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時給980円分の覚悟|コロナと氷河期介護新人と自己責任(前編)

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正規雇用に就きたいと「魔が差した」

去年、ライター業と並行して飲食チェーンでバイトとして働いた際に、区切りごとに育成面接をしてもらえたことに感動した。

たとえば、派遣社員はだれかに育成など気にしてもらえることはないし、仕組み自体がない。同じ職場で働いていても、ずっと部外者だ。だから、同じ共同体の仲間として扱われたかのように感じ(結局は違うのだが)、自分が所属意識に長年飢えていたことに気づいた。

ここで魔が差した。あきらめきっていた正規雇用に就きたくなったのだ。

しかし、飲食業は人手不足といっても、ディナー帯や長期休みなど、限られた時間帯や期間が人手不足なだけで、スポット的に調整できて会社が社会保険などの負担を負わなくてもよい人材が欲しいだけだと気づく。

同じ職場の、42歳からバイトを始めて現在は45歳の男性で、週5フルタイムどころか12時間働く日もあるのに、いまだ正社員になれない就職氷河期世代を見て、ここで私が正規に雇用されるのは到底無理だと悟った。

(飲食でも介護でも、就職氷河期世代で非正規雇用の男性に、職場で数多く出会ったことを強調しておきたい)

いつもいつも渦中で選択肢を間違える

40代から正規雇用に就くのはもう不可能なのか。

そこで、飲食より不人気で人手不足な介護業界に就業し、実務年数を積んで下記の資格を取ることで、最終的に正規雇用を目指そうと考えた。

  • 介護職員初任者研修(実務経験不要)
  • 介護職員実務者研修(同上)
  • 介護福祉士(実務経験3年)
  • ケアマネジャー(実務経験5年)

これとは別に、1年ほど一般養成施設の通信講座などを受講して「社会福祉士」(相談業務)などを取る戦略もある。最終的にケアマネジャーの資格が取れれば、正規雇用で年収300万円台くらいは見込めると計算した。

何よりも「年齢不問」と書かれた求人が多く、50代でも就職できそうなのが最大の魅力だった。

年齢不問。

これがどれだけ魅力的かは、就職氷河期世代ならわかってもらえるだろう。非正規雇用のままロクなキャリアも積めずに、気づけば自分は40代で、景気は改善し人手不足だという。しかし、年齢ゆえにどこにも正規で雇ってもらえない。

実際に、介護施設の面接で「40代は若い方だし大歓迎です」と言われたときには心が震えた。ほかの職種でそのようなセリフを言われることがあるだろうか。70歳まで年金がもらえないかもしれないのに、その半分の35歳で「転職は手遅れ」と言われてきたのだ。

一方、最大のデメリットとして、介護職は時給が安い反面、業務負担と責任は大きい。この「割に合わなさ」感を自分のなかでどう処理するか。

私は「とにかく5年間頑張ろう」と考えた。

直近の5年間を振り返る。5年間で新しく始めたもの。翻訳。VBAプログラミング。ブログ。ライティング。何も積み重なっていない。

就職は狭い枠を奪い合う、イス取りゲームに似ている。私は田舎に住んでおり、派遣で翻訳のニーズがあったからその仕事を始めた。しかし、ニーズがあるといっても正社員は既に足りていて、足りないのは雇用調整ができる使い捨ての人材だった。

「派遣で働いていて、正社員になれないのは無能だから自己責任」という人は多い。確かに私は無能だ。しかし、能力で競うイス取りゲームに加わりたくても、40代用のイスはないから、ゲーム自体に参加できない。

以前、このようなアドバイスをいただいた。

ニャートさん、簿記2級取って会計事務所パートから人生立て直せば?

これも本気で考えたし、いまも何とかならないか考えている。いろいろ調べたけれど、この方がアドバイスをくれたことは本当で、税理士は高齢化していて20代が少なく、20代なら税理士になるのはチャンスだ。

実際、今年の1月にFP3級に合格し(コロナがなければ)5月にFP2級、6月に簿記2級を受験しようと思っていた(もし秋にコロナが収まってくれているなら受験したい)。FPの勉強はライター業にとても役立った。実は過去に、経理の経歴も1年だけあるのだ。

しかし、私は田舎に住んでいて、地元の会計事務所の求人は35歳までとなっており非常に失望した。認知症の母を連れて都会に引っ越すのは難しく、置いていくのも難しい。

このような経緯を経て、介護にたどりついた。介護なら年齢不問で人手不足だ。30代や40代から新たな仕事を始めるとき、既に長年その業務に就いている人を追い越すのは難しい。しかし、それは狭い枠のなかで正規雇用(イス)を争うときの話で、人手不足なら問題ないように思えた。

40代や50代が座れるイスはたくさんあるのだ。次の5年後こそ、何かを積み上げていたい……。

……ここまでが、まだコロナが対岸の火事だった1月に考えたことだ。アフターコロナ以降、すべてが変わってくるだろう。

いつもいつも、人生を立て直したくて、自分ではよく考えたつもりで新しい選択肢を選ぶ。だけど、いつも間違っている。このときもそうだった。

職業を選ぶときには、待遇や競合の存在、将来性などから選ぶ。それは、デスクワークがメインだった私のこれまでの選択方法においては間違っていない。

しかし、覚悟はしたつもりでも、それは時給980円のパートには負担の重すぎる業務を何とか「やり過ごす」覚悟でしかなかった。

介護職は普通の職業とはちがう。「人の命に関わる仕事」「(ミスなどで)人に危害を与える可能性のある仕事」だけではなく、時給980円で「自分が命の危険に晒される可能性のある仕事」である点に気づけていなかった。

いや、1月時点では、命を脅かされる可能性まではなかったのかもしれない。同様に、通常なら店員や宅配員などの方たちが、日常的に命の危険に晒される事態などなかった。

コロナ禍という世界的なターニングポイントが発生し、「付加価値がないので低賃金」といわれていた仕事がなければ、世界が先行かないことが判明した。そのような仕事につく方は、古い枠組みで低賃金のまま、命を投げ出さざるを得ない状況に晒されている。

……後編も書きたいが、どの程度フェイクを入れればよいか悩んでいる。

メディアが気づいていないクラスター感染源の可能性を指摘したいが、それを書くと身バレの可能性がある。

結局は「コロナの感染が疑われる利用者様を介護している」としか書けず、そうした複数の利用者様がどこから来てなぜ危険なのかといった本質的な仕組みは書けない可能性が高い。

冒頭で内部告発の話をしたが、私が勤める介護施設がとりわけ問題なのではなく、たぶんどこの施設も似た状況が発生しているだろう。だから、内部告発ではなく構造の指摘になるが、それでも書けないかもしれない。

今後は、医療崩壊(書きたいことはこの点に関係がある)→介護崩壊→さらなる医療崩壊(高齢者で病床が埋め尽くされて、若い人も病院に行けない)に至るのではないだろうか。

あと、現時点では辞める選択肢はないし、明日も仕事に行く。

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