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「日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ」飯尾潤著

著者は、淡々と記述しながらも55年体制崩壊後の混乱の原因の解明をしようとしていると感じる。

藤末が思うポイントは

1.「省庁代表制」
、明治憲法では、内閣組織は政党によらない超然内閣を規定していた。つまり、明治憲法下では限定された「議院内閣制的」内閣であったと指摘されている。
筆者は、議院内閣制とは本来、権力の集中を可能にする制度であるが、戦前戦後はその不全形態である「官僚内閣制」の歴史であると捉えている。そして、官僚が各省庁毎に民意代弁と利益媒介機能を担い、民意集約機能を補完したと言う。
この指摘は、私には衝撃的だ。現在、我が民主党が民意を反映しているかと言えば、あまりにも不完全である。また、官僚機構が民意や利益集団の代弁者かと言えば、官僚たたきで自発的な機能を果たしていない。つまり、現在は「政治主導の下に」、その補完システムであった「省庁代表制」までも機能不全にしてしまったのではないかとの思いに至った。

また、「政府・与党二元体制」と「政権交代なき政党政治」では、「与党」という組織が政府とは異なる立場表明を行うことが議院内閣制からの逸脱を生み出しているとの指摘は重い。
我が民主党も代表(総理大臣)が変わる毎に徐々に二元体制に移行しつつある。

2.コア・エグゼクティブ(権力核)の集中の他国との比較
筆者は「統治機構の比較」を行い、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国との比較が行われている。筆者が指摘する権力核の集中と権力の民主的コントロールの確保そのためのガバナンスシステムという論点から見ると、韓国とわが国の国の活動様式の違いも説明できるのではないかと思えてくる。

筆者は、「マニュフェスト」の実現を進めるための体制とルールの整備やマニフェストを選択する政権選択選挙の実現などを示唆している。つまり、今の選挙や政府の仕組みをより高度化すべきとの主張だと私は解釈している。
この点は私も同じである。イギリスに訪問し、議員や研究者と議院内閣制の可能性と政党のあり方を議論したが、まだまだわが国の議院内閣制、特に政党のガバナンスはイギリスに比べはるかに未熟である。

ガバナンスが確立した政党を作ることが議院内閣制を機能させるひとつの要因であることを本書を読んで、自分なりに確信することができた。

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