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バロンズ:経済正常化でも、サービス業を中心に残る不安

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Barron’s : It Could Take Longer For Businesses To Go Back Where They Stood After Coronavirus Outbreak.

バロンズ誌、今週のカバーは遠隔治療(テレメディシン、telemedicine)の普及を考察する。新型コロナウイルス感染拡大により、病院のビデオなど通信システムの他、iPhoneのフェイスタイム、スナップチャットなどで患者とやり取りする医者が増加中だ。これまで遠隔治療は郊外向けのサービスと想定されてきたが、コロナ禍というパンデミックを受け主流と化してもおかしくない。

遠隔治療の普及により、最大規模を誇るテラドック・ヘルス(ティッカー:TDOC)を始め、医療テクノロジー関連企業のリボンゴ・ヘルス(LVGO)やマシモ(MASI)、アイリズム・テクノロジーズ(IRTC)などが注目されよう。

ただ、遠隔治療革命は一夜にして起こるわけではない。連邦政府や州政府が一時的にバーチャルでの通院を可能とした規制緩和を恒久化すべきで、しかも統一すべきだ。何より問題は、経済的なインセンティブが挙げられ、患者と対面で診察する場合と比べ実入りが小さい点にある。実際、遠隔治療は2019年で全体の医療請求額の0.2%を占めるに過ぎないことでも想像できよう。

とはいえ、米国の遠隔治療市場はソフトウェアや医療デバイス、ハードウェアを含め2015年2020年まで年率25%増を遂げ、売上高は26億ドルへ拡大した。遠隔治療に今後どのような発展余地があるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

今回、当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリートではなく、エコノミー・アンド・ポリシーから気になる外出禁止措置の緩和に関するコラムを紹介する。抄訳は、以下の通り。

経済活動の大いなる再開を迎えても、ビジネスが容易に急速に正常化しない理由―Why Business Won’t Snap Back So Easily After the Great Reopening.

経済活動の”大いなる再開”が近づきつつある。正しい方法で再開することが重要であり、さもなければ一段と深刻な経済悪化を招く閉鎖に直面しかねない。

トランプ大統領が米国経済の正常化を狙った3段階の指針を公表したほか、製薬大手ギリアド・サイエンシズの新型コロナ治療薬候補”レムデシビル”の有効性を確認するなど、16日は恐らく新型コロナウイルス感染拡大以降で最も良いニュースが溢れた1日だった。何より、感染者数が最も多いニューヨーク州では感染のピークに達したみられ、NY州を始めとした10州が正常化に向け連携し始めた。

好材料に反応し、S&P500種株価指数は3月23日以降で28%上昇し、17日には経済再開や治療への希望から2.7%高を遂げた。

米新規失業保険申請件数が約2,200万件も急増し、4~6月期の米実質GDP成長率が2桁マイナスが見込まれるなか、経済正常化へ要望が高まるのは理解できる。しかし、拙速な正常化はコロナ禍の再発を招き、消費者が支出を一段を手控え、回復をさらに遅らせかねない。ドイツ証券のトーステン・スロック首席エコノミストは、ウイルスに脆弱とされ、消費支出の4割を担う55歳以上の高齢者の間で特に影響が大きいと見込む。

ゴールドマン・サックスのエコノミストは、同社の米国ロックダウン指数を元に外出禁止措置の影響を受ける米国経済の割合が86%へ上昇したと分析する。全米に存在する中小企業の25%は4月初めから閉鎖に踏み切り、米国労働人口の5分の1に相当する約2,730万人が15人以下の従業員を有する中小企業で勤務する。

正常化が待たれるとはいえ、GSのエコノミストは「ウイルスが再発するリスクを踏まえ、部分的であれ再開する際は安全性を確保すべきだ」と主張。さらに「社会的距離は自発的な対応策で、政府の外出禁止措置への対応ではない」とも付け加える。

外出禁止措置解除の主には州知事に課されるが、消費者の安全性確保は企業努力が求められる。例えば、アラバマ州でレストランを経営するデビッド・ラム氏は店先でのドライブスルー型テイクアウトを進めるなどカーブサイド・ビジネスを展開、売上はコロナ禍前の25%から50%まで回復した。

ラム氏は周囲はトランプ支持者が多く最近の大統領の発言に希望を見出す知り合いが多いと語るが、自身は「現段階での外出禁止措置解除は時期尚早で、経営者として顧客や従業員の健康を考えなければならない」と正常化に消極的だ。

チャート:レストランの店内飲食利用者数は3月半ばで既にゼロ。

(作成:My Big Apple NY)

在宅勤務やカーブサイド・ビジネスという選択肢が存在しないビジネスも、数多く存在する。セントルイス地区連銀のアナリストの調査で最も接触が濃厚な業種は理容師や美容師などだが、データ会社スタティスタによれば2018年に理容室や美容院、ネイルサロンなどの売上は2018年に52.4億ドルだった。

コロナ禍の影響はもちろん中小企業以外にも幅広く及ぶわけだが、例えば航空会社は密室空間のキャビンで、どのように顧客と従業員の安全を確保できるのだろうか?アメリカン航空のダグ・パーカー最高経営責任者(CEO)は、ビデオメッセージを通じ濃厚接触を回避すべく三列席の使用停止など座席の方針変更や飲食サービスの縮小に踏み切ると伝えた。座席をめぐっては、社会的距離を保つべく客室乗務員に座席再割り当ての権限を与えるとも言及した。

こうした方針の転換は空の旅に安心感を与えるだろうが、こうした努力が長期的に持続可能かは不透明だ。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのデビッド・レフコウィッツ株式ストラテジストは「航空会社は席数半分の乗客で稼働するようにできていない」と指摘する。ホテルに至っては、自分の前に宿泊していた顧客についていたか知る由もなく、レコウィッツ氏いわく「こうした思惑が人々行動の重しになる」と予想する。

レストランも同様で、テイクアウトやデリバリーは足元で生き残りの術となっているものの、長期にわたり顧客が戻らなければ死活問題だ。例えば、メキシコ料理チェーン店”チリズ”などを運営するブリンカー・インターナショナルは、4月2日からテイクアウトのみの営業に切り替え、店舗外の売上高は前年比で2倍以上の増加を記録したものの、全体の売上は前年の20~35%程度に過ぎない。レフコウィッツ氏によれば、経済の正常化を迎えた武漢でも、レストランの稼働率は50%以下だという。

一部のレストラン、特にファストフード・チェーンはポストコロナ禍を見据え、デリバリーやドライブスルーなどを充実させ始めた。スターバックスが格好の例だろう。

コロナ禍がいつまで続くのか、ワクチンの流通がいつなのか効力に期待できるのか、全てにおいて不透明性が残るなか、消費者からトラウマが消え去るには時間が掛かるに違いない。レフコウィッツ氏は顧客にヘルスケアや通信など、ディフェンシブ銘柄を推奨する。そのレフコウィッツ氏は、市場が「向こう3~9ヵ月間にわたる一直線の回復を織り込んでいる」と指摘するが、同氏自身は2021年の正常化予想に懐疑的で、市場動向も上昇と下落を繰り返すと見込む。

コンサル会社やアナリストはコロナ禍がどのような進展を迎えるのか予想を始めており、概して年内の終息と回復、終息を経たコロナ感染拡大再発、終息なしの感染拡大継続などのパターンが挙げられる。どのシナリオを踏襲するにしても、消費者や企業は環境に順応し、経済回復の道筋を見出していくのだろう。

――NYでは外出禁止措置が5月15日まで延長され、同時に公共の場でのマスク着用の義務化が発表されました。コロナ禍を経て、社会的距離をめぐる人々の考え方が変われば、航空会社やホテル、レストラン、美容院などのサービスの稼働率は暫く低下せざるを得ません。日本でも、美容師の知り合いが「普段から座席の間に2m近い距離を開けていたけれど、現状は一つ席を空けて座ってもらっており、長時間にわたる密室でのケアが必要なヘッドスパなどの利用は控えて頂いている」と話していました。

さらに、レストランの場合はテイクアウト用の容器購入など、通常かからなかった費用がかさむことも。経済が正常化しても接客業を中心としたサービス業の売上がコロナ前を取り戻すには相当な時間を要するとみられ、政府の中小企業支援策が拡充される余地を残します。

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