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「ネットカフェ」への休業要請で”ネットカフェ難民”の行き場が心配されてるけど「ムテイ」はどうなる?

 東京都は10日午後にも「ネットカフェ」「パチンコ店」などの遊興施設に対して”休業要請”を出す方針だ。

「ネットカフェ難民はどうなる?」という声

 それに伴って、いろいろな理由で住居に住むことができない”ネットカフェ難民”が行き場をなくしてしまうのでは?という心配する声が関係者から上がっている。

そんな中で懸念の声が上がっているのが、いわゆる“ネットカフェ難民”の問題だ。一昨年の東京都の推計では、住居喪失不安定就労者、ネットカフェ難民は約4000人に上ると推計されており、30代が38.6%と最も多く、50代が28.9%と続く。その9割以上が男性で、就業体系別ではパート・アルバイトが最も多くなっている。男性の割合が多い理由として、女性は風俗業があることで、男性に比べて住まいがある人も多いのではないかと考えられている。

 ネットカフェ「グランサイバーカフェ バグース」は東京と大阪の16店舗を20日まで営業休止、「ネットカフェDiCE(ダイス)」も東京・神奈川・埼玉の17店舗を22日まで営業休止とすることを決めた。

 ネット上では「緊急事態の営業自粛で“家”がなくなった」「ネカフェは個人のスペースだから落ち着く。今さら集団生活は無理」「住民票取ったんだから頼む、営業してくれ」といった声も上がっており、ネットカフェ、漫画喫茶の休業が拡大した場合、自宅を借りられず、これらの店を転々としながら“その日暮らし”を続ける人たちが路上生活を強いられてしまう恐れがあるのだ。

出典:ヤフーニュース(4月9日)「『緊急事態宣言で“家”を失くした』ネットカフェ・漫画喫茶への休業要請で“ネカフェ難民”がホームレス化?」

 ネットカフェは人間一人がかろうじて身をおける程度の狭い個室スペースをカーテンや木製の引き戸などで簡単に仕切った空間だ。

 夜から朝まで過ごしてもホテルなどと比べてはるかに格安に眠ることができるため、2006年頃から次第に比較的若い世代の貧困層が集中して暮らうになった。それが”ネットカフェ難民”と呼ばれる人たちだ。

 東京都の小池知事はこうした人たちの行き場の確保などのために12億円の予算を計上して対応すると明言している。

都は、こうした人たちに加えて職を失った人たちへの支援を盛り込んだ補正予算案で、一時的に住まいを提供する費用として12億円を盛り込んでいます。

出典:NHK NEWS WEB(4月7日)

 筆者がかつて”ネットカフェ難民”などを取材した経験に照らしてみると、こうした行き場を失った生活困窮者は「ネットカフェ」ばかりにいるわけではない。場合によってはサウナで過ごすこともある。もっと費用が安くてすむ24時間営業のハンバーガーショップで過ごすこともある。さらにお金がなくなれば路上でホームレスの状態になる。

 久しぶりに脚光を浴びることになった”ネットカフェ難民”だが、この人たちの居場所をどうやってつくるかとなると「福祉的な考え方」が重要だと思う。 

 どこかに施設を設営してそこに一律に収容すればいいだろう、などというのは、「上から目線」の「非・福祉的な考え方」だ。

 “ネットカフェ難民”には親による虐待や夫らDV、借金、知的な障害、精神障害、派遣やアルバイトなどの不安定な働き方、性犯罪の被害によるトラウマなど、本当に様々な事情を抱えた、いろいろな境遇の人たちがいる。「一律に」行かないからこそ、こうした人たちの居場所づくりは難しい。

 ホームレス支援団体、一人親家庭を支える団体、労働団体、生活困窮者を支える団体などが「一人ひとりの事情」を考えながら「福祉的な考え方」でこれまで対処しようとしてきた。

 ふだんでも難しいこうした支援の活動が、いま新型コロナウイルスで「感染拡大の防止をしながら当事者に寄り添う」という難題に直面している。

 そうした支援活動の困難さについてはまた別の機会に書かせてもらうことにして、ここでは「ネットカフェ」にばかり注目が集まってしまってその他の問題に向けるべき関心がそがれてしまうのではないかという筆者の懸念を表明しておきたい。

「ネットカフェ」によく似た場所が忘れられているのでは?

 2008年のリーマンショック直後の経済不況で派遣切りが相次ぎ、生活困窮者がネットカフェに泊まる様子が目立って時期に、”ネットカフェ難民”を取材していて筆者が気がついたことがあった。

 ネットカフェにいる人たちが、支援者などのアドバイスを受けて、区役所などに行って生活保護を受けるようになった際に結果的に住むことになった場所の中に「無料低額宿泊所」という施設があった。

社会福祉法に基づいた「福祉施設」の形態をとっているはものの入居する人の生活保護費などの福祉手当を当てにした「ビジネス」の側面を事実上もつ施設だ。「無料」「低額」という言葉は生活困窮者が福祉行政から受け取る手当を使うために当事者本人は無料または低額で宿泊できるという仕組みだ。関係者の間で「無低」「ムテイ」と呼ばれている。 

 生活保護を受けた人たちを集団で住まわせて食事や宿泊スペースを提供する施設で、NPOなどの形式で運営されていた。

 埼玉県や千葉県などで、それぞれの生活保護受給者たちから月々の生活保護費の大半を受け取って、本人にはごくわずかの現金しか渡さないとか、仕切りはごく形ばかりのものでプライバシーも保てないなど、「劣悪な条件」の施設が見つかった。

 筆者も「生活保護ビジネス」ではないかと地元の自治体をたきつけるようにニュース番組やドキュメンタリー番組で報道していった。

 

 この無料低額宿泊所という施設やその類似施設は悪質なものについては報道などをきっかけに”摘発”されるように行政指導の対象になった。 そのことで悪い施設は消えていったが、モグラたたきのような状態で後から後から別の悪質な業者が登場する。運営する団体や人物が代わっただけで、現在も全国各地で数多く運営されている。

無料低額宿泊所は537施設で15600人が暮らす

 厚生労働省が2016年に発表したデータによると、無料低額宿泊所は全国に537あり、15600人が生活していると報告されていた

 しかし、筆者が取材した当時でも無届けの施設は数多くあった。

1 無料低額宿泊事業を行う施設について

(1)入所者数:15,600人(うち、生活保護受給者数14,143人)

(2)施設数:537施設

2 社会福祉各法に法的位置付けのない施設について

(1)入所者数:16,578人(生活保護受給者又は生活保護申請者に限る。)

(内訳)

1.サービス付き高齢者向け住宅:71、2.高齢者を対象とした施設:7,952、3.ホームレスを対象とした施設:3,210、4.アルコール依存症者を対象とした施設:467、5.薬物依存症者を対象とした施設:234、6.簡易宿泊所:706、7.その他:3,938

(2)施設数:1,236施設

(内訳)

1.サービス付き高齢者向け住宅:8、2.高齢者を対象とした施設:626、3.ホームレスを対象とした施設:196、4.アルコール依存症者を対象とした施設:41、5.薬物依存症者を対象とした施設:42、6.簡易宿泊所:40、7.その他:283

出典:厚生労働省発表の報道リリース(平成28年8月25日)「社会福祉法第2条第3項に規定する無料低額宿泊事業を行う施設の状況に関する調査」及び「社会福祉各法に法的位置付けのない施設の状況に関する調査」の結果について

無届けの施設だけで1236施設16578人が暮らす

 筆者の取材経験では無届けの施設ほど、「仕切りは形ばかり」「食事も劣悪」「本人が自由に使える現金が少ない」などかなり問題がある施設が目についた。

 無料低額宿泊所も無届けの施設も喫煙者が圧倒的に多い。

 志村けんの死去の際にも一部で報道されたが、喫煙者が新型コロナウイルスで一気に重症化しやすいことは専門家たちが指摘している。

ネットカフェ難民の4000人という東京の数字ばかりに注目が集まっている

無料低額宿泊所や無届け施設の全国3万人あまりの人たちをどうするのか

 そのまま劣悪な場所に置いておいていいのか

 一度でもどこかの無料低額宿泊所で感染者が出たら間違いなくクラスターになる。

 この非常に深刻な問題を私たちはいまつきつけられている。

※Yahoo!ニュースからの転載

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