記事

「108兆円」でも「経済瓦解」必要なのは早急な「現金給付」- 磯山友幸

1/2
4月10日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴う休業要請の詳細を発表した小池百合子東京都知事。「スピード感が重要」と話していたが、国との歩調は合っていない (C)時事

新型コロナウイルスの蔓延が日本経済に甚大な影響を及ぼし始めた。4月7日に政府が7都府県に「緊急事態宣言」を出したことで、店舗などの休業が相次ぎ、経済活動が急激に縮小し、経営規模の小さい飲食店や小売店、サービス業などが深刻な経営危機に陥っている。

止むに止まれぬ選択

 こうした中小零細企業、個人事業の最大の問題は4月末の資金繰りだ。仕入れなどの支払いのほか、従業員の人件費や家賃などの支払いが迫る。

 東京都内でタクシー事業を展開する「ロイヤルリムジン」が、緊急事態宣言が出た翌日の4月8日に、ほぼ全従業員にあたる約600人を解雇することを発表、世の中に衝撃が走った。

「解雇して雇用保険の失業給付を受ける方が、従業員にとってメリットが大きいと判断した」

 というのが解雇理由で、会社としては止むに止まれぬ選択だったということだろう。新型コロナの国内感染が発覚した初期に、タクシー運転手の罹患が報じられたこともあり、タクシー利用者が激減していることが背景にある。

 体力のない会社が従業員を抱えたまま耐えようとすれば、時間の問題で経営破綻することになる。新型コロナの蔓延は最低でも数カ月は続きそうで、解雇して雇用保険に頼るというのは1つの選択肢ではある。

 景気変動ですぐに雇用に手をつける企業が多い米国では、失業保険の新規申請件数が急増している。

 リーマンショック後の2009年3月には、66万件もの申請がだされたが、ドナルド・トランプ大統領が国家非常事態を宣言した3月13日以降、さらに激増した。3月15日から21日までの1週間で330万件、翌週28日までの1週間で686万件、次の4月4日までの1週間で660万件に及び、3週間で1676万件の新規申請があった。一時帰休や解雇などで米国の失業率は、現状でも13%前後にまで高まっているのではないか、と見られている。

電話はパンク状態

 長期安定雇用が長年の慣行だった日本では、すぐに解雇とはならないが、実際には影響が出始めている。時給で働くアルバイトやパートの場合、店が閉まれば、仕事はできず、自動的に所得を失う。

 3月末に総務省が発表した労働力調査の2月分によると、非正規職員・従業員は2159万人。全体の雇用者の38%を占める。2月はまだ前年同月比0.1%の増加だったが、4月末に発表される3月分以降は、新型コロナの影響が数字に表れてくるだろう。その際、真っ先に職を失うのはアルバイト(477万人)やパート(1059万人)ということになる。

 政府は緊急事態宣言を出した7日に、108兆円の緊急経済対策を閣議決定。収入が大幅に減った世帯などに、1世帯あたり30万円を給付することや、収入が半分以下に減った中堅・中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支給することとした。

 当初はGDP(国内総生産)の1割、つまり50兆円規模と言われていたが、リーマンショック時を大きく上回る60兆円以上を求める声が上がっていた。結局政府が決めた108兆円は、もちろん過去最大規模の経済対策だ。

 それでも問題は残る。支給までの時間だ。

 安倍晋三首相は世帯向けの30万円については、5月中にも給付すると明言したが、企業への200万円や個人事業主への100万円がいつ届くのか分からない。しかも「最大」という条件が付いているので、審査をして金額が決定されるまでに、相当な時間がかかるとみられる。中小企業庁には問い合わせの電話が殺到しており、電話はパンク状態になっていると報じられている。

 政府の緊急事態宣言を受けて、東京都の小池百合子知事は、4月10日に休業要請する対象業種を発表、11日から実施される。当初は全面的に休業を求める予定だった百貨店やホームセンターについては、生活必需品売り場などを要請対象から外すほか、居酒屋を含む飲食店は営業時間を朝5時から夜8時までとする。

 休業要請したのはネットカフェやパチンコ店、クラスターが発覚したスポーツクラブやライブハウスなどにとどまった。休業に協力した事業者には50万円を支給する方向。要請業種を絞った理由を、国民生活への配慮や経済への影響回避としているものの、背景には営業補償の経費が賄えないという懐事情があるようだ。

 米国では3月末に法律を発効させ、大人1人に対して1200ドル(約13万円)、子どもには500ドル(約5万4000円)の現金給付を決め、すでに支給作業が始まっている。夫婦と子ども2人の家庭ならば、3400ドル(約37万円)を受け取れることになる。英国などでは、休業した店舗の従業員給与を支給するなど、大規模な補償に乗り出している。

 日本では当初から「公平性」を前提に現金給付の制度設計を行っており、所得の減少や売り上げの減少といった基準を設け、本当に困ってからでないと給付が受けられないという状況に陥っている。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    尾身氏の述べる感染対策が具体的

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    天才は「How型」で物事を考える

    幻冬舎plus

  3. 3

    韓国 慰安婦像前で三つ巴の戦い

    文春オンライン

  4. 4

    宇垣が豪語 告白は「させない」

    SmartFLASH

  5. 5

    独立続出の芸能界 裏に金と圧力

    渡邉裕二

  6. 6

    舛添氏 複合災害の対策急ぐべき

    舛添要一

  7. 7

    日本は米中どちらを取るべきか

    自由人

  8. 8

    感染増加で若者を批判する愚かさ

    文春オンライン

  9. 9

    綾瀬はるか 格差が結婚の障壁か

    NEWSポストセブン

  10. 10

    社員からフリーへ タニタの試み

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。