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  • Arisan

小原一真写真展

この日曜日、烏丸のギャラリーでこの日まで開催されていた小原一真さんという人の写真展、福島原発で働く人たちの姿を撮った展示会を見てきた。

小原さんは、ご自分で来場者の質問に答えたり、説明の資料を手渡したりされていた。

福島を撮った小原さんの写真は、海外で写真集が出版されるなど、すでに多くの話題を集めているようである。

http://kazumaobara.com/aboutme/index.html


労働者達のモノクロの顔写真を、インタビュー内容を収めた資料を読みながら、一枚ずつ見ていく。

インタビューで印象的だったのは、国や東電という会社はもちろんだが、東電社員との労働条件の非人道的な違いや、東電社員たちの冷淡で、自分たち地元の労働者の存在を人間として見ていないかのような態度への怒りをあらわした文章が多く見られたことだ。

決してすべての人の証言が、明瞭な怒りや、会社や国に対する何らかの主張を表明しているわけではない。むしろ、写真や証言に接する者は、その無口さや抑制された感情をこそ、そのままに感受する態度が必要なのだろうが、それでも僕は、何より東電の社員たちの冷酷さや侮蔑に対する怒りを露わにしているいくつかの言葉と、表情とに心を奪われたのである。

そこには、人間が、他の人間と同じ世界に生きることを決して諦めないという決意、原発と原発事故という、これほど非人間的な破局のただなかにあっても、なお「同じ人間であること」にこだわろうとする、虐げられた者のぎりぎりの意志や感情が、示されていたと思う。

それは、普段の生活のなかで、僕らがたいていは蓋をし、忘れたようにして暮らしているものだ。


プリモ・レーヴィは、『アウシュビッツは終らない』のなかで、収容所のユダヤ人にオフィスの床掃除をさせて、自分たちは平然と雑談をしているドイツ人の女性たちのことを書いているが、僕はこれらの証言を読みながら、その記述を思い出さずにはいられなかった。

こういう「非人間性」というよりも、「人間性の剥落」ということは、関電に抗議に行ったときにも感じる。これはむろん、個人の人柄の問題ではなく、(ぼくら自身を含んでもいる)構造の問題であり、だからこそ余計に深刻なのである。

僕らはいつも、収容所のドイツ人のように振る舞えるのだし、現に福島の人たちに対して、そういう態度をとることで毎日を送っている。電力会社の社員たちは、その僕たち自身の冷酷な姿が、見やすい形であらわれたようなものであり、だからこそ僕らは、そういう企業なり政府や行政の人間たちを、あくまで人間同士として許してはならないのだし、同時に、この写真の人たちの怒りや不信の眼差しが、ぼくら自身に向けられたものでもあることを、自覚するべきだと思う。


また、避難地域の住民でもある人は、一度許可されて自宅に帰ったとき、整理をしながら防護用のマスクなどを外してしまった。それは「感覚の麻痺」というようなことではなく、「悔しさ」からだったという。自分の家なのに、なぜこんなものを付けて作業しなければならないのか。

そういう無念さや怒りが、会場の中に立ち込めているような写真展だった。


小原一馬写真展「Beyond Fukushima-福島の彼方に」は、10月2日から28日まで、大阪人権博物館(リバティおおさか)でも開催されるそうです。

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