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マスオ役の増岡弘さん「『サザエさん』のギャラが安すぎる…」

「益々家ちゃん助」の高座名で落語を披露していた増岡さん

「10年以上前からガンを患っており、最近は腰痛もひどく、長時間の拘束がある仕事は断わっていたようです」(知人)

『サザエさん』(フジテレビ系)の「フグ田マスオ」役や、『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の「ジャムおじさん」役を長く担当してきた声優・増岡弘さん(享年83)が、3月21日に直腸ガンで亡くなっていたことが、所属事務所から発表された。

 2019年8月に「高齢により」との理由で、それぞれを降板してからは、『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)だけが、飄々とした独特の語り口を聞くことができる、唯一の番組となっていた。

「晩年の増岡さんは、旅行で訪れたニュージーランドに魅せられて、移住を考えていましたが、『ずっと続けている声優学校の講師を、やめるわけにはいかない』と、断念したそうです」(事務所関係者)

 東京藝術大学在学中に、たまたま舞台美術を手伝った小劇団で、俳優生活をスタートさせた増岡さん。

 マスオさん役で知名度が上がったあとも、みずからのギャラの取り分が多くなる大手事務所に移籍せずに、声優の相互扶助組織を母体とする事務所に籍を置きつづけた。ベテラン偏重でギャラが決まる声優業界の特殊な慣習のために、生活が苦しい若手たちを慮ってのことだったという。

 一方で、41年間携わった『サザエさん』に対しては、知人に不満を漏らしていた。

「作品としてはともかく、仕事としての『サザエさん』には、最後まで複雑な思いを抱いていたと思いますね」(知人)

 原因は、常識はずれのギャラの安さだった。『サザエさん』で共演したフネ役・麻生美代子さんが亡くなったあとの2018年9月、増岡さんは本誌の取材に、こう憤慨していた。

「まず、著作権料が原作者サイドに支払われ、声優たちのギャラは、その残りで賄われている。当然だけど主役ということで、サザエさん役の加藤みどりさんのギャラが断トツに多いんだ。

 そのぶん、ほかの出演者は月2回の収録で、1日のギャラが2万円ほどのこともあった。麻生さんも、大好きな旅行にも年1回しか行けないまま逝ってしまったよ……。

 これは金額の問題じゃない。声優の仕事に対する侮辱なんだ。だから僕は、『サザエさん』は本当は嫌いなんだ」

 国民的アニメには知られざる“給与格差”があったが、増岡さんがこのことを公の場で語ることはなかった。さらに、語気を強めてこう続けた。

「番組以外の場で『サザエさん』を演じていいのは加藤さんだけで、僕たちは、できない契約だったんだ。東日本大震災後に、サザエさん一家みんなでチャリティ活動をやろうと提案したときも、実現しなかったしね」

 制作のフジテレビに、ギャラや契約内容について確認すると、「従来より、制作および契約の詳細についてはお答えしていませんが、ご指摘のような事実はございません」との回答があったが……。

 稀代の大声優は無念の思いを胸に抱いたまま、この世を去った――。

写真・高山数夫

(週刊FLASH 2020年4月21日号)

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