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灯の消えた吉原、歌舞伎町…新型コロナ緊急事態宣言下の盛り場はいま【止まり木の盛り場学 第7回】

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惑わぬはずが惑いまくる「40男」コンビが昭和の盛り場の現在を伝える人気連載「止まり木の盛り場学」。今回は特別編として、新型コロナウイルス下にある盛り場の今をレポートします。吉原、新宿、横浜などのお店の状況を取材しました。


これまで6回にわたって東京近郊の盛り場を取材してきた二人。日頃、癒やしを頂いている盛り場はコロナ禍の中、どうなっているのか? 働いている人の想いは? お客さんたちは? 今回は二人にとってなじみ深い、吉原、新宿、横浜、横須賀を取材した。


4月第3週の頭、盛り場を愛する40男、フリート横田と渡辺豪はテレビ電話でこう話していた――

横田 渡辺さん、お疲れ様です。街が大変なことになりましたね。

渡辺 横田さん、そちらはどうですか。やはり吉原は人通りがまるでありませんでしたね。

横田 はい、飲み屋街もですね……

ZOOMを使い、盛り場の今を話し合う横田(左)と渡辺(右)

今回2人は、新型コロナウイルスでの営業自粛を受けている「夜の街」の現状をそれぞれレポートすることにした。自覚なき感染拡大を防ぐため、単独行動のうえ、レポートのやりとりはテレビ電話でおこなわれた……。まず、日本一の風俗街、吉原のレポートを渡辺からおこなった。

名指しで休業要請されたソープランド 風俗街・吉原のいま

渡辺 「3密」や「濃厚接触」という言葉が使われ始めた頃から、性産業への影響が気になってました。江戸時代から続く風俗街である、吉原の現状をお伝えしたいと思います。 4月10日、東京都が出した休業要請(新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等)では公共施設のほか、遊興施設であるキャバレー、ナイトクラブ、バーなどに休業を要請しました。

その中に聞き慣れない言葉「個室付き浴場に係る公衆浴場」とありますが、これはいわゆるソープランドです。余談ですが、ソープランドは性風俗でありながら保健所の検査もおこなわれる「公衆浴場」と位置づけられています。今回、ソープランドも休止要請の対象となっています。

吉原エリアで営業するソープランドが全店加盟する組織である「浅草防犯健全協力会」(以下、協力会)さんには当連載でも昨年取材させてもらいましたが、今回も取材をお願いしました。しかし、「誤解を招きかねない時期なので、コメントは差し控えたい」とのことで、取材することは叶いませんでした。

現状のソープ街を歩くと、日中でもほとんど人通りはありません。ただしこれは新型コロナウイルスのせいとも限りません。吉原にあるソープ店の多くでは、最寄り駅まで客を送迎するサービスを設けており、実は、平常時から男性客がそぞろ歩く景色が少ないのが吉原の特徴です。

吉原ソープランド街のメインストリート。タクシーの往来が多いこの通りも、取材当日はごくまばら

ただし、それを差し引いても、さらに少ない印象。この日は30分ほど街を取材しても、ついに男性客を見つけることはできず。傍目にも芳しくない吉原の状況が、ひしひしと伝わってきます。

ほとんどのソープ店はシャッターを下げて休業中。中にシャッターを半分だけ下げている一部のお店もあり、こちらは営業しているようです。

こうした案内を出して、新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされる店がほとんど

「女の子の方が困ってる」自粛要請も、すべての店が休業とはいかず……

少ない営業中のソープ店で、ボーイさんに話を伺うことができました。

「協力会から自粛要請が出て、ほとんどの店がしまっちゃったね。営業しているのは2割くらいかな。営業するかどうかは店に委ねられている状態。こちちもコレ(指で輪をつくる)がきついからね……簡単に閉めるわけにはいかないよ。来店したお客様には、まず手を消毒してもらってます。女の子には手洗い、うがい、マスクしてもらってます。」

やはりすべてのお店が休業しているわけではないようです。

「出勤する女の子はかなり減ってる。客入りは半分以下じゃないかな。でも私たち以上に女の子の方が困ってるよ」

最後に、こうした時期に来店している客層について伺うと、「若い人が多い」とのこと。昨年、吉原で取材した協力会や風俗店経営者の説明では、現在の吉原における客層は高齢化が進んでいるとのことでしたが、重篤となるリスクの高い年配層の来店は激減しているようです。

【関連リンク】 昼の「色街」を歩く 日本最大のソープランド街・吉原の現在

平成11年、「風営法」(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改正され、デリバリーヘルス(以下、デリヘル)が認められたことなどをきっかけに、近年の性風俗はデリヘルが主流となっています。(東京都でのそれぞれの登録数はソープランドが199に対して、デリバリーヘルスが16倍にあたる3,237)

ソープランドは旧来の店舗型であるため、地代家賃を主とした固定経費の負担を考えるとき、デリヘル以上に今回のコロナ禍の影響は大きいのではないのでしょうか。

また前回の取材では、バブル崩壊後は昼職と掛け持ちで働いている女性も増え、最盛期のように稼げなくなっているといった声も聞きました。働く側にとって、セーフティネットの役割も果たしている性風俗。ですが、立場上、声を上げづらいことも考えられます。

次に周辺産業に目を向けてみたいと思います。現在の吉原はソープが多くを占める一方で、そこで働く従業員たちが食事を取る食堂もあります。そうした周辺産業はどうなっているのか、吉原のメインストリートにある蕎麦屋さんに話を伺うために向かいましたが、着いた先で張り出された休業の張り紙。やはり……


お休み中のご主人に話を伺いました。

「ソープが閉まったタイミングで、ウチも休業したよ。家族が以前に肺炎してるから心配だし。親戚とか子供が『まだ営業してるのか?』って連絡くるもんだからね」

食堂を始めとした、当日の収入がそのまま利益に直結する商売が休業するタイミングを見極める難しさ。まして家族の健康を考えるならば……


光るのはコインパーキングの看板だけ。灯の消えた吉原

ネオンが灯る、コロナ禍以前の吉原ソープ街(2019年4月撮影)

コロナ終息後も「風俗産業離れ」は進むかもしれない

私は吉原で書店を営業していることもあり、日頃なじみ深い盛り場が閑散としている様子は、言い尽くせない悲しさがありましたね。YouTubeのライブカメラで渋谷スクランブル交差点や、銀座4丁目交差点を観ているのとは、まったく違う感覚です。

また、ボーイさんが「自分たちより女の子の方がきつい」と仰っていたことが印象に強く残りました。ギラついたイメージの強い風俗街、とりわけ歴史の長い吉原ですが、届かない声、上げづらい声が沢山埋もれているように見受けられます。

今後、仮に終息傾向が見えても、接触への抵抗感から、ある種の風俗産業離れが起きるのかなと私は感じました。これは性風俗だけではなく、スナックのような距離感の近いお酒の場でも。ネット飲み会など、これまで少し抵抗があった「リアルの場をネットに置き換えたレクリエーション」が見直された時期だったと思います。一方で「人に会いたい」「会って杯を酌み交わしたい」といった人恋しさも強まったのではないかと思います。

まだまだ気を抜けない新型コロナウイルスへの対策ですが、今回の感染症の流行を受けて、ネットの先にある人との関係性と、リアルに会う関係性、その両極の価値を見直すタイミングになったと思います。

(取材日:4月14日)

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