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売上が頭打ちだった"カロリーメイト"の役割を180度変えた「逆転の発想」とは

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皆さんおなじみのカロリーメイト。一度も食べたことがない、あるいは知らないという方はそんなに多くないのではないでしょうか。では、そのカロリーメイトのCMが大きく変わったことをご存じでしょうか。なぜ、CMが変わったのか、インサイト分析の第一人者・桶谷功さんが読み解きます。

オフィスで仕事をする女性たち※写真はイメージです=iStock.com/kokouu

カロリーメイトのCMに一体何があったのか

プレジデント ウーマン オンラインをお読みのみなさん、こんにちは。桶谷功です。

この連載は身近な商品を例にとり、その背景にどんな企業戦略があるのかを読み解いていくというものです。前回は高級アイスクリームの「ハーゲンダッツ」を取り上げました。今回は大塚製薬の「カロリーメイト」を分析してみたいと思います。

カロリーメイトのCM、“KEEP THINKING”編がオンエアされたのは、2019年の春のことでした。サカナクションの山口一郎さんが、たくさんの機材に囲まれてコンピュータを操作しながら、カロリーメイトを口にします。でも視線はモニターを見たままで、表情も特に変化なし。そこへ山口さん自身による、こんなナレーションが入ります。

「考え続ける人にとって、栄養は味方になる。満腹は邪魔になる。“KEEP THINKING”、バランス栄養食、カロリーメイト」

以前のカロリーメイトのCMは、「がんばれ若造」というキャッチコピーとともに走り回る若者が登場したり、「お化粧する時間がなくても、これなら食べられる」というシーンを描いたりなど、とにかく急いでいるときでもすぐに食べられる利便性を強調していました。そのためどちらかというと、ドタバタしたものが多かったように記憶しています。ところが“KEEP THINKING”は静謐で思慮深い印象で、いままでとまったく方向性が違うのです。

私はこのCMを見た瞬間、「大塚製薬はカロリーメイトのイメージを180度変えようとしているな」と確信しました。

以前は「仕方なく食べるもの」だった

カロリーメイトが発売されたのはいまから40年近く前の1983年のこと。必要な栄養素がバランスよくとれるうえに、封を開ければすぐ食べられる手軽さが支持され、以来ロングセラー商品となりました。

いま、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどに行くと、カロリーメイトの横には「一本満足バー」「バランスパワー」など、何種類もの同じカテゴリーの商品が並んでいます。あるいはパウチに入ったゼリー飲料の「inゼリー」などもあります。

このカテゴリーの商品について消費者に意識調査をしたならば、おそらくこんな答えが返ってくることでしょう。

「朝、寝坊したときに食べるもの」
「本当は外にランチに行きたいけれど、行けないときに食べるもの」
「急な残業に備えてデスクの引き出しに常備しているもの」

つまり、「しょうがない。いいよ、もうこれで!」と思いながら食べるもの。妥協して仕方なく食べるものなのです。

売り上げ伸び悩みの理由とは

こんな消極的な理由で利用される商品は、いま以上に売り上げが伸びることはありません。「おいしかったから、また食べよう」「家族の分も買って帰ろう」とはならないからです。

一方でこの手の食品を、生まれてから一度も食べたことのない人はおそらくほとんどいないでしょう。商品名も知っているし、みんな一度や二度はお世話になっている。でも利用頻度は極端に少なく、「年に1回か2回、食べるかな」という程度。

このようなユーザーを「ライトユーザー」といいます。ライトユーザーとはヘビーユーザーの逆で、その商品をごくたまにしか買わない人のこと。カロリーメイトをはじめとした栄養食品の特徴は、ライトユーザーがやたらと多いということです。

もしもライトユーザーに時間のゆとりができると、どうなるでしょうか。そう、まったく食べなくなります。

「忙しい営業部にいるときは、出先でも食べてましたねえ。もうお腹が空いてたまらないときもありますしね。でも部署を変わったら、同僚と一緒にお昼を食べに行けるようになって、もうすっかりやめました!」となってしまう。おそらくそのために、カロリーメイトの売り上げは伸び悩んでいたのだと思います。

実は売り方が大きく変わるときというのは、売り上げが伸び悩んでいることが多いものです。なぜなら売り上げが伸びているなら、何も変える必要がない。そんなときに変革を提案しても、「どうして変えるんだ」「そこまで冒険しなくていいじゃないか」ということになる。売り上げが伸び悩んでいるときこそ、経営陣も大胆な決断に踏み切りやすくなるのです。

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