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女性ライターが語るトラックドライバーの過酷さ 眠気覚ましは喘ぎ声?

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やんちゃが多いドライバー 車中では何を?

――ドライバーはやんちゃな人が多いのでしょうか。

やんちゃというより、すごく熱い人が多い。自分なりの正義を持って働いていますね。今回の本を書くにあたって、TwitterやFacebookなどを使い現役のトラックドライバーさんたちから意見を伺いましたが、やはり熱い人が多いなあとしみじみと。

みんな初めからトラックドライバーになりたくてなった人が多くて、生涯“ガテン系”という人も多い。でも、最近はホワイトカラー出身の人も増えています。

――高速道路の運転は景色が変わらずつまらないと感じます。

私は色々と物を考えながら運転するタイプで、めちゃくちゃ好きでした。逆に、一般道を走っている時は怖いんです。周りに人がいたり、自転車が飛び出して来たりするかもしれないから。高速道路は余程のことがない限り、人が歩いていることはない。頭の中を整理する時間にしていました。

私だけではなくて、トラックドライバーには考えることが好きな人が結構多いんです。運転中に音楽系と語り系、どちらのラジオを聴いているか尋ねたら、群を抜いて語り系でした。人の話と自分の状況を比較しながら、人生を考えたりする。

運転中は自由にできるのが頭と口だけなのです。だから、喫煙率はすごく高い。そして、色々なことを考えることが多くてポエマーも結構いるんですよ。ちゃんとした詩を考えてTwitterのDMで送ってくれる人もいます。あとは、色々な土地に行くので素敵な写真を撮って送ってくれる方もいますね。



定番の眠気対策はスルメとガム

――トラックドライバーにとってラジオは必要不可欠ではないでしょうか。

全然聴かない人とめちゃくちゃ聴く人で両極端です。文化放送の吉田照美さんの大ファンだから全て聴くとか、吉田さんのイベントが大阪であるから「一緒に来てください」と誘われもしました。

――橋本さんはどうしていたのでしょうか。

私は語り系もすごく好きだったんですが、歌を歌っていたので音楽系もよく聞いていました。車内ではR & Bも歌ってました。運転しながら歌う人は多いです。あとは独り言をいう人とか。

それは眠気対策もあります。スルメの力は絶大ですね。世の中の物流を支えているのはスルメです。スルメを噛む人は多いです。眠気対策としては実は缶コーヒーはあまり評判は良くないです。あくまでも嗜好品の一つですね。

実はみんな聞いてた喘ぎ声 “ある!ある!!”と賛同の嵐

――スルメ以外にはガムとかですか。

スルメ、ガム以外では中にはティッシュを噛むと答えてくれた人もいます。あとは自分の体をつねるとか。私は女性なので気づきませんでしたが、喘ぎ声も効果絶大だそうです。

――実に興味深い。

スマホかポータブルDVDを使ってかは分かりませんが、大音量で聴いて3大欲求の一つである性欲を刺激すると。興奮すると眠気が吹っ飛ぶそうです。

これもTwitterで教えてもらったのですが、今回の本には絶対に盛り込もうって。Twitterで眠気覚ましの方法を聞いたら、喘ぎ声って答えが返ってきて、「ある!」「ある!!」「ある!!!」「ある!!!!!」とすごい反響でした。運転中なので動画は見られないはずですが、声だけでも眠気が吹っ飛び運転に集中できるのではないでしょうか。

私自身は労働には男女の性差を入れるべきではないとの考えですが、これだけは仕方ないと思いました。喘ぎ声で命を守ってもらえるのですから。



見直すべき顧客至上主義

――喘ぎ声の次に話すべきことではないかもしれませんが、楽天市場の送料無料化の騒動など、物流の現状をどう見ていますか。

ドライバーが負担を強いられる背景には、顧客至上主義というものがベースにあると思います。「送料無料」と銘打っても必ず運賃は発生しているのです。

にもかかわらず、わざわざ送料無料としてしまうのは、顧客であるお客様が“無料”に食いつくからです。そこに、すごく過酷な環境にあるトラックドライバーの価値がないがしろにされていると思わざるを得ません。実際、「あんなに苦労しているのに、俺たちの存在価値はなんなのか」というメッセージをくれた人もいます。

――Amazonや楽天などに対し、何か提案はありますでしょうか。

置き配については、積極的にやるべきという人も多いですが、浸透しない原因の一つが日本の文化なのでしょう。地面に荷物を置いて帰ることに抵抗を持つ人が特に高齢者に多く、手から手に行き渡らなければならないというおもてなし文化みたいなものもあります。

他にも、盗難にあったらどうしようという不安も根強い。マンションなどでは、宅配ボックスの設置も進みましたが、どうしてもすぐ満杯になってしまう。

捨て去るべき“宅配は自宅で”の概念

――宅配の利用者としては何度も再配達に来てもらうのは申し訳ないです。

重い荷物、例えば水のペットボトルかなんかを届けに行って、1度目は不在。再配達で指定の日に行っても不在、そこに雨でも降っていようものなら「なんで約束の日時にいないんだ」とかちんともくるでしょう。

――ネットでの買い物が普及した中で、物流の課題に対して消費者が考えるべき視点とはなんでしょうか。

現状では、置き配が最も新しいサービスでしょう。駅の近くなどにロッカーを設置してそこで受け取るというサービスもありますが、いかんせんものを選びます。消費者にとっては重いものは不便だし、ナマモノは扱えない。

そんな中で、自宅の玄関で直接受け取るべきものという概念を捨てることが一番かと思います。それこそ、コンビニの負担については十分な検討が必要ですが、コンビニで受け取るだけでも大分変わるでしょう。

今、顧客至上主義を全体的に見直そうという風潮は確実に広がっています。例えば、スーパーのレジ袋は有料化して、コンビニの24時間営業も見直されている。“消費者はそんなに神様ではないよね”というと、「何いってんだ」という声が絶対に出てきます。でも、それをやらない限り、物流はいつか絶対破綻してしまう。“サービス=無料”という概念を払拭しなければならないと今は感じています。

撮影・弘田充

橋本愛喜(はしもと・あいき):大阪府生まれ。工場経営者、日本語教師などを経て、フリーライター。大型免許を取得後、トラックで200社以上のものづくりの現場を訪ねた。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などについて執筆や講演を続ける。

【訂正・4月26日午前1時】記事中に「ニッポン放送の吉田照美さん」とあるのは、「文化放送の吉田照美さん」の誤りでした。筆者の確認が不足していました。訂正します。

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