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新型コロナ感染拡大ペース、なぜ欧米と東アジアで差が出るのか


アメリカ・ニューヨークのセントラルパークに設営された仮設病院(EPA=時事)

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大が止まらない。ただ、世界を見渡すと、国によって感染スピードの違いも見て取れる。いったい何がその差を分けているのか。世界各国のコロナ感染状況をウォッチし続けている作家の橘玲氏は、「国ごとの気質や生活習慣の違いも影響しているのではないか」と分析する。

 * * *
 日本の感染状況が緊迫していますが、各国別の状況を比較してはっきりしているのは、東アジアで感染を抑制できていること。感染源となった中国に加え、韓国、香港、シンガポール、台湾、そして日本と、国によって感染対策は異なりますが、どんな方法をとっても東アジアではそれなりに抑え込めているといえます。

 死亡者数で中国を超えたイタリアやスペイン、予想される死亡者数が24万というとてつもない数になった米国などに比べて、なぜ東アジアは(相対的に)うまくいっているのか。

「ワクチン接種率がちがう」「コロナウイルスが変異している」「東アジア人種が遺伝的に感染症に耐性がある」などの生物学的要因が将来、見つかる可能性は否定できませんが、現時点では「気質」と「生活習慣」ではないかと私は考えています。

 日本をはじめ東アジア系は、心理学でいうビッグファイブで内向性と神経症傾向のスコアが高いとされます。これは不安感が強く、対人接触を嫌うということでもあります。

 不安感が強いと頻繁な手洗いなどをするようになります。内向的だと強い刺激を苦痛に感じるので、たくさんの人が集まるパーティに参加して見知らぬ人と握手やハグをしたり、大声で会話したりということを好みません。これは感染症対策にまさにぴったりです。

 対人距離に加え、マスクに対する考え方も異なります。「目元/口元理論」というのがあって、「欧米人は口元で相手の感情を推察するので、サングラスは気にしなくてもマスク姿を不気味に感じる。アジア系は目元で感情を読み取れるので、サングラスを怖いと思うがマスクは気にしない」とされます。また欧米の言語は破裂音が多く、飛沫の飛び方が異なるという見方もあります。どちらも研究によって証明されているわけではありませんが、説得力はあると思います。

 東洋と西洋の気質や生活習慣、文化的な違いが、感染拡大の勢いの差にあらわれているのではないでしょうか。

累積死亡者チャートは強力な「予測ツール」

 国別の状況を比較するには、感染者数より死亡者数をみるのが確実です。感染者数は国ごとの検査のやり方で変わりますが、東アジアや欧米であれば、病院は院内感染を防ぐためにも、肺炎で入院した患者をすべて検査するはずです。死亡者数はごまかしようがないのです。

 死亡者数の特徴は、遅行指標だということです。潜伏期間を5日、発症・入院から死亡までを平均14日とすると、現在の死亡者数は19日前の感染状況を反映していることになります。医療崩壊を起こしたイタリアでは、平均して入院から8日で死亡していると報じられましたが、この場合は13日前の状況を反映しています。

 ロックダウン(都市封鎖)しても、それ以前の感染者数は変わりませんから、2~3週間は入院数も死亡者数も増えつづけ、効果が現われるまで20日間程度かかります。つまり、2~3週間後の未来(死亡者の人数)をほぼ確実に知ることができます。累積死亡者チャートは強力な「予測ツール」なのです。

 日本は感染者数が増えていますが、死亡者はそれほど多くありません。その理由も、死亡者数が遅行指標だということで説明できます。また、感染者数が減り始めてから死亡者数の減少が確認できるまで3週間程度かかるので、いったんロックダウンするとすくなくとも1か月は解除できません。

 イタリアやスペイン、フランス、イギリスなどヨーロッパの国々が次々とロックダウンし、ニューヨークなどアメリカの都市はさらにきびしい状況に置かれていますが、これまで先進国のなかで、韓国だけはロックダウンせずに感染者の急増を抑え込むのに成功しました。現時点では日本とヨーロッパは状況が大きくちがい、ニューヨークのような全面的な感染爆発が起きているわけでもありません。外出制限の強化などは必要としても、「日本はもうダメだ」とか「東京を封鎖するしかない」というような極論は不要だと思います。

 経済よりも生命の方が大事なのは当然ですが、仕事を失った人に1回30万円振り込むより、すこしでも売り上げが立つよう商売を維持できるようにした方がいいことも明らかです。韓国や台湾ができているのだから、日本でも低空飛行のままできるだけ経済を回していく方がいいように思います。

◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などベストセラー多数。

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