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日韓通貨スワップの大いなる誤解

本日、日経の社説の欄をみると、「竹島問題提訴を韓国の猛省促す機会に」と書いてありました。

偶にはいいことを言うじゃないか!

でも、こんなことも書いてあるのです。

「韓国との対立をやみくもにあおるのは得策ではない」「経済の分野まで広げて対抗措置を講じるのはいかがなものか」「通貨交換枠の縮小にしても韓国の金融市場が混乱を来すようなことがあれば、日本にも悪影響が及ぶ」「中国はかつて尖閣をめぐり日中対立が激化した際、レアアースの対日輸出を制限した。日本が似たような対応をすれば、責任ある大国としての信用をなくす」

確かに対立をやみくもに煽るのは得策ではないでしょう。でも、誰がそんなことをしているというのでしょう?それに、通貨スワップを縮小すれば、日本は手段を選ばない中国と同じだ、とまで。

中国と同じ?

そこまで言うのか、と日経に言いたい。

それに、そもそも日経は、通貨スワップについて十分理解していないからそんな的外れなことが言えるのではないのか?

では、日経は通貨スワップの何を理解していないのか?

私は、先日日韓通貨スワップについて書きました。スワップなどという言葉を使っているが、通貨スワップ協定を結ぶことによる利益は韓国にのみ発生し、従って、これは純粋な韓国支援策である、と。

そうしたところ、このブログの記事を読んだ人のなかには、そうした事実はネットの住人はよく知っているとの指摘がありました。

私もそう思います。こうしたことに関心のある人なら、日韓通貨スワップの真の意味を薄々ながらも気が付いていることでしょう。反対に、こうしたことに関心のない人は、幾ら言ってもなんのこっちゃいな、と。

それでは、この日韓通貨スワップが純粋な韓国支援策であるという前提で話を進めましょう。

最初に、中国への円借款供与、或いは韓国への円借款供与というのが過去長い間行われてきた経緯があるのですが、今はどうなっているでしょう?

もちろん、そうした支援は今は行われていないのです。

何故?

それは韓国も中国も立派に経済成長を果たし、日本がODA(政府開発援助)を施す必要がもはやないと確認されているからに他ならないのです。

中国は北京オリンピックを境に円借款から卒業した訳ですし、韓国に至っては、今から20年以上前に決定された円借款が最後のものになったのです。

因みに、韓国への最後の円借款は、韓国の地下鉄建設のために供与されたもので、私もその関係で初めてソウルを訪れた経緯があるのです。最初は、課長に韓国出張に行ってもらう予定だったのが、「こんな寒い時に、韓国に行けるか」という一言で、部下の私がいく羽目に。

いずれにしても、そうして韓国が一人前の国になったので、もはや日本が韓国を支援する必要はなくなったのです。

では、何故日韓通貨スワップという名の、韓国に対するクレジットラインの供与が行われるのか?

その発端はアジア通貨危機にあると思うのです。韓国からどんどん資本が流出し、どうにかしてそうした資本逃避を抑えないことには韓国経済が破綻してしまう、と。

では、そういう時に活躍するのはどの機関かといえば、それはIMF。IMFは、韓国が開発途上国ではなくても、国際収支の困難に遭遇するようなことになれば、それを食い止めるべく支援の手を差し伸べてくれるのです。

なんと有難いことか!

但し、IMFに支援を仰ぐためには、それと引き換えに緊縮財政政策を実施することを約束させられるために経済は一気に失速してしまうのです。つまり、失業の大量発生につながってしまう、と。

もっともそうやって国内経済が冷え込むから韓国の輸入も減り、結果として、国際収支の改善が見込まれ、同時に通貨安を利用して輸出攻勢をかけることができるのです。

しかし、それにしても副作用が酷すぎる、と。だから、韓国はそうやって資本の海外逃避が起きた際に、IMFの支援を仰がずに済ませる方法を模索してきた訳なのです。

つまり、その答えが、日本との通貨スワップ。お互いの中央銀行同士が通貨を交換、つまり融通し合えば、万が一のときにも韓国としては外貨不足に陥らなくて済む訳です。だから、通貨交換の枠は大きければ大きいほど安心だ、と。

そして、皆さんご承知のようにユーロ危機ということもあって、その日韓の通貨スワップの枠は、今や700億ドル(約5兆5千億円)にまで膨らんでいるのです。

では、これから誤解を解きたいと思います。

日経の社説は、先ほど紹介したとおり、日韓通貨スワップの枠をいきなり縮小するようなことをしてはいけないというのです。やったら、日本にも害が及ぶし、そして中国のように批判されるぞ、と。

しかし、そもそも、この通貨スワップは今年の10月までの時限措置であるのです。

だから、例えば日本が期限を定めずに韓国にクレジットラインの供与をコミットして起きながら、今回の大統領の不規則発言に反応して約束を反故にするのとは訳が違うのです。始めから今年の10月が期限であり、それを延長するためには新たな意思確認が必要になるのです。

因みに、韓国側の言い分としては、外貨準備も潤沢であり、こうしたスワップが失効しても全然困らないと言っているのに、何を日経は心配しているのでしょうか?或いは、韓国側に不安材料があるのであれば、それなら韓国はそれを率直に認めたら如何でしょう?

それに、もう一つ重要な事実を指摘したいと思うのです。

国と国との間で行われる通貨スワップは、通常は双方の中央銀行の間で締結されるのが原則です。つまり日本銀行と韓国の中央銀行の間で結ばれる、と。従って、幾ら実質的にみて、この日韓の通貨スワップが韓国支援の意味しかないとはいっても、中央銀行同士が慣例に従ってそうした協定を結ぶのであれば、国民としてとやかく言うことはできないのです。だって、中央銀行の独立性はある程度確保されているからです。

しかし、今問題になっている韓国との通貨スワップ700億ドルについては、中央銀行同士のスワップは半分にも満たない300億ドルにとどまっているのです。そして、残りの400億ドルについては、誰が当事者になっているかと言えば、日本政府、細かく言えば外為特別会計が韓国の中央銀行と協定を締結しているのです。

つまり、通貨スワップと言いながらも、その半分以上は伝統的な通貨スワップではなく、日本政府が韓国の中央銀行相手に、韓国のウォンを担保にお金を貸す契約をしているに過ぎないのです。

しかし、先ほど言ったように、韓国は、もはやODAの対象にならない国。つまり、通常であれば、日本政府が融資を行うような国ではないのです。にも拘わらず日本政府は外為特会というブラッボックスを通じて、自ら定めたルールに違反するような行為を行っている訳なのです。

さらに言えば、外為特会で保有するドルを利用するとはいっても、そもそもそのドルは、外為特会が政府短期証券を発行して得た円で購入したドルに他ならないので、結局韓国に融資するドルは、日本政府が借金をして得たドルということになるのです。

そして、そうやって韓国にドルを融資するということになれば、そのドルは将来返済されないリスクもあり、またそこまで言わなくても、そのドルは当分日本政府として利用が不可能になる訳ですから、外貨準備から除外しなければならない性質のものとなるのです。そのような事実をどれだけの人々が知っているのか?

もちろんこうした支援が緊急の事態に対応するためのものであれば、その時にはそうした細かいことを問題にする時間的余裕もないのでしょうが、しかし、今韓国はそうしたスワップがなくても全然問題はないというなかでそうしたルール違反の行為を繰り返すことが果たして適当なのかどうか、ということなのです。

もちろんこの先、再び韓国が通貨危機に見舞われるような際には、日本はそれを黙って見逃すことはないと思うのです。しかし、だからと言って、今までのように甘い姿勢を取り続けるだけでは決して韓国のためにもならないと思うのです。

竹島の問題にしても、通貨スワップの問題にしても、先ずは事実をよく把握することが日韓双方にとって大切であると思うのです。そこのところをいい加減にしておいて、どうして真の解決策が見つかるというのでしょう?

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