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人類は新型コロナウイルスといかに共生すべきかを考える

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 新型コロナウイルス感染症は一時は収拾がつかなくなっていた欧米諸国が、落ち着きを取り戻しつつあるのに対し、日本は依然として正確な感染状況が把握できていないこともあり、早くも2週間後に控えた緊急事態宣言の期限の延長が取り沙汰される事態となっている。まだまだ行動制限による新型コロナウイルスの抑え込みが必要な日本ではあるが、同時に、抑え込みに躍起になっている今だからこそ考えておかなければならないことがある。それは、ロックダウンかマイルドロックダウンかはともかく、どう考えても現在のような行動制限を未来永劫続けられるわけがない以上、その出口のタイミングとそれ以降われわれはコロナとどう向き合っていくのかという問題だ。

 感染爆発の抑え込みに失敗した国やその危険性に瀕した国が、医療崩壊による大量の死者を避けるためには、とりもなおさずまずは感染拡大の抑え込みを優先せざるを得ない。そのフェーズで誰もが感染しないためのあらゆる努力を払うしかない。しかし、一旦、危機的な状況を乗り越えた後は、いつまでもただ単に抑え込みを続けていればいいというわけにはいかない。抑え込みによる経済的な損害や精神的な負担も大きいことももちろんだが、同時に、医療崩壊を起こさない範囲でという条件付きながら、われわれはゆっくりと感染者を増やしていくことによって新型コロナウイルスに対する抗体を持った人口の割合を一定程度まで引き上げ、免疫の壁を作る必要がある。それができない限り、早期にワクチンの開発にでも成功しない限り、このウイルスは人類にとって常に現在と同じような脅威であり続けることになるからだ。

 『感染症と文明』などの著書があり、感染症の歴史に詳しい長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授は、望むと望まざるとにかかわらず、この地球上に新型コロナウイルスというものが登場してしまった以上、人類はそのウイルスと共存するための道を探っていくしないと語る。それと徹底的に戦い、最後にはそれを撲滅させるという手もあるではないかと思う向きもあるだろうが、そもそも撲滅させることは容易なことではないし、また必ずしもそれは得策ではないかもしれないと山本氏は指摘するのだ。

 それはどういうことか。例えば人類は天然痘の撲滅に成功した。感染症を引き起こすウイルスで人類が完全に克服したのは、後にも先にも天然痘が最初で最後なので、これこそが人類の感染症医学の金字塔のように称賛されることが多い。また、確かにこれが大変な功績だったことも間違いない。しかし、天然痘のウイルスが撲滅したことによって、その後に生まれた人類は撲滅前に生まれた人類が持っている天然痘に対する抗体を持っていないことになる。もし、将来、撲滅したと思っていた天然痘が何らかの理由で復活したり、あるいはそれと似通った感染症が登場した時、どちらの人類が生き残るチャンスがより大きいか。そのような意味も含めて、人類にとってウイルスというものは、単に抑え込んだり撲滅すべき対象と受け止めるべきではないと山本氏は言うのだ。

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