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超人気AV女優「蒼井そら」が明らかにした反日中国人の意外な本音

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中国で反日デモが過熱していたとき、一人の日本人だけは批判を免れていた。北京在住ジャーナリストの宮崎紀秀氏は「デモに参加した若者たちは『尖閣諸島は中国のモノ。蒼井そらは世界のモノ』と叫んでいた。ここからは建前と本音が入り交じる中国社会の有り様が読み取れる」という――。

※本稿は、宮崎紀秀『習近平vs.中国人』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

蒼井そら=2018年8月4日(中国・上海)
蒼井そら=2018年8月4日(中国・上海) - 写真=Imaginechina/時事通信フォト

■「蒼先生」と呼ばれた日本人AV女優

中国南部浙江省にある「横店影視城」は、京都の太秦のような映画村だ。

日本の植民地下の中国の町並みなどが再現されており、抗日戦争の映画やドラマの撮影拠点としてよく知られる。その上、豊島園のようなウォータースライダーを擁する巨大プールも隣接されており、家族連れで賑わう複合アミューズメントパークになっている。

2014年7月の蒸し暑いある日。芋の子を洗うような人だらけの大プールの中心に特別ステージが設置されていた。午後7時を回った頃、ステージの周りに集まった水着の客はおそらく数千人に達しただろう。日が陰り始めてもまだ高い気温と観客の熱気に包まれたステージの中央に、1人の日本人がいた。

AV女優、蒼井そら。3人組の中心で歌を歌っている。銀のウィッグを着け、その上にネズミにかじられる前のドラえもんの耳のような形の髪飾りが立っていた。

落下傘のように丸く広がったミニスカートに厚底靴。おとぎの国から飛び出してきたような装いだ。ピンクの衣装の上からでも分かる豊かなバストが、唯一彼女らしいと言えば彼女らしかった。

会場からは「蒼先生!」と掛け声がかかる。「蒼先生」とは中国での彼女の愛称だ。

■7月は中国人が「日本」に敏感になる

蒼井そらは、この日、中国人女性と韓国人男性の3人で組むユニット、「果宝醤(英語名JAM)」のリードボーカルとして登場し、アップテンポの歌とダンスを披露した。

観客の大部分は、ステージ目的ではなく、テーマパークに遊びに来ていた人だったはずである。だが、ほとんどの人が、蒼井そらの名と、彼女が日本人であると知っていた。

「前から知っていました。きょう本人を見たけど、とても綺麗」

「彼女はとても明るいから好きです」

こうした声は、男性のみならず、女性からも聞かれた。

日中戦争の口火を切った盧溝橋事件は7月7日に起きた。そのため、中国で7月は「日本」というワードに対して敏感な時期と言われる。しかしここに「反日」の影は全く無かった。

■「尖閣諸島は中国のモノ。蒼井そらは世界のモノ」

先に触れたように、2012年9月、日本政府が尖閣諸島の国有化を決めたことをきっかけに中国全土で反日デモの嵐が吹き荒れた。

デモ隊は、「日本は出て行け」「小日本(日本の蔑称)」と激しく罵る標語のプラカードを掲げ、シュプレヒコールを上げながら行進した。このデモで、若者たちの掲げるプラカードや壁の落書きに、不思議なフレーズが登場した。

「尖閣諸島は中国のモノ。蒼井そらは世界のモノ」

あれ、デモ隊、「日本製品はボイコット」って叫んでいなかったっけ? と突っ込みたくなるが、一方で、若い世代のユーモア感覚に感心した。何より、日本排斥を叫ぶ反日デモの最中にあっても、蒼井そらだけは中国にいて欲しい、と思われるほど、彼女は愛されているのだ。

■中国では裸になる仕事はしていない

蒼井そらの中国での事務所は、北京中心部から少し離れた芸術家が多く住むエリアにある。倉庫のような天井の高い建物で、開放感があった。

反日デモから2年が過ぎた2014年7月、彼女の活動を通じて見える中国人の日本に対する本音を描きたい、とお願いしたところ、快くインタビューに応じてくれた。

「よろしくお願いします」と、麦藁帽の載った頭をひょこっと下げた彼女の第一印象は、小柄。

プロフィールによれば1983年生まれ。2002年にAVデビュー。アイドル歌手のようなルックスと身体は小柄ながら豊満なバストが売り。本人は自著『ぶっちゃけ蒼井そら』(ベスト新書)で「妹系AV女優」として時代の需要に乗ったと分析している。

AVで一躍人気者になり、その後、バラエティやドラマなどに活動の幅を広げた。とはいえ、日本で数多いるAV女優の中で、何故、蒼井そらだけが、特別に中国での人気に火がついたのか? 中国では裸になる仕事はしていない。

■きっかけは中国版ツイッター「ウェイボー」

本人や関係者によれば、きっかけは中国版ツイッター「ウェイボー」を始めたためという。一部のファンは、2010年4月に起きた青海地震の際に、彼女がいち早く支援の募金を呼びかけたことで、人気に拍車がかかったと指摘する。

理由はともあれ、取材当時、彼女のウェイボーのフォロワーは1500万人以上。日本人タレントとしては、私の知る限り断トツのトップだし、中国の人気スターにも引けを取っていない。

中国人にとって、彼女の魅力はどこにあるのだろうか? 本人に直接、尋ねてみた。

「うーん、いひひひー」と、とても芸能人とは思えない笑い声を上げた後、「私も知りたいんですけど。何でしょうね?」と首をひねった。屈託がない。

――中国の反日感情を解くにはどうしたらいいと思いますか?

「日本人も中国人もお互いを知らない人が言っていると思う。日本に行ったことがない人、日本に友達がいない人が言っていると、すごく感じます。交流してみれば分かることもたくさんあるのではないかと思います」

彼女自身は、中国での活動で、日本人だからといって仕事をしにくいと感じたことは「一切ない」と話す。

――人気のある蒼井さんだからこそできることがあるのでは?

「あるんですかねー? よく周りから言われますけど。自分は中国語を覚え中国語で交流していくのを大切にしたいと思っています。まずはそこからだと」

■拙い中国語、気取らない身近さ……

本人の言葉通り、ウェイボーでの「つぶやき」は、彼女自身が中国語を駆使して投稿している。

「ニキビができたー」とふくれ面の自撮りや、「上海ガニ食べたー。食べ過ぎたー」とどアップのカニの写真。我々と何ら変わらない他愛のない日常生活が、拙い中国語のつぶやきから伝わる。気取らない身近さが彼女の魅力と言えそうだ。

「私が日本人ということで、少しでも日本に興味を持ってくれる人がいるならありがたいと思います。もっと興味を持って文化や、今の日本みたいなものを知って欲しいと思います。私、中国に来た時に自転車がいっぱいいると思っていたんです。それは小学校の教育だったんですけど。実際は、北京に関しては全然そんなことはなかったです。それと同じで、実際に見て感じたら違うんじゃないかな、と思います」

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