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暴落する可能性の高い日本国債が邦銀の財務安定を生む ~日本経済新聞の歪んだ理屈

「リーマン・ショックからまもなく4年になる。欧州の債務危機が広がり、国際基準金利の不正操作問題など新たな火種も抱え、世界の金融市場は落ち着きを取り戻していない。そうしたなかで危機の震源地ではなかった日本の金融業は比較的安定している。『ポスト・リーマン』の金融の姿をつくり上げ、世界に示す好機だ」

日本経済新聞は19日付で「民が創る 新成長モデル~産業の革新と生活を支える金融に」と題する社説を掲載。相変わらず支離滅裂、矛盾に満ちた意味不明の机上の空論を繰り返している。

「この4年をふり返ると、日本の銀行は資産の傷みが米欧より小さくて済んだ。証券化商品や南欧国債への投資が少なかったことが幸いし、信用力の目安となる銀行の格付けは海外より高めだ」

「証券化商品や南欧国債への投資が少なかったことが幸いし」という指摘は、何を今さらというもの。日本経済新聞を筆頭とした「国債暴落論」を繰り返す消費増税原理主義者によるプロパガンダに惑わされずに、資産の多くを日本国債に振り向けた結果である(現実には消去法で国債を購入するしかなかった、投資する蓋然性があった)。

大手邦銀3グループの2012年4~6月期連結決算は、株式市場の低迷による保有株式の評価損が膨らみ、みずほフィナンシャルグループを除いて最終減益となった。収益を押し上げたのは国債の売買益。3グループ傘下の銀行の国債売買益合計は、前年同期比約3倍増の約4200億円と、3グループの連結純利益合計4846億円(前年同期比40%減)の85%以上を占め、国債の売買益が邦銀の収益を支える構造となっている。

「財務が安定すれば積極的に海外に打って出ることもできる」

日本経済新聞が繰り返し報じているように、本当に「近いうちに」日本国債が暴落すると信じているならば、「財務が安定すれば積極的に海外に打って出ることもできる」などと無責任なことなど言えないはずである。何故ならば、暴落するかもしれない資産からの収益の上に立った「財務の安定」など、「砂上の楼閣」に過ぎないのだから。

暴落するかもしれない国債からの収益に依存している邦銀の財務が「安定」しているというのであれば、それは国債の暴落など「近いうちに」は起きないと考えていることである。もし、本当に「近いうちに」国債暴落があると懸念しているのであれば、保有資産を早急に国債以外のものにシフトし、国債売買益に依存しない財務体質を構築するよう警鐘を鳴らすのが、オピニオンリーダーとしての務めのはずである。

ちなみに、消費増税の旗振役である経団連の副会長(18名)には、大手邦銀3グループから、三菱東京UFJ銀行相談役、三井住友フィナンシャルグループ会長の2名が名を連ねている。そして、彼らが率いる金融グループは金利低下による国債売買益を享受していることは上記の通りである。もし、経団連が「近いうちに」日本国債が暴落するリスクがあると考えているのだとしたら、自らが率いる金融グループが、そんなリスクの高い資産からの収益に依存する状態を放置するだろうか。

「信用力の目安となる銀行の格付けは海外より高めだ。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスの格付けを比べると、日本の三大銀行は上から4~5番目と、多くの欧米主要銀行より上位にある」

日本を代表する経済紙はこのように指摘しているが、これも素人丸出しのコメントである。

まず、格付けの世界では、「ある国の企業の信用格付はその国の政府の格付を上回ることができない」という「ソブリンシーリング」という原則がある。つまり、日本経済新聞が繰り返し報じている、格付け会社による日本国債の格下げリスクが高いのであれば、「銀行の格付けは海外より高めだ」などというのは一時的な現象でしかないことになる。日本国債が格下げされれば、邦銀の格下げも実施される可能性が高いのだから。

次に実務上、「財務の安定」がもたらす効果は、資金調達コストの低減、比較優位である。では、邦銀がこの「財務の安定」を活かせる状況にあるかというと、それは日本経済新聞が言うほど簡単ではない。

資金調達には、債券発行による調達と、株式による調達(増資)がある。

債券発行による調達を行えば、負債(他人資本)が増加することで自己資本比率が下がることになり、これは「財務の安定」を損なう方向に圧力を加えるものである。また、BIS基準でリスクウエイト=0の国債から、リスクウエイトの高い「顧客である企業の国際展開を側面から支援する」ことになれば、BIS基準上の邦銀の自己資本比率は低下(悪化)することになる。これは資金調達コストの上昇を伴うもの。

また、株価が過去最安値近辺で低迷している段階で株式発行に伴う調達を行えば、希薄化が起き、株価がさらに不安定になることが想像される。株価の下落は、資金調達能力の低下を意味するものである。

要するに、「債券売買益」に依存した「財務の安定」では、「顧客である企業の国際展開を側面から支援する」ことには現実的限界がある。この限界を取り払うには、日本国内の「貸出・融資」から収益が挙がる経済状況、堅調な株式市場を取り戻すことが必要不可欠なのである。そうでない限り、「財務の安定」による「資金調達コストの比較優位」を、実際の企業活動の優位に結ぶ付けることは困難である。こうした観点からも「消費増税」などという国内の有効需要を奪うような政策は「百害あって一利なし」である。

「消費増税」によって国内の有効需要が下がっても、海外から収益を稼げばいいという理屈は、実務を知らない教科書上に生きる人達と、一部の企業だけに通用するものであり、マクロ経済(日本全体)には当てはまる理屈ではない。日本経済新聞の理屈は、現実の経済に住んでいる多くの国民にとって何の参考にもならないものどころか、国民に誤った認識を植え付けるものである。

「民が創る 新成長モデル」を目指すために最初に取り除かなければならない「トゲ」は、事実を歪めた「結論ありきの報道」を繰り返すことで、「国民から反対する意思と気力を奪おうとするかのような報道」を繰り返すメディアの存在である。

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