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望月衣塑子氏 ゴーン氏告白に「記者として反省させられた」

東京新聞の望月衣塑子記者

 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)は2人の対話をどう読み取ったか。

 * * *

 私はかつて司法記者クラブに3年ほど所属し、東京地検特捜部の手がける事件もいくつか取材しました。その経験からゴーン事件を見ると、ゴーン氏が将来受け取ることになっていた報酬を記載していなかったことについて、「有価証券報告書の虚偽記載容疑」で立件することは、そもそも難しかったのではないかと感じています。

 また、容疑内容に比べて、勾留期間が長いと思います。裁判所が勾留を延長するか、釈放を認めるかどうかの判断をする際に「この後、別容疑が控えているだろう」と先入観を持ってはいけません。

 結局、ゴーン氏は特別背任容疑でも起訴されました。特別背任は立証のハードルが高く、さらに今回は関係先が海外にまたがるため、公判維持は難しいのではないかと感じていました。無理を承知で踏み切ったのかなという疑問も頭をかすめましたが、報道ではそういうトーンは少なく、旧来型の「犯人視報道」も目立ったのは驚きました。

 昼夜を問わず当局の動きを追いかけ、少しでも他社を出し抜こうと“特ダネ競争”ばかりに意識が向くと、事件全体を俯瞰したり、容疑者の人権に配慮したりすることができなくなることがあります。担当記者は特捜部の“従軍記者”にならざるを得ない側面があり、その中で“強欲ゴーン”という、検察側のストーリーに乗った記事を書いてしまいがちです。過去の自分も含めて反省しなければなりませんが、結果、記者が捜査当局に体よく使われてしまう。

 改めて事件報道の在り方を考えさせられました。

 話は変わりますが、ゴーン氏の逮捕当時の法務事務次官は、最近定年が延長された黒川弘務氏でした。黒川氏は菅官房長官と近いとされている人物。捜査の着手の時点で菅氏や官邸側に事前に報告があったと考えるのが自然です。ゴーン氏は事件について、官邸や政府高官の関与を口にしていますが、それが誰なのか。今後明らかになる可能性があり、注目しています。

●望月衣塑子(もちづき・いそこ)/1975年、東京都生まれ。東京・中日新聞社会部記者。官房長官会見での厳しい質問で知られる。著書に『新聞記者』など。

※週刊ポスト2020年5月1日号

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