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新型コロナウイルスでシリコンバレー飲食店の生命線はデリバリーに 現地リポート

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界中の人々の生活に様々な影響が出ている。アメリカ西海岸のカリフォルニア州でも感染者数が1万人(4月7日時点)を超えた。GoogleやApple、Uberなどテック企業が集まるシリコンバレー周辺では3月16日より自宅待機命令が発令され、期間が当初予定されていた4月7日から5月3日に延期された。

サンフランシスコの街がどのように変わってしまったのか、またイノベーションの中心地であるシリコンバレーでテクノロジーがその変化にどのように関わっているか、現地のテック企業で働く邦人の視点からシェアしてみたい。

4月6日サンフランシスコ市内、朝8時。自宅待機命令が発令されてから3週間が経った。出勤前よく通っていたスターバックスに久しぶりに朝食のサンドイッチとコーヒーを買いに行こうとアパートを出ると、今までならラッシュアワーのはずの目の前の道路に車はまばら。会社に向かい歩く人もほとんどいない。

高野宏介

普段アメリカ人でマスクをつける人を見ることはほとんどないのだが、すれ違うごくわずかの人々は仰々しいマスクをつけ他人との距離を保ち、足早に歩いている。スターバックスも今までのような活気はまるでない。店舗の外には大きく”MOBILE ORDER ONLY”(アプリでのオーダーのみ受付)の文字と入り口の前に小さなテントが。テントの前で待っていると店員さんがドアを開けてくれた。

高野宏介

客は店内に立ち入り禁止。ドアの前でスタッフに自分の名前を伝えると注文していたサンドイッチとコーヒーをそそくさと渡してくれ、すぐにドアを閉められた。今までのようなレジ前での世間話は一切ない。帰り道ふと見ると、地元の人々に人気だったタイマッサージ店が「今後しばらくの間営業を停止します」という張り紙をして閉まっていた。

カリフォルニア州にはフレンドリーな人が多く、サンフランシスコは活気に満ちた都会であったはずなのだが、3月16日に新型コロナウイルスの感染対策として群政府によりサンフランシスコ、およびシリコンバレーの他5群の全住民への自宅待機命令が発令されて以降、街は活気を失ってしまった。

レストランの生命線はデリバリーに変化

国際都市サンフランシスコでは日本食を含め国際色豊かなレストランが多数あり、普段であれば週末に限らず、平日夜も行列のできる店も少なくない。しかし現在、自宅待機命令においてレストラン店内での飲食は禁止されており、営業内容は持ち帰り、デリバリーに限られてしまっている。

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そんな中、シリコンバレーではUberEats、DoorDash等の宅配代行サービス(オンデマンドデリバリー)が以前に増して人気だ。日本でも近年徐々に需要が高まっているが、これらオンデマンドデリバリーサービスでは、マクドナルドなどのチェーン店や地域のローカルレストランから好みのメニューを自宅までデリバリーしてもらうことができる。

このようなサービスが、飲食店が営業を続けるための生命線となりつつあり、発令後、新たにそれらのサービスの利用を始める店の数が急増している。筆者がよく利用しているラーメン店や日本食レストランもこれを機にUberEatsでのデリバリーサービスを始めた。

オンデマンドデリバリーサービス各社も新規飲食店の提携フィーを割引、もしくは無料にするなど積極的に支援したり、新型コロナウイルスの感染拡大を受け利用者の「手渡しで直接受け取りたくない」という新たなニーズに応えるべくコンタクトレスデリバリー(ドア前に置いて配達)を開始したりする等の試みも始まっている。

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アパートや集合住宅においてもオンデマンドデリバリーを利用する住民の増加に対し対応が始まっている。例えば筆者の住んでいるアパートでも、配達者が各部屋の前まで配達する際の他の住民への接触リスクを考慮し、デリバリーの品は全てロビーに一元化して配達してもらうように感染対策を実施している。

買い物代行サービスが爆発的な人気

また、買い物についてもテクノロジーを活用した取り組みが進んでいる。

自宅待機命令下でもスーパーへ食品を買い出しに行くことは許可されているが、延長の発令の際には追加でスーパーのSocial Distancing対策の徹底が指示された。それに伴い各スーパーでそれぞれ一度に入店できる客の数を10人までに制限し、残りの客は店の前に各自6フィート(180センチメートル)以上の距離を空け並ぶ必要があるのだ。

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さらに、ここでも上記UberEats、DoorDashと同様、スーパーでの買い物にもオンデマンドデリバリーサービスが存在する。Amazon Fresh、Instacart等のサービスがそれだ。InstacartはUberEats等と同様、自分でスーパーを指定して商品を買って来てもらうサービスである。このサービスを利用することでスーパーに行くまでの道やスーパー内での不特定多数の人との接触を避けることができるので、特に最近利用が爆発的に伸びている。

ただそれにより需要過多の状態が続いており、頼んだ商品がスーパーで売り切れていた、配達日時の指定がかなり先になってしまう等の弊害が起き始めている。Amazonも同じく、通常時に比べて配達期間が少し長くなっている場合が多い。

消費者としてはレストラン、スーパーを含めたオンデマンドデリバリーサービスを利用することで不特定多数への接触を大幅に制限することができ、それを大きなメリットと捉えている人も多い。このような背景からオンデマンドデリバリーサービスの利用は着実に増えている。

全米でも在宅勤務への切り替えが早かったシリコンバレー

では、シリコンバレーでの仕事・働き方に関してどのような影響があるのだろうか?

具体的な影響は業界、職種によって様々だろうが、筆者の勤めているようなテック企業では現在100%在宅勤務というのが一般的である。在宅勤務自体は(現在のように100%でないにしろ)以前から一般的に行われていたのだが、全員が自宅からミーティングに参加するのは今まであまりなかった。

企業における在宅勤務指示については、Google、Facebook、Twitter社を筆頭に多くの企業が全従業員を対象に在宅勤務を指示するアナウンスを、3月16日の郡政府による自宅待機命令発令の数週間前から実施していた。

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ただ、在宅勤務指示がなされても仕事自体には直接大きな違いはなく、Zoom、Skype等のビデオ通話ツールを使用し普段通りミーティングやその他業務が行われている。在宅勤務における生産性の低下は、意見は人それぞれだろうが、在宅勤務3週間を終えた筆者は個人的にはあまり感じていない。

在宅勤務のアナウンスがされてからは、より対人的なコミュニケーションをとるため、なるべく音声だけではなく、ビデオ通話機能を使用してのミーティングが好まれるようになった。特にビデオ会議アプリ「Zoom」を使用している会社では、Zoomの写真を取り込んで背景にできる機能を利用して、常夏のビーチだったり、働いていたオフィスの中だったりと各自変化を楽しんでミーティングに参加している。

また直接の仕事以外でも、ランチやコーヒーブレイクなどをビデオ通話ツールを介して行い、自分の好きなものを持ち寄って、自宅から同僚や友人たちと雑談や世間話を行う場を作るなど、なるべく人とのつながりを維持しようとする取り組みも増えている。

このように100%在宅勤務は、筆者のような独身には大きな影響はないのだが、子供のいる同僚たちは子供のいる生活との両立に苦労しているケースも目立つ。ビデオ通話でのミーティングでは興味津々の子供たちが画面を覗き込みにきたり、親の興味を引こうと画面外で大きな声を出したりと、学校のない子育てと在宅での仕事の両立にはチャレンジも多い。

逆にそのような背景もあってか、全社会議で各エグゼクティブが話をする際自身の子供を画面で簡単に紹介したりと、会社をあげて子供のいる同僚たちへ、気を使わなくても大丈夫というようなジェスチャーをしていたりもする。

今回シリコンバレーでの新型コロナウイルスの影響を見てみたのだが、いかがだっただろうか?日本でも緊急事態宣言が発令され、今後、在宅ワークの増加やさらなる外出自粛など、似たような状況になることが予想される。そういった意味では、シリコンバレーの現状を参考に、そういった事態に備えるのも有効かもしれない。

シリコンバレーは土地柄、テクノロジーの活用が進んでいるため、それらの中で役に立ちそうなものを紹介できればと思う。

<著者プロフィール>
高野宏介 テック企業プロダクトマネージャー
シリコンバレー在住。広島県出身。日本のIT企業でエンジニアとして働いた後カリフォルニア大学ロサンゼルス校でMBAを取得しシリコンバレーのテック企業でプロダクトマネージャーとして勤務

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