- 2020年04月26日 06:01
金正恩健在でも米朝関係の後退必至か - 樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)
1/2コロナウィルスが蔓延するさなか、北朝鮮の独裁者の重病説が流れた。金正恩・朝鮮労働党委員長が心臓血管系の手術を受けた後、重体に陥っているという。コロナから逃れて地方に滞在しているという見方もあり、情報が錯そう、真相は藪の中だ。
日本、アメリカ、韓国は事態を注視しているが、重病説が事実とすれば事は深刻、昨年来の米朝対話の中断と相まって、「ワシントンと平壌の雪解け」は後退するという分析もなされている。
専門医を総動員
米CNNテレビが情報当局者の話として、重体説を報じたのは4月20日。確度は高いとしながらも、どの程度の状態か評価するのは困難との指摘があるとの見方も伝えた。
金正恩氏は毎年、祖父の故金日成主席の生誕記念日である4月15日に、遺体が安置されている綿繍山宮殿に詣でるが、ことしはその姿がなかった。4月11日以降、動静が確認されていない。
ソウルに拠点を置く北朝鮮ウォッチのサイト「デイリーNK」も同日、同様のニュースを詳細に報じた。
金正恩氏は4月12日、平安北道の妙香山にある金一族の専用病院で手術を受けたという。平壌の金萬有病院の外科医が執刀、朝鮮赤十字総合病院、平壌医科大病院の医師らも動員された。経過は良好で、医師団は一部を残し、平壌に戻ったという。
金氏は現在36歳とみられるが、ヘビースモーキング、肥満、過労などから昨年8月以来、健康状態が悪化していた。「デイリーNK」によると、手術が行われたという12日は、平壌市内でヘリコプターの離陸や金氏専用車の移動などが目撃されたという。
米国、韓国は否定
容体について、「デイリーNK」とCNNでは食い違っているが、アメリカのトランプ大統領は21日の記者会見で、「だれも確認していない。(CNNで)伝えられたような容態ならば、回復することを祈っている」と慎重な見方を示し、「われわれはとてもいい関係を築いてきた」とも述べた。大統領は23日には「CNNは古い資料を基にしているのではないか」と自らに厳しい報道姿勢をとるTV局をあてこすった。
ハイテン統合参謀本部副議長も22日、「(重病説を)否定や肯定する材料はない」「核を含む北朝鮮の軍事力はコントロールされている」との見解を示した。
コロナから逃れて〝疎開〟か
韓国政府は一貫して慎重な見方をとっている。大統領府報道官は21日、「北朝鮮内部で特別な動きはない」と発表。聯合ニュースも、大統領府高官の発言として「側近らと地方に滞在している。正常に活動しているようだ」と報じた。
23日付の産経新聞は韓国情報当局者の話として「コロナウィルスの感染を避けるため、人口が密集している平壌を離れ、東部の元山地区に滞在している」と伝えた。
コロナウィルスについて北朝鮮は国内で感染が広がっていること否定しているが、米国の北朝鮮専門家によると、蔓延の兆候がみられ、平壌にある国連関係機関の職員のひとりが、断定はできないものの感染の疑いをもたれているという。
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