記事

「原発から見えたこの国のかたち」を読む

「原発から見えたこの国のかたち」(鈴木耕・リベルタ出版・単行本)を読みました。ウェブ上の週刊誌「マガジン9」に連載したコラムをまとめたもので、著者はあとがきで「この本は、研究者でもジャーナリストでもない、普通の一市民の記録である。」と述べています。しかし著者は、れっきとした編集者でありライターです。言わば一市民の目線で継続的に原発問題を論評してきた集大成として「この国のかたち」が見えてきたレポートです。

ですから大上段から原発問題を斬って見せるというよりも、昨年3月の「フクシマ」以来の私たちが経験してきた、恐怖と不安と疑問の連続から「この国はおかしい」と気づくに至る過程を、ほぼ忠実に再現しています。だからこそ、「原発マフィア」によって日本の統治と経済がいかに歪められ醜悪な形になっているかを、鮮やかに浮かび上がらせてくれるのです。

内容は、
①原発さえなかったら……
②原発と想像力
③原発はいらない20の理由
④原発事故と被曝
⑤原発マフィア
⑥原発と政治家
⑦原発とメデイア

の7章からなっています。中でも原発はいらない20の理由は、私たちがこの一年半の間に、さまざまな経路で学んで現代の常識としてきたことの総決算と言えるものです。

どこから見ても救いようのない誤算の産物である原子力発電を、いまだに産業の支柱と信じ込んでいる、あるいは信じ込ませたいと思っている人たちがいることは驚きですが、本人たちはそれほど深く「原発マフィア」に組み込まれ、その中で生きてきたのです。

「フクシマ」の現実から目をそむけ、事故をなるべく小さく、できれば「なかった」と考えたいのは、本能的な反応に近いのでしょう。だから「原発の全廃は日本の集団自殺だ」などと言い出すのです。事実はその正反対で、原子力依存の推進こそが破綻へと突進する狂気の沙汰であるにもかかわらずです。

あまりにも当事者だった人たちには、大きな枠組みを変えるような発想は難しいと考えるのが順当でしょう。ところが今の日本の政財界には、そうでない人が非常に少ないのですから、組織をいくらいじっても内容はあまり変りません。なにしろ国の根幹の形を変える話ですから、総取替えでもしない限り本当には変えられないでしょう。つまりは政治を変えるしかないのです。

反・脱原発運動は、国民対政権の対立の構図に近づきつつあるように見えます。これは戦後日本の進路選択のやり直しであり、最大の政治課題なのです。私がこの本から読み取ったのは、そういうメッセージでした。

あわせて読みたい

「書評」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    “愛国芸人”ほんこんが「デマツイート」で提訴される 原告代理人・米山隆一氏は怒り

    SmartFLASH

    07月26日 09:58

  2. 2

    東京五輪「手のひら返し」が驚くほど早かった理由 - 新田日明 (スポーツライター)

    WEDGE Infinity

    07月26日 08:17

  3. 3

    配信が充実した東京オリンピック 無観客開催でも十分なお釣りが来る内容

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    07月26日 08:32

  4. 4

    60歳4人に1人が貯金ゼロ 原因は晩婚化による“支出三重苦”

    女性自身

    07月26日 13:23

  5. 5

    作曲家がLGBT差別の杉田水脈氏を肯定…開会式のドラクエ起用に疑問続出

    女性自身

    07月26日 12:26

  6. 6

    小山田圭吾の件について考える 作品と作者は別ものか

    紙屋高雪

    07月26日 09:10

  7. 7

    東京五輪にかこつけて文在寅大統領が日本から引き出したかった"ある内容"

    PRESIDENT Online

    07月26日 16:27

  8. 8

    五輪開催に反対でも観戦したくなるのは人情 選手を応援するのは自然な感情の発露

    早川忠孝

    07月26日 14:00

  9. 9

    阿部一二三&阿部詩、九州まで夜通し車で…兄妹金の陰に両親の壮絶献身

    女性自身

    07月26日 08:32

  10. 10

    「金メダリストの“看板”で仕事をもらえるほど甘くない」五輪アスリート“第二の人生” 現役引退後の現実

    ABEMA TIMES

    07月26日 10:23

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。