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猛暑の夏に原発再稼動を考える(2/2)

4.なぜ電力会社は危ない原発ほど動かしたくなるのか

メディアは、政府(経産省)の言うがまま、原発を停止して火力発電に変えると、燃料費上昇ゆえに電力コストが上昇すると報じてきました。原発コスト5~6円と火力の10円以上の差額がコストの増加として出てきますが、これは実際にはシミュレーション上の計算にすぎません。しかも、この差額をすべて燃料費としていますが、本当でしょうか。

拙著『原発は不良債権である』でも書いたように、原発には巨額の固定費問題があることが隠されています。50機の原発を全機停止すると、減価償却費、借入金返済、メイテナンス費用などで、巨額の赤字が発生します。そのために、安全性が確保できず稼働できない原発は不良債権に化けてしまうのです。

たとえば、福島第1原発5,6号機と福島第2原発1~4号機の6機分の減価償却とメイテナンス費用だけで年間900億円かかります。原発再稼動を急ぐ背景がここにあります。

その一方で、燃料費の上昇分は形式上自由化されている企業向けではなく、一般家庭用料金に上乗せられています。総括原価主義のもとでは、燃料費の上昇分は3カ月毎に燃料調整額に算入され、電気料金に転嫁できる仕組みになっているからです。その結果、東京電力で見ると、利用者の38%しか占めていない一般家庭が、東京電力の利益の9割以上を占めるようになっています。

さらに、50機の原発のうち35機は減価償却が十分でなく、廃炉・解体のための引当金が不足しています。それゆえ、原子炉等規制法の40年廃炉ルールを適用すると、原発は利益を一切生まなくなるだけでなく、いきなり償却不足額(簿価上の残存価値)と引当不足額が赤字となって表面化し、それが電力会社の経営を大きく圧迫することになります。

しかも電力会社は、危険な老朽原発ほど動かしたくなる動機が働いています。

というのは、原発は40年、稼働率76%で減価償却と廃炉引当が終了する会計ルールで運用されており、事故やトラブルがあった原発ほど償却不足・引当不足に陥っているからです。たとえば、なぜ東京電力が、中越沖地震で事故を引き起こした柏崎刈羽原発2~4号機を動かそうとしているのかも、そこに1つの理由があります。

5.危ない電力会社は社会的に処理すべきです

これまで見てきたように、安全性を担保できない原発=不良債権を抱えた電力会社を野放しにすることほど危険なことはありません。 原発問題はあくまで電力会社の経営問題である以上、電力会社に公的資金を注入しなければなりません。しかし、かつての銀行問題と同じく、公的資金注入を契機にして経営体質にメスを入れないと後々大変なことになってしまいます。

まず前のブログでも書いたように、現在の東京電力の国有化のあり方は、経営責任も貸し手責任を問うことなしに、賠償費用を利用者(国民)に負わせるものですが、この枠組みでは、安全投資をすることなしに危険な原発を再稼働しようとする動機が絶えず働いてしまいます。現状の東電実質国有化の枠組みを壊さなければなりません。

東京電力については経営責任・貸し手責任を問いつつ、発電会社と送・配電会社に分社化して解体したうえで売却する必要があります。その過程において原発を廃炉にしていくために原発を国家管理に置いていく方法も考えられます。しかし、順序を間違えると、ただの東電救済になってしまうことに注意が必要です。

同じく関西電力もミニ東電化しています。とりわけ現在の老朽原発依存の経営体質は危険きわまりない状態です。経営責任を明確にして公的資金を注入し、発送電を分離したうえで、安全投資をしたり、廃炉費用を援助したり、効率的なガス発電を建設させたりするべきでしょう。

全国的にできるだけ早く原発をなくすにも、公的資金が必要となります。

資源エネルギー庁が出した資料によれば、既存原発の償却不足額(残存簿価)と廃炉・解体費用の引当不足額で4兆円ほどの資金が必要となります。さらに電力会社がいう廃炉費用が十分かどうかも検討の余地があります。正面から原発の即時廃止を実現するには、公的資金を入れてもそうすべきだという社会的合意を作る必要があります。

そうした合意が困難で、もし一定数の原発を動かすとしても、(原発に安全ということはありませんが)危険で事故リスクの高い、即時廃炉にした方がいい原発を明確化しなければいけません。超党派の国会議員が作る「原発ゼロの会」が公表した24の即時廃炉リスト(6月29日付ブログ参照)が参考になります。

http://genpatsuzero.sblo.jp/ こうしたリストは経済性を考えても合理的です。危険な原発はそれだけ安全投資が多額になりますから、必要な安全投資を行うと稼働する経済的意味がなくなるからです。

しかし、廃炉までの期間を短縮するとしても、もし一定数の原発を動かすとすれば、新しい規制当局が最も重要な問題になります。メルトダウンを隠し、原発事故後にいち早く逃げた原子力安全・保安院は国民の信頼を完全に失っています。大飯原発3.4号機を含めて、これまで保安院が行った「安全審査」は全て無効にする必要があります。

6.プレイヤーがレフェリーを兼任?

新しい原子力規制委員会が「原子力ムラ」から選ばれようとしている事態は極めて危険です。「原子力ムラ」からは選ばないとしていた細野環境相は、国民に対して背信行為を行っています。

田中俊一氏は原子力事業である日本原子力研究開発機構出身であり、明らかに推進側の人間です。しかも原子力損害賠償紛争審議会では、東電救済のために自主避難の賠償を一貫して妨害し、20mSv以下は帰還しても健康に影響がないとしたり、食品の安全基準を500Bqから100Bqに引き下げるのに反対したりしてきた人物です。

5人の候補のうち4人までが原子力関連団体や事業者から報酬を得ています。とくに更田豊志氏は日本原子力研究開発機構の現職幹部であり、日本原子力発電からも報酬を得ています。推進側が規制側を兼ねると、すべてのルールが崩れていきます。

福島原発事故以前から原発の危険性に警鐘を鳴らしていた人物を入れることが絶対に必要です。

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