- 2020年04月21日 09:15
緊急事態宣言でも、なぜ日本は65%の会社が「何も対応していない」と平気で答えるか
1/23月下旬から都内では平日の出社を控えるよう要請が出ていたし、4月7日には緊急事態宣言が発令され、外出自粛要請はさらに強くなった。それにも関わらず、テレワークや時差出勤などの対策を取らない企業は多い。大企業から中小企業まで、数多くの企業でコンサルティングを行う横山信弘さんは、「業績が低迷している企業が抱える組織の病と、緊急事態で対応できない組織の問題点は同じなんです」と指摘する。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)
緊急事態宣言が発令されたのに出勤する人たち
「安倍首相が最低でも7割減と言っているのに、まだ出勤する人いるんだ」
ネットニュースのコメント欄に、こんな書き込みを見つけた。
「何を考えているんだろう? クラスターが発生したらどうするんだ」
「もっとはっきり言わないとわかんないのかなァ。自分の命は自分で守らなくちゃいけないのに」
同調する書き込みも散見される。コメント欄を見るかぎりでは、緊急事態宣言を受け、テレワークもせずオフィスに出勤する人はまるで「非常識」な人間だ、と言わんばかり。
しかしこんな状況でもオフィスへ出勤する彼ら彼女らは本当に「常識外れ」なのだろうか。他者視点に欠けた、自己中心的な人たちなのだろうか。
私はそうではない、と思っている。それどころか犠牲者ではないかとまで受け止めている。それはなぜか?
65%の企業が何も対策をしていない
ここに、驚くべき調査データがある。
厚生労働省がLINEと共同で行った新型コロナウイルス対策の調査結果だ。この調査を実施し、その結果を発表したのは4月4日。
回答した2400万人のうち、この時点で、65%の人が十分な対策をとっていないことが明らかになった(三密を避ける。テレワークの未実施)。
7都府県に緊急事態宣言が発令されたのは、この直後。4月7日である。それから冒頭に書いたとおり、安倍首相が出勤者を「最低でも7割減、極力8割減に」と強く要請した。
さすがに、これでオフィス出勤者は急減するだろうと、誰もが思ったはずだ。しかし、そうはならなかった。減るには減ったが、政府や世間が期待するほど出勤者が減っていない。微減である。
だから冒頭のような嘆き節が、ネットに書きこまれたのだ。
筆者がこの記事を書いているのが4月13日。
Yahoo!ニュース「みんなの意見」では、『緊急事態宣言、あなたの会社はどう対応?』というアンケートを実施中だが、現時点でも、「特に対応なし」が62.8%。「テレワークを推奨」が15.5%、「テレワークと時差出勤の両方を推奨」が11.1%となっている。
調査対象や調査の方法が異なるが、厚生労働省×LINEが行った調査と同じように過半数の企業が対策をしていないという結果になっている。
個人ではなく会社が変わらなければ
個人ではなく企業が動き出さなければ「最低7割減」が達成する見込みは薄そうだ。
医療従事者はもちろんのこと、公共交通機関や社会インフラ事業で働く人の出勤を止めることはできない。そう考えたら、一般企業のほとんどの社員が出勤を控えなければ達成しないのは誰でもわかることだ。それなのになぜ、企業はこれほどまでに動きが鈍く、このような緊急事態にも対応できないのか。私は、日本企業がいつの間にか「主体性依存型」の組織と化してしまったことが大きいとみている。
業績目標を達成できない企業の特徴
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。現場に入って経営者やマネジャーの愚痴を、さんざん聞かされている。
「社長が今年こそ目標達成と言っているのに、まだ達成できない人いるんだ」
営業部長がこう言うと、
「何を考えているんだろう? このまま業績が下降していったらどうするんだ」
「ハッキリ言わないと、わからないのかなァ。最近の若い人は」
と、同調する課長たちがいる。
目標を達成できない組織の特徴はいろいろあるが、ここ数年、顕著に出ている例が、個人の「主体性」に依存した組織運営がうまくいっていないことだ。
たとえば、業績が低迷している企業に、私どもが以下のように具体的に介入することがある。しかし歯切れの悪い返答しか返ってこないのだ。
次の会話文を読んでほしい。
【コンサルタント】「既存のお客様だけの対応では、中期経営計画を達成させることができません。マーケットの概況をみると、こちらの業界に対するマーケティング活動を強化したほうがいいです」
【営業課長】「いやあ、そうは言われても……」
【コンサルタント】「何か問題でもあるのですか」
【営業課長】「仰ることはわかりますが、私としては部下の主体性を尊重したいのです」
【コンサルタント】「主体性は尊重されたらいいと思います」
【営業課長】「ですから、このように上から押し付けるようなやり方はどうかと……」
【コンサルタント】「何を言ってるんですか」
すでに答えがわかっていることでも、部下たち自身で主体的に考えてほしいと言ってきかない。
「そんな悠長なことを言っていられないでしょう」と私どもが主張しても、部課長たちは、「個人の『やりがい』を尊重したい」「『やらされ感』を覚えるような言い方はマズイ」などと言って譲らない。
料理で例えるなら、美味しい食材選びのコツを指南しているのに、「自分たちで主体的に考えさせてほしい」と言い張っているようなもの。そんな遠回りなことをさせて「やりがい」も「働きがい」もないだろう。
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。