- 2020年04月23日 14:27
新型コロナ対策で女性のリーダー活躍目立つ 男女平等の職場づくりの実現は可能か?
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新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大する中、4月7日、日本でも緊急事態宣言が出された。各国・地域は感染防止措置に躍起となっているが、女性が指導者になっている複数の国がコロナ対策を成功させたとして賞賛の対象となっている(米フォーブス誌記事、4月16日付)。
台湾の蔡英文総統は早期に防止措置に取り組み、都市封鎖を避けることができた。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相、アイスランドのカトリン・ヤコブスドッティイル首相、フィンランドのサンナ・マリン首相なども迅速な決断力、テクノロジーの活用、情報発信力によって国民から高い評価を受けた。
日本でも、小池百合子東京都知事が指導力を示しているが、職場などのビジネスシーンではどうだろうか。
昨年12月、国際機関「世界経済フォーラム」が世界における男女格差の度合いをランキングした「ジェンダー・ギャップ指数」を発表したが、日本は調査対象の153カ国の中で121位というこれまでで最も低い数字を記録している。
ランキングは「経済活動への参加と機会」、「教育」、「健康と寿命」、「政治への関与」の4分野での国ごとの男女格差を算出した数字を比較したもので、「健康と寿命」では40位なのに、「政治への関与」では前年の125位から144位に下落してしまった。
どうやって事態を変えていったらいいのだろう?
そのための指南役となる一冊が、『#MeToo時代の新しい働き方 女性がオフィスで輝くための12カ条』ジョアン・リップマン著、金井真弓訳、文藝春秋)である。
働くことに焦点を置いてはいるものの、男女がより平等に、互いに気持ちよく生きるための本ともいえる。その特徴は豊富なデータや逸話を紹介していること、そして、男性も巻き込んで、女性と一緒に考えようと呼びかける点だ。
「自分を低い存在としてみるクセが抜けなかった」
ジョアン・リップマン氏
アメリカの大手メディア企業ガネット社の元幹部。名門イエール大学を卒業後、経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」で働きだした。統括した特集記事がアメリカのジャーナリズム賞としてはトップクラスのピューリッツア賞を受賞。全国紙「USAトゥデー」の編集長も務めた。

筆者は同氏がメディア会議で演説する様子を見たことがあるが、すらりとした体形をシックなワンピースで包み、きびきびとした、ダイナミックな口調で話す、一言でいえば「バリバリのキャリアウーマン」風であった。
ところが、実は、メディア界という男性の割合が圧倒的な職場の中で「自分にはできない、と尻込みしてしまい、自分を低い存在としてみるクセが抜けなかった」と本書で告白する。他人から見たらうらやましいようなキャリアを築いてきたリップマン氏でさえも、当初は女性として働くことへの葛藤があった。
その理由についてリップマン氏は直接は書いていないが、一般的に子どもの頃から女性を軽く見る教育や文化が続いてきた例が挙げられている。
リップマン氏は、女性の地位向上のために女性だけで話しているのではダメだという認識を持つようになった。まずは女性たちがどんな問題に直面しているのかを男性たちに知ってもらい、ともによりよい状況を作っていくべきと思い、執筆に乗りだした。
男性が知らない女性の世界
筆者がはっとしたのは、女性が働くことでどれほどの負担を強いられているかを示す例だった。例えば、女性は「外見を見苦しくないものにする」ためにメイクをしたり、ファッションに気を遣ったりする。
本書で紹介されている計算によると、40年間働く場合、女性は平均的な男性よりも1万80時間多くの時間を基本的な身だしなみのために費やすという。これは労働時間の5年間分に近い。女性が子どもの世話や家事にかける時間は男性よりも長い場合が圧倒的な上に、この5年間分である。

また、会議では「女性は全く話さないか、自主規制するか、または質問みたいにして恐る恐る意見を持ち出す。ガンガン意見を述べる女性は邪魔されるか、無視される」ことがよくある、という。
リップマン氏自身も長い間、会議ではほとんど発言しなかった。「ばかげた考えだと思われるんじゃないかと怖かった」からだ。
男性は自分が女性の話をさえぎってきたことさえも気づいていないのではないか、とリップマン氏は問いかける。
オフィスの温度は「70キロの40歳男性」を基準に設定
本書では、知らない間にいつしか「男性基準」になっている例が紹介されている。
例えば、夏にオフィスで働いていて、「寒いな」と感じたことのある女性はいないだろうか。
筆者自身も会社員時代によくそう思ったものだ。今でも国際会議に出かけると、「夏なのに、寒い」と感じることが多く、長そでのジャケットやカーディガンを羽織ることが欠かせない。

米ニューヨークタイムズ紙の調査によると、「オフィスの温度は男性の体を基準に」設定されている。大半のオフィスの建物は体重が70キロの40歳男性の平均的な基準によって計算された理想的な室温が採用されているという。そこで、ワンピースを着てハイヒールを履いた女性には極寒の室温となってしまう、と本書は指摘する。
オフィスのエアコンの問題だけだったらまだ対処できるとしても、例えばこんなこともある。アメリカで車のエアバッグとシートベルトが主として男性の体型に合わせて設定されていた(2011年の調査)。
また、女性が日常的に処方される睡眠薬「アンビエン」の投与量が過剰だったこと(2013年)も分かってきた。後者は検査に男性を使ったからだ。見逃せないことが起きていた。
Google画像検索で「医師」と入れてみると
私たちが頻繁に利用する、インターネットの検索結果に普段は特に意識していない偏見(バイアス)、あるいはステレオタイプが表れてしまうことをご存じだろうか。
ある時、リップマン氏はプレゼンテーションのための写真を探すため、Googleの画像検索で「医師(doctor)」という言葉を入れてみた。結果はほぼ全員が男性で白人だった。「看護師(nurse)」はほぼ全員が女性、かつ白人だった。

これだけだったら、「世の中の医師のほとんどが男性で、看護師のほとんどが女性なのだから」という弁護は不可能ではないかもしれない。
しかし、男女の平等に焦点を当てている国連で働く女性たちが、2013年、Googleの自動入力機能を使ってある言葉を入れると、女性差別的表現が出てきたという。
「女性がやるべきではないことは」と入力すると、頻繁に出てきたのは「権利を持つこと」、「投票すること」、「働くこと」、「ボクシング」など。
「女性に必要なのは」という入力では、「分をわきまえること」、「身の程を知ること」、「支配されること」、「しつけをされること」など。
検索度の高いものを示すので、「私たちの率直な考えを測るのに公正な方法」だ。リップマン氏はこうした結果に私たちの「無意識のバイアス」が表れている、という。
同氏によると、私たちには誰にでもこうした無意識のバイアスがある。例えば、子どもの頃から、男性には将来、指導的立場になることを期待されている。



