁内の会議室で、原子力安全対策課の伊藤繁課長が代わりに要請書を受け取った。内堀知事に対する要請項目は次の3点。

 ①福島県漁業組合協同組合連合会、福島県森林組合連合会、福島県農業協同組合中央会など福島県内農林水産業の代表的組織が反対している、タンク貯蔵汚染水の大気及び海洋放出処分案について、本県として反対の意思を表明すること

 ②トリチウム分離技術の開発実用化、タンク貯蔵汚染水の大型タンク保管やモルタル固化保管など陸上保管の具体的検討について、国と東電に求めること

 ③事故炉の汚染水の処理について、国際関係に配慮し、国権の最高機関である国会での議論、全国各地での公聴会の実施など国民的議論と国民的合意のもとで、処分方針を決めるよう国に求めること


 「これ以上海を汚すな市民会議」の共同代表を務める佐藤和良さん(いわき市議)は「福島県は被災県として、積極的に国や東電にものを言って欲しい。『風評対策』を口にするのであれば、実害を出さないのがまず第一。隣県の知事の発言を聞くまでも無く、被災した県民や農林水産業者が明確に反対している以上、県民の代表として明確に陸上保管を求めていただきたい」と訴えた。

 「これは国際問題。国会や日本全体で説明会や公聴会を開くべきだ。国民的な合意無しに、国が7月までに処分方針を決めれば良いというものでは無い」

 福島市の木幡浩市長は記者会見やSNS上で「福島という名の付かない場所での海洋放出が妥当」、「どうしても近場でというなら、福島第一原発の発電による恩恵の大きかった地域の海で放出するのが筋」などと発言している。これについて佐藤さんは、要請後の記者会見で「海に投棄するのは国際法上出来ない。住民の間からも東京湾に捨てろという意見はあるが、決して安全では無い。実際にはトリチウムだけでなく9核種も含まれているのだから、やはり陸上に保管するべきだ」と語った。

要請書を手渡す佐藤和良さん(いわき市議)。「福島県は被災県として、積極的に国や東電にものを言い、陸上保管を明確に求めて欲しい」と訴えた=福島県庁

【「陸上保管こそ風評対策」】

 汚染水の処分方法を巡っては、経産省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」が今年2月、「技術的には、実績のある水蒸気放出及び海洋放出が現実的な選択肢である」などとする報告書を取りまとめ、事実上、陸上保管を排除している。

 今月6日には、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため人の往来自粛が呼びかけているにもかかわらず、福島市内のホテルで「第1回多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場」を開催。13日には福島市と富岡町で第2回が開かれた。農林水産業者などから環境中への放出に反対する声があがったほか、浪江町議会は3月議会で「福島第一原子力発電所構内に保管中のトリチウムを含む処理水の海洋放出に反対する決議案」を全会一致で可決している。

 「いわきの初期被曝を追及するママの会」の代表を務める千葉由美さんは「海洋放出ありきで議論が進められている事に対しては、どうにか止めて欲しいという多くの声を今日は託されて来た。どうしたら子どもたちを守っていけるのか、という視点が議論の中に含まれているのだろうか。もどかしく、大きな怒りを持っている。どうやって子どもたちを健康に育てていったら良いのかという状況下に置かれている私たちとしては、出来る限りの防護策を講じていただきたい。県は、そういう声を県は国に届けて欲しい。ぜひ強い姿勢で、海洋放出ありきで進めないでいただきたい。もっと時間をかけて、もっと多くの意見に耳を傾けて欲しい」と訴えた。

 郡山市議の蛇石郁子さん(虹とみどりの会)も「これは世界からも注目されている公害問題。コロナ禍のどさくさに紛れて、急いで決断する事の無いようにしていただきたい」と求めた。そして、県職員にこう強く訴えた。

 「一番の風評対策は、せっかく保管している汚染水を海洋や大気中に放出しない事です」
要請書を提出した後に開かれた記者会見。〝3密〟を避け、窓を開けて換気をした中、参加者は「コロナ禍のどさくさに紛れて決めないで欲しい」などと訴えた

【茨城県は明確に反対】


 要請を受け、福島県原子力安全対策課の伊藤課長は次のように述べた。

 「ALPS処理水の問題については、これまでも国の方で科学的な問題、風評的な社会的な問題について議論されてきた。福島県内外の意見を聴いた上で国が最終判断するものと考えているが、福島県としては、原子力政策を進めて来た国が責任をもって判断してもらいたいと考えている。その際には、地元関係者の意見を聴いて慎重に判断していただきたいと、これまでも国や東電に申し上げている。風評対策、健康への心配という声も聞いているので、そういった疑問に国がしっかりと説明する必要があるのではないか。また、具体的な風評対策も示していただきたいと考えている」

 「決定のプロセスには透明性が必要」とも述べたが、国に求める風評対策の具体的な中身については「様々な取り組みが必要だ」と答えるにとどまった。

 汚染水の処分方法を巡っては、2月26日の福島県議会で宮本しづえ議員(日本共産党福島県議会議員団)が代表質問。しかし、内堀雅雄知事は答弁せず、成田良洋危機管理部長が「多核種除去設備で処理した汚染水の取扱いにつきましては、これまで国の小委員会において社会的影響もふまえ様々な観点から議論が進められ、2月10日には検討結果を取りまとめた報告書が公表されたところであります。県と致しましては、国および東京電力に対し、小委員会の提言内容をふまえ引き続き幅広い関係者の意見をていねいに聴きながら慎重に対応方針を検討するよう求めて参ります」とだけ答弁した。

 また、2月28日は古市三久議員(福島県議会県民連合議員会)も代表質問で県の姿勢を質したが、答弁に立った内堀知事は「県と致しましては、国および東京電力に対し、小委員会の提言内容をふまえ引き続き幅広い関係者の意見をていねいに聴きながら慎重に対応方針を検討するよう求めて参ります」と答弁するばかり。ほぼ〝ゼロ回答〟だった。

 なお、茨城県の大井川和彦知事は2月4日に発表した談話の中で「これまでの関係者の努力を慮ることなく結論ありきの取りまとめを行うことは容認できるものではない」、「より影響の出ない方法がないか、さらなる検討を強く期待する」と強いメッセージを発している。


(了)

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