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全国の路上に出現している「マスク売人」、その素性とは

4月になってもマスクは入手困難が続く(時事通信フォト)

マスクの路上販売は遠い外国の話だと思っていた。写真はパキスタンで今年2月(AFP=時事)

 いま全国で、段ボールなどで手書きの看板をつくったマスクの路上販売が出現している。相変わらずドラッグストアなどでは入手困難なマスクを、なぜ路上で販売できているのか。彼らはいったい、どこからやってきた人たちなのか。ライターの森鷹久氏が、路上に現れる「マスク売人」についてレポートする。

【写真】かつてマスク路上販売は外国の話だった

 * * *

「最初は目を疑いました。品薄なのは知っていましたが、まさかここまでするとは……まるでマスクの売人ですね」

 こう話すのは、都内のドラッグストアに勤務する薬剤師の男性(30代)。今月初め、東京・新橋の路上に車を停め、段ボール製の看板を掲げる「マスク売人」を見たという。「売人」といえば、違法薬物などをこっそり売りさばく人たちを連想させるが……。

「マスクを買い占め、ネットで高額で転売する人たち、いわゆる"転売ヤー"が続出したため、法改正されてマスクの転売が禁止になりました。それでもネットオークション、フリマサイトなどでは隠語を使って"闇マスク"が売られましたが、サイト運営者側がこれを禁止に。在庫過多となった転売ヤー達の闇マスクが、売人によって路上で販売されるようになったんです」(薬剤師の男性)

 実はこうした「マスク売人」は、筆者の調べによれば北は東北、南は沖縄まで現れている。キャリーバッグに大量のマスクを入れて売り歩く売人もいれば、路上で通行人を呼び止め、耳元でこっそり「マスクあるよ」と声をかけてくるパターンもあるといい、ほとんど違法薬物の売買と変わらないような様相なのだ。

 違法薬物の売買には、ほとんどの場合、暴力団などの反社会的な組織が関与している。そして「マスクの買い占め」そしてネット上での「転売」については、小銭稼ぎに目が眩んだ一般人によって行われているパターンが多いと言われてきたが、路上に現れるような闇マスクの売人とは、一体全体どういった人たちなのか。筆者の取材に、かつて詐欺スレスレの「情報商材」販売で多額の儲けを得ていたという関西在住・G氏が打ち明ける。

「実は、情報商材界隈で数ヶ月前から"マスク投資"なる言葉が飛び交っていました。マスクの工場を作るために資金を集めているなど、そのほとんどが実態のない詐欺的な話でした。その話題と並行して、SNS上で"簡単なアルバイト"などといって人を集め、マスクの買い占めをさせる集団がいました。この二つの集団は重なっています。人によっては、全国のドラッグストアから数百万円分ものマスクを買い漁り、三月までに一千万以上の売り上げを得ているという例もある」(G氏)

 ところが、前述の通り3月の半ばには法改正が行われ、マスクの買い占めや転売が規制された。ネットを使いこっそり販売され続けたが、思うように販売ができなくなった転売集団は、やはりSNSを使って販売の岐路を見出そうとしたのだという。

「買い占め司令を出していた人物に、今度はマスクを売らせ始めたんです。それこそ、全国の病院や高齢者施設に営業の電話をかける、スパムメールやSNSを使って売る、最後は路上での密売です。こうした組織は特殊詐欺に関与している連中も多く、情報に疎い人々を操る術に長けています」(G氏)

 若者に人気のアパレルブランド店や家電量販店のセールに、こうした手法で人を集め物品の買い占めし、転売するのもやはり同様の集団だ。さらに…

「連中は、消毒剤や体温計など、転売や買い占めが禁止されていない商品を先回りして買い占めしています。人気のゲーム機でも同じ。品薄になりそうな人気商品があれば、それが人命に関わるものであっても儲かるからやる。マスク在庫がだぶついて損をしている連中も多いでしょうから、もっと力を入れてやってくる可能性もありますね」(G氏)

 いわゆる"転売ヤー"という人々に取材をした経験がある。彼らは「問屋みたいなもの」「商社だって同じ」と開き直るばかりだったが、問屋も商社も、人の不幸に乗じて法外な利益を得ようとはしない。あくまで常識的な「商売」の範囲内で行なっているのだ。転売ヤーの存在は害悪そのもの、場合によっては人の命も奪いかねない卑劣な行為であることに、彼ら自身が気付く日は来るのだろうか。

 そして重要なのは、こうした連中からは絶対に「買わない」ということも書き添えておきたい。人命より儲けを優先する連中が売るマスクなど、まったく信用に値するものではない。どこで作られたのかも、機能的なのかも疑わしく、中には「医療用」などと書かれていても、その要件をまったく満たしていない場合もある。冷静になれない人々が多いからこそ、こういう連中が暗躍する隙が社会に現れることも、理解しておくべきだろう。

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