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「昨今の流行りと対極を行っているんです」東浩紀氏とゲンロンの挑戦

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株式会社ゲンロンのオフィス。(撮影:大谷広太)
株式会社ゲンロンのオフィス。(撮影:大谷広太) 写真一覧

我が国において、ジャーナリズムやオピニオンのメディアがどうすれば収益化し、持続的に事業を展開できるのか。これはBLOGOS自身としても大変関心のあるテーマだ。最近では、池田信夫氏が電子書籍やセミナー事業もミックスさせた言論メディアを会社として運営、個人のメディア化という点では津田大介氏によるメールマガジンなどの事例が出てきている。

思想家・批評家として活動してきた東浩紀氏(41)が2010年に立ち上げた出版社、株式会社ゲンロン(今春、合同会社コンテクチュアズから組織変更)は、論壇誌を定期出版する傍ら、年会費を徴収し、会員に様々なサービスを提供する「友の会」システムを採り入れている。ゲンロンとその取組について、また、コンテンツビジネスについて編集者や経営者として今感じていることを聞いた。【編集部:大谷広太】

-"論壇誌冬の時代"と言われて久しいですよね。東さんが連載も持っていた「論座」、あるいは「諸君!」のような、立ち位置の比較的ハッキリした雑誌などがこの10年で次々と姿を消し、残った雑誌も、どちらかと言うと中高年向けのような内容に傾いてしまっているように思います。

東浩紀氏(以下、東氏):お葬式特集みたいなものが増えましたね。

-老いについて、みたいな(笑)。そのような中で、出版社を立ち上げて、しかも「思想地図β」という、まさにど真ん中の"論壇誌"をやろうと思ったきっかけは何でしょうか。

東氏:状況全体を見て判断したというよりも、自分の読者を見ての判断です。「動物化するポストモダン」は長く売れ続けているし、ほかの本も1万部以上は確実に売れる。その基盤と10年以上の実績があったのでやろうと思ったということですね。

2008年から、NHK出版さんで「思想地図β」の前進である「思想地図 」を続けて5号出しました。これには僕が責任編集として関わったのですが、それでも平均1万部を超えるくらい売れたんです。こんなハードな論集で、素っ気ないデザインでも行けるんだから、もう少しデザインも含めて総合的にプロデュースすれば部数が伸びるのではないかと考えました。ただ、NHK出版の編集者さんはとても積極的だったのですが、それでもやはりさまざまな壁にぶつかりまして。それで、もう自分で出版社を作って、やりたいことをやったほうがいいと考えました。

-若者の中で「思想」や「批評」がある種の"一般教養"として捉えられていた60年代や70年代に比べれば、若い世代の読者は減ったかもしれません。ただ、最近でみても、読了したかどうかは別として、ともかく"サンデル本"があれだけ売れたということは、やはりこの国には一定のニーズがあるという気もします。

東氏:そうですね。論壇が、論壇に興味のある人だけのものであってはいけないと思うんです。僕が今回出した「思想地図β3」も、文学部と政治学部の学生だけに読まれるようではいけないと考えて作りました。工学部や経営学部の学生、ビジネスマン、エンジニア、中小企業や個人商店の経営者、さらにアーティストやミュージシャンまで、この国について真剣に考えるひとであればだれでも手に取ってもらえるのが理想だと思っています。言論オタクだけが言論を消費していてもしょうがない。そういう点で、ここのところは、言論をニッチな読者だけが支えているまずい構造になっていたと思います。

というものの、実は僕も、会社を立ち上げた当初は言論オタクに向けたサービスを目指していたところがあったんです。"ゼロ年代"系の若い論客が一杯集まっていて楽しいよ、という感じ。しかし、そういう発想は3.11のあとなくなってしまった。

いまはあまり若い人を集めようという気がないし、「新世代」の論客なる構図にも関心がありません。今日本が直面している危機というのは、「若い世代が集まって知恵を出せばなんとかなる」という、世代間対立で乗り越えられるものではないと思います。30代、40代の人間ばかりが集まっても、それだけではだめなんです。

今回の「思想地図β3」で「ゲンロン憲法草案」を作りました。そのひとつの理由は、憲法という枠組みであれば、若い世代の社会観を高齢者の方にも直接ぶつけることができると思ったからです。実際、「朝まで生テレビ」でも取り上げられたし、さまざまな反応が現れた。若い論客が、若い読者に向けた話題ばかりを繰り返して「新世代の論客」とか言っても、上の世代の編集者やメディア人に消費されるだけで、なにも生み出さないと思います。そういう点でも、拡がりを目指しています。

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