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韓国ではすでに当たり前になった「40歳定年時代」が日本にも到来する - 松岡久蔵

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4月から新社会人になられた皆さん、誠におめでとうございます。新型コロナウイルスの感染拡大で、急遽入社式が中止になってしまった方もいるかと思います。

さて、期待と不安で胸が一杯の中、冒頭から申し訳ないのですが、皆さんの時代は40歳が定年になります。

「え?定年って60歳じゃなかったっけ?早すぎる」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今年新卒で働く皆さんの世代は、大体20年のうちに一部の経営幹部を除いて、ほとんどの人が別の会社で働くか、他の何らかの手段で生計を立てていくことになります。仲良くなったばかりの隣の同期の中には、すぐにお別れする人がいても何ら不思議ではありません。

今回はその理由と、そんな状況下での生き抜き方をお伝えできたらと思います。

日本で格別の「会社員」

皆さんの親は大体40代後半〜50代前半くらいだと思います。この世代はいわゆるバブルや、その後の不況で採用数が激減し就職難だった時期に当たりますが、概ね会社という存在を信頼してきたといえます。

働くということは、「会社員」であるとイコールでした。朝着替えて、電車に揺られて会社に行って、昼ごはんを食べて、夜には自宅に帰るというような生活です。それをしていれば、よほどのことがない限り、給料が入り、食べていけたというわけです。

AP

今もそうですが、日本の中ではこの「会社員」という身分が非常に幅を利かせ、銀行からお金を借りる時でも、年収400万円の会社員が家のローンを組めるのに、年収2000万円の雑貨屋がなぜか組むのに苦労するという有様です。クレジットカードも、会社員ならすぐに審査が通るのに、個人事業主は難しい。

さて、その日本社会で別格の「会社員」という身分なのですが、定年が60歳で大体40年間働き続けられるというところが人気の原因の一つでした。

「一度入ってしまえば、多少しんどいことがあってもいつか報われる」。こういう思いで最後まで耐える人間が組織の中で評価されてきたというわけです。

実際、賃金体系もそうなっていて、新卒採用を行う会社のほとんどでは、若手の給料は抑えられているわりに、40歳くらいからグンと高くなるように設計されているはずです。

私が40歳定年と書いたのは、今、日本の会社にどんどん余裕がなくなり、皆さんの面倒を最後までみる余裕がなくなってきたということなのです。

戦後の日本社会は年金や保険などの負担を企業側に求める仕組みになっており、それが国の負担を軽減してきた部分が大きかったのですが、2000年代に入ってから中国など新興国の台頭で日本企業の競争力が相対的に低下しました。少子高齢化で社会保障費が増大したことなどもあり、国や企業の財布に余裕がなくなってしまったのです。

人間は大体、40歳くらいでノウハウがあり体力も気力もある「最盛期」とされるので、逆にそこまでの競争で敗れた人間を切ろうという企業側のモチベーションが働きます。

私もここまで書いてイヤになるほど世知辛い時代ですが、そもそも企業というのは、どれだけ儲けるかしか考えないので、余裕があった時代には従業員の面倒もみますが、そうでなければちゅうちょなく、解雇するというわけです。

こういう時代ですから、かつてよりも変化に対応して生きていく力が求められる時代になったといえるでしょう。

韓国ではすでに40歳定年になっている

40歳定年時代を生きるというと、びっくりされた方もいると思いますが、実はお隣の韓国ではすでにそうなっています。サムスン電子などの大企業に熾烈な競争に勝って入社しても、社内での競争に敗れれば40歳を超えたあたりから肩たたきの対象となる。地方や中小企業の場合は言うまでもなくもっと大変です。

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これは韓国が資本主義の優等生として一気に成長してきた負の部分が出てきたといえるのですが、日本企業でもAIによる省人化などが進むと、同じ道を歩むのは避けられそうにありません。

実際に、日本でも黒字なのに余裕のあるうちに人件費を削減しようと、早期退職をかける企業も令和になってから増えています。

韓国では、会社員を辞めざるをえなくなり、フライドチキン店を開業する50歳男性のことを「起承転チキン」と皮肉るそうです。

競争は激しく、現在フライドチキン市場は飽和状態に近い状態になっています。これはフライドチキンだけでなく、韓国の飲食店市場の全般的な傾向でもあります。少し古い調査で恐縮ですが、独立行政法人、労働政策研究・研修機構の2011年の調査によると、飲食店の数を比べると、人口1000人当たりアメリカが1.8店、日本が5.7店、対して韓国は12.2店と突出して多い。

これだけ店の数が多いと、フライドチキン店を起業したからといって成功するとは限りません。調査した当時よりも、韓国社会はより厳しい競争社会になっていますから、フライドチキン店を開く中高年の男性は少なくとも減ってはいないでしょう。誠に厳しい社会といえますが、日本がこうならないとは限りません。

さて、このように、およそ厳しい時代になると予想されはするものの、今回の新型コロナウイルスの例があるように、人生何があるかわかりません。誠に一寸先は闇なのです。

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