新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、7都府県を対象に緊急事態宣言を発令して14日で1週間が過ぎる。政府は出勤者「7割削減」を国民や企業に要請しているものの、在宅での勤務が難しいなどの事情で、今も通勤時間帯にはスーツ姿で電車に乗り込む人の姿が目立つ。
そんな中、文具メーカーのシヤチハタ(本社・名古屋市)が、パソコンやスマホ上で文書に押印できる電子印鑑のサービスについて、無料での提供を始めた。決裁印をもらうために職場に出向く手間も省け、テレワークの促進につながるとして、歓迎の声が広がっている。

サービスは「パソコン決裁Cloud」。紙を使わない電子文書として稟議や決裁書類、請求書などをネット上で送り渡し、登録してある電子印鑑で押印できる。手持ちの印鑑を電子化したり、認印を新たに作ったりすることもでき、登録が済めばすぐに利用を始められる。
インターネット環境があればパソコンやタブレット端末、スマホを使って、いつ、どこでも捺印できるのが利点で、これまでに多くの企業で導入されてきた。省資源やペーパーレス化にも適してコストダウンにつながる他、捺印の履歴も残るなど改ざん・なりすまし防止機能も備えている。
シヤチハタ社は無料での試行版を経て、2017年6月に有料サービスの提供を始め、金額は一つの印鑑あたり月額100円。新型コロナウイルスの感染が広がった3月上旬、「企業としての社会貢献につながる」として無料での提供に踏み切った。利用者数は徐々に増加して3月末時点で1万3500件に。緊急事態宣言などが影響して、現在では5万件を超える勢いとなった。無料提供は感染拡大の状況を見つつ、6月末までを予定している。

「ハンコ文化」は日本企業特有とされ、文書を電子化できたとしても捺印のために職場を出向く必要があり、テレワークを阻む一因とも言える。今回の無料提供はネット上でも話題となり、「これ助かるわ」「導入してくれたら、出社する頻度が少しは減るかも」と言った声が上がる。
シヤチハタ社の担当者は「おかげさまで多くの問い合わせをいただいている。今回の無料提供で出社などに伴う外出が少しでも減り、微力ながら感染拡大の防止につながれば幸いです」と話している。