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医療崩壊を防ぐためなら高齢者と貧困層は「死んでもしょうがない」か

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「収入や年齢による医療差別」が横行している

人間はパニックになった時、その本性が現れる。

病院で患者を搬送する救急救命士
病院で患者を搬送する救急救命士=2020年04月06日、アメリカ・ニューヨーク - 写真=AFP/時事通信フォト

新型コロナウイルス感染拡大は、この人間というどうしようもない生き物の化けの皮を次々剥いでいるようである。

中でも、「収入や年齢による医療差別」が横行しているのに、メディア、特にこの国のメディアが鈍感なのは、今更だが、腹が立ってならない。

私は、この問題について、感染拡大当初から警鐘を鳴らしてきた。それは私自身が高齢者で、多くの生活習慣病を抱えているからでもある。

数週間前、右耳の下から肩にかけて帯状疱疹ができた。医者に聞くと、50歳以上で、ストレスや過労が原因で免疫が落ちると、かかりやすいという。

幸い2週間ほどで治ったが、こんな体調の時はコロナに感染しやすいと、普段はほぼ毎日“出勤”しているオフィスへ行くのを自粛した。

つれづれなるまま朝のテレビのワイドショーを見ていると、当然ながら、コロナ一色である。

専門家なる者が出て、専門的知識とは思えない極論や暴論を恥ずかしげもなく吐き散らしている。司会者は、今こそ国を挙げて、この国難をどう乗り切るのか、一致団結せよと、眉根を寄せて視聴者に呼びかける。

まるで戦時中のスローガン「欲しがりません勝つまでは」を彷彿とさせるようである。

「花見をしている人たちがいる」と110番が相次ぐ

そこに、感染対策の致命的な遅れをマスク2枚と饒舌でごまかそうとする安倍晋三首相が、非常事態宣言なるものを発したから、熱しやすい国民は一億総火の玉となった。

花見はダメ、3人以上の集会は自粛、居酒屋は午後7時以降は酒を出すな、不要不急の外出はするなと、戦時体制もかくやと思わせる、不自由を国民に強いている。

NHKをはじめとする各局ニュースは、「今日はどこどこで何人感染者が出ました」という大本営発表を流し、自粛しないものは非国民といわんばかりである。

私は1945年(昭和20年)11月生まれだから、かろうじて「戦争を知らない世代」である。

以来70余年、平和憲法のおかげで国内の戦争を知らずに生きてきた。小説や映画を除いて、戦争以外で、東京の街が死に絶えたような姿に変わるのを、この目で見ようとは考えたこともなかった。

先にもいった通り、緊急事態宣言といい、その後の報道を見ていると、私が聞いている第二次大戦の戦時下と酷似してきている。

日本的な悪習は村八分や密告である。

「『花見をしている人たちがいる』『マスクしていない人を注意したらトラブルになった』――。千葉県内で新型コロナウイルスに関する110番通報が相次いでいることが県警への取材で分かった」(朝日新聞デジタル 4月17日12時30分)

花見酒をしていたわけではあるまい。花を愛でて歩いていただけで通報される。私はマスクが嫌いだからしないが、電車の中でとがめるような視線を感じることがある。

お上のいうことに逆らう奴は許さない、という同調圧力が感じられるのは、私だけだろうか。

普段の差別や不平等が「見える化」されたにすぎない

世界(5月号)で、森千香子同志社大教授と小島祥美愛知淑徳大学交流文化学部教授が「感染と排外主義」の中でこう語っている。

「小島 二月二十五日、安倍首相を本部長とする感染症対策本部が新型コロナ基本方針を出したのですが、外国人旅行者への情報提供は盛り込まれていても、外国人住民については、一言も触れられなかった。

しかし、強調したいのは、今回の非常事態で急に何か特別な差別が始まったのではなく、普段の差別や不平等が『見える化』されたにすぎないということです。

たとえば、外国人子弟は健康診断さえ受けられないことをご存じでしょうか」

さらに、森は、「命の数値化」が進んでいると話している。

フランスの人類学者ディディエ・ファッサンはイラク戦争を題材にそれを考察している。殉死した米兵の家族には80万ドルの慰謝料が払われたが、命を落としたイラク市民には、もし支払われたとしても4000ドルだったといわれる。

そして今度のコロナ危機に際して立ち現れてきた論理は、これとも異なるという。世界によると、ひとつには『自国民』の中にも線引きをする、せざるを得ないという論理がある。イタリアが典型だが、医療資源が逼迫するなかで、助ける命とそうでない命を線引きするトリアージ(大事故・災害などで多くの患者が出た時、手当ての緊急度に優先順をつけること=筆者注)の過程で、社会格差、年齢格差が顕在化した。

しかし、もうひとつ、経済を、まるで『自国民』のいのち以上に優先するような論理が急速に顕在化しているように見えるのだという。

感染症は不幸な出来事だが、真の不幸は…

今回の緊急事態宣言を出すにあたって、安倍首相と小池都知事との間で、首都封鎖までするべきだという小池に、安倍は、そこまですると日本経済が壊滅状態になることを恐れ、ある程度の経済活動を残すことを主張し、なかなかすり合わせができなかった。

その結果、いくつかの業種は、「3密」にならないよう配慮するなら営業を認めることとなった。

小池には、3月の連休に自粛宣言を出さず、都内の感染を広げてしまったという大失敗を挽回し、6月に予定されている都知事選を有利に進めようという考えがあったに違いないが、短期決戦でコロナを封じ込めるやり方は、私にはうなずけるものであった。

中途半端な緊急事態宣言後も感染者は増え続けている。安倍首相は、遅ればせではあるが、全国に緊急事態宣言を広げ、自宅で犬とくつろいでいる動画をツイッターで流し、自宅で過ごすよう訴えたが、かえって、多くの国民の反発を買ってしまった。

緊急事態に対応できない無為無策の政権には、怨嗟の声が広がっている。

週刊ポスト(4/24号)で芸人のビートたけしがいうように、「こんな世界的なピンチを、疑惑だらけの政権に託すしかないんだからさ」である。このままでは、「ニッポン中で首を吊る人間が出てきちまうよ」(たけし)

さらに、「『かつてない規模の』『強大な政策パッケージ』とかデカいことばかり言ってるのが逆に白々しく見えちゃう」「カミさん(妻の昭恵=筆者注)にも強く言えないような人が、ニッポン社会全体に自粛を呼びかけているんだから笑っちゃう。安倍さんは、『緊急事態宣言』の前にまず『家庭内緊急事態宣言』を出すべきだったね」

新型コロナウイルス感染拡大は不幸な出来事だが、真の不幸は、この国を託すのが、安倍や小池のような政治家しかいないことである。

「医療職は『死んでもしょうがない』と思われている」

医療関係者たちからも悲痛な叫びが上がっている。

「医療の現場から」というnoteのブログ(4月9日)が興味深い。ハンドルネーム四谷三丁目が勤めているのは首都圏の「けっこう大きな病院」で、看護師だそうだ。

医療用のマスクは3日で1枚と制限された。そんな中で「交通事故で搬送されてきた患者のCTを取ったら『新型コロナウイルス肺炎像』が写っていた」という。

そこに、安倍政権が数百億かけて全世帯にマスクを2枚配ると報じられた。「四谷三丁目は激怒した。怒りで全身溶けそうだった。(中略)『自分の命が軽視されている』ことにようやく気付いた。(中略)今、この国から、医療職は『死んでもしょうがない』と思われている。そういう扱いを受けている。(中略)HIVだろうと、結核だろうと、どんな感染症も気を引き締めこそすれ怖くはなかった。私はそれを生意気にも『医療従事者としての自負』みたいなもんだと思っていたがどうやら違ったのだ。

あれは、医学的根拠に基づいた万全の対策がとれ、万が一のことがあれば迅速に処置を受けられるという“安心”があってのものだった」

布マスクを配る政府に、プラスチックガウンや手袋不足に対応できるとは思えないとも書いている。

命の選別は、医療従事者だけではない。高齢者にも当然起こっている。世界中の感染現場で、そういう事態が起こっていることを前にも書いたが、今週ようやく、サンデー毎日(4/26号)で保阪正康が「高齢者切り捨てというファシズム」というテーマで書いている。

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