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焦点:米国債17兆ドル市場に構造問題、弱まる大量売りの吸収力


[22日 ロイター] - 最近の米国債市場の流動性危機は、17兆ドル規模のこの市場に恐らくすぐには解決できない構造的な問題があることを露呈した。市場では再びボラティリティ―が高まり、米政府の国債売却コストが上昇する恐れがある。

新型コロナウイルスの感染防止に向けた企業活動の停止で景気後退への警戒感が高まり、米国債市場は3月に大きく混乱した。現金確保のための国債売りは、ディーラーのバランスシート力を圧倒し、市場から一時撤退するマーケットメーカーも出た。

2007─09年の金融危機を受け、大規模銀行の過度のリスクテイクを抑制するために導入された規制で、大手銀行が大量の国債売りを吸収できる力は弱まっている。

電子取引システムを運営する企業は金融危機以降、国債市場でシェアを伸ばしてきたが、こうした企業は、より流動性の高い直近に発行された国債に焦点を当てているほか、大規模銀行よりも取引規模が小さい。また、3月のように市場が乱高下した際には、取引を縮小することもある。

電子取引システムを運営するオープンドア・セキュリティーズの最高投資責任者(CIO)、ジョシュ・ホールデン氏は「市場の流動性不足は、ディーラーが必ずしも一方向の大規模な資金の流れを吸収できるほどのバランスシートを確保していない、という米国債市場の構造的な問題を露呈した」と指摘。「米国債市場の流動性は改善したが、元の状態に戻るにはかなりの時間がかかる」との見方を示した。

同社は「オフ・ザ・ラン」として知られる既発行の銘柄に焦点を当てている。

国債市場でシェアが最も大きいオフ・ザ・ラン銘柄は、3月に深刻な流動性問題に直面した。取引コストは2月と比較してまだ高止まりしており、発行から期間が経っているものほど回復が遅れている。

オープンドアの流動性スコアによると、約5四半期前に発行された米10年債の売り・買いを行った場合のコストは現在、100万ドルの取引で約600ドル。今月初めの1000ドルからは下落したが、2月初旬の約400ドルは依然上回っている。

JPモルガンのアナリストは、市場の厚みやプライスインパクトなどの流動性を示す指標は、長期平均と比較した場合に引き続き圧迫されていると指摘する。

このところの約75%の流動性の回復は、ハイ・フリークエンシー・マーケット・メーカーが戻ってきたことが大きいという。

JPモルガンのアナリストは「これらの市場参加者はここ数年、実現ボラティリティー(realized volatility)に一段と敏感になっている」とし「このことは、ボラティリティ―が少しでも上向けば、これまでの上げがすぐに取り戻され、悪循環が再び始まるということを意味している」と指摘した。

<FRBが市場を下支え>

財務省は、新型コロナ対策として打ち出した景気対策の財源を確保するため国債発行を大幅に増やしているが、国債市場で再度ボラティリティ―が高まれば、こうした資金調達に影響が出る恐れがある。

これまでの入札ではおおむね堅調な需要がみられるが、新発債の発行は短期証券(Tビル)に集中している。

今後長期債を発行する際、財務省は利回りを高く設定しなければならない可能性があり、特に、市場環境が悪化した場合にはそのリスクが高まる。

3月にボラティリティ―が高まった際、外国中銀など一部の投資家は国債購入を減らしている。

一方、米連邦準備理事会(FRB)は2月以降、2兆ドル以上の国債買い入れを行っており、市場の安定化に寄与している。今後、ペースは落ちるものの、国債と住宅ローン担保証券(MBS、モーゲージ債)の購入を続ける。

FRBは今月に入り、大手銀行の補完的レバレッジ比率(SLR)規制を一時的に緩和し、銀行が保有する米国債やFRBに預ける準備預金を同比率の算出から除外することを認めると発表。市場に安心感を与えた。

BMOキャピタル・マーケッツ(ニューヨーク)の米金利ストラテジスト、ジョン・ヒル氏は「これは明るい一歩で、市場で注文をつなぐ仲介やマーケットメーキングを支援する」と評価。その上で、「ただ、結局のところ米国債市場は世界最大であり、今後さらに大きくなる」と指摘した。

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