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大阪の医大生が福島の現場で学んだこと - 小滝 和也

『福島は放射線で汚染されているから危険だ。近づくべきじゃない。』
大阪ではこのような言葉を今でも耳にします。大阪からでは福島の様子はメディアやインターネットの情報でしか知ることはできません。福島で何が起きて、何 が問題になっているのか?この疑問を解くために7月18日から25日まで福島県相馬市・南相馬市へ向かうことになりました。

相馬駅に着いてみると震災の影響はほとんど感じず、実家に里帰りしたような感覚でした。ですが、車で数キロ走ると様子は一変します。写真やテレビで切り抜 かれた被災地の風景とは見え方が全く違うことは言うまでもありません。1年4ヶ月経った今でも破壊され残っている建物、津波の被害を受けた広大な荒地、原 発立入禁止区域の時が止まったかのような風景。どこも人がいないことに不安を覚えました。大阪では人が全くいない場所はほとんどありません。人を寄せ付け ない自然の猛威を身にしみて感じさせられます。今後この土地をどう活用していくのか考えなくてはいけないなと思いました。

正直に言うと、私は福島に向かうまでは放射線の情報ばかりが気になっていました。空間線量の数値はどのぐらいなのか、飲水や食事によって内部被曝が起こら ないのか。このことを自分たちで調査し、レポートにまとめたいと思っていました。しかし、現地の様子を見ると考え方は大きく変わりました。福島県の土地柄 や県民性も理解せず、誰のための調査かも明確になっていないのにレポートを作る意味があるのか?福島が安全かどうか最も気にしているのはこの場所に住む人 達であり、内部被曝検診や線量定点観測は住民のために行われています。
『調査という言葉を使ってはいけない。どんなデータを得るにしても住民のためじゃないと続かないよ。検診で得た情報は真っ先に検診を受けた住民に還元しないといけない。』
内部被曝検診をされていた先生の言葉です。私たちがすべきなのは線量の調査などではなく、福島での暮らしを関西にいる人達に正確に伝えることだと気づきました。

福島の暮らしで一番気になったことは、仮設住宅での生活です。仮設住宅の環境は私が暮らしているアパートに似ているなと思いました。部屋の広さは10畳ほ どで、家具はあまり置けず、ほとんど動くことのない生活になります。私の場合、実習のために病院にいたり、気分転換のために出かけることが多いので、気に なることはありません。しかし、仮設住宅で一日の大半を暮らしている住民にとっては暮らしづらい環境であることと思います。ある日突然、大きな家を失って しまい狭いアパート暮らしになると、生活のリズムが崩れ、体調を壊してしまうこと当然のことでしょう。仮設住宅の住民の健康を維持するためには、適度な運 動が毎日続けられるように対策を練ることが大切であることは明白でした。

実際に仮設住宅の住民の健康状態を向上させるための活動も行われています。医師や住民の方々が集まり、うつ病による自殺の防止についての話し合いが行われている現場に参加させていただきました。
『みんなで笑えることがしたい。笑える環境を作ることが大事なんだ。』話し合いに参加されている方々の発言から地域の活性化を願う強い気持ちが伝わってき ました。大切なことは仮設住宅の住民たちに交流の場を提供し、そこで話し合いながら体を動かしてもらうことです。自殺を防ぐには、まず孤立している人を見 つけ出さないといけません。

ただ、この活動を必要としているのは仮設住宅だけではないと思います。
大阪のアパートにもお年寄りは多くいます。ですが、大阪では近隣の住民同士の交流は皆無です。隣に住む人の名前すらわかりません。私の住んでいるアパート には、毎日通行人に挨拶をしている一人暮らしのおばあちゃんがいます。無視する人もいれば、軽く会釈をする人もいます。しかし、このおばあちゃんと立ち止 まって話し合っている人は見たことがありません。おばあちゃんの挨拶がなくなったとしても誰も気に止めないでしょう。
仮設住宅と都心のアパート、この二つは同じような環境なのかもしれません。南相馬市で在宅医療をしていた先生はこうおっしゃっていました。『震災の影響 で、南相馬市はとんでもないスピードで高齢化した。色んな問題が起きてる。だけど将来、東京でも同じことが起きる。東京ほうが問題はもっと深刻だろう。高 齢化はやがて世界全体に広がる問題だよ。』

今回の実習を通して学んだことは2つ。「現場に向かう重要性」と「コミュニティの影響力」です。

百聞は一見に如かず。有益な情報は現場に行かないと見えてきません。この実習がなければ、私は福島が安全であるかどうか答えを出すことすらできなかったでしょう。
ただ現場に行ったからといって、すぐに情報が手に入るわけではありませんでした。地域の文化を理解し、コミュニティに参加できなければ何も得るものがない まま帰ることになるでしょう。また、今の時代は都心において地域のコミュニティがどんどん薄れていっていると改めて感じました。地域のコミュニティが絶対 に必要なのかどうか私にはわかりません。ですが、地域のコミュニティなくして復興はできないと思います。危機的な状況に置かれた時こそ、近くに住民同士の 協力が必要なのだと思います。

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