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田嶋陽子さん、かつての女性論客を批判「みんなズルかった」

男性陣をタジタジにしてきた田嶋陽子氏

政治家として活動した時代も

 今、田嶋陽子さん(79才)を再評価”する声が日増しに高まっている。きっかけは2019年秋だった。創刊まもないフェミニスト雑誌『エトセトラ』が「We Love 田嶋陽子!」と銘打って一冊丸ごと田嶋陽子特集を組んだこと。そして1992年に出版された田嶋さんの著書『愛という名の支配』が新潮文庫で復刊されたことを機に、新聞、ラジオ、雑誌などが続々と田嶋さんをフィーチャーするようになったのだ。

【別写真】政治家として国会議事堂の前に立つ田嶋陽子さん

 * * *
 イギリスへの留学を経て大学教授として法政大学で英文学と女性学を教えていた田嶋さんが、ブレークするひとつのきっかけとなった『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)に初めて出演したのは1991年。

 当時、女性の社会進出は進みつつあったものの、働く女性は「OL」とひとくくりにされて、結婚や出産で会社を辞めるのが当たり前だった。

 実際、当時の厚労省の調査によれば“女性の”育休取得率は4割。そもそも制度のない会社も多かった。

 1980年代後半は、空前のバブル景気によって着飾ってディスコで踊る強い女も喧伝されたが、会社や家庭では女性はあくまで男性のサポート役とみなされ、強気のバブル女子もその財源は気まぐれにもらえるお金持ちのあぶく銭。自立からはほど遠い時代だった。

 そんな時代にテレビ映えするファッションで登場した田嶋さんは、〈男だってパンツを洗え!〉〈女性はパン(職業)を、男性はパンツ(家事)を〉といったセンセーショナルな発言を連発し、ビートたけしや嵐山光三郎氏、故三宅久之氏ら男性コメンテーターをタジタジにさせた。

 激論の最中に、「もう帰る!」と席を立つ「先の読めなさ」も視聴者の心をつかみ、一躍時代の寵児となった。同番組プロデューサーの皇(すめらぎ)達也さんが振り返る。

「面白い大学教授がいる、ということで出演してもらったら、男性出演者とのバトルが大受けしました。田嶋さんは、いまでいう坂上忍や有吉弘行のように、テレビで本音を口にできる貴重な人。誰にだって本音はあるけれど、テレビでそれを言えるような勇気と度胸を持つ人は少ない。加えて、女性の論客として会ったことのないタイプだった。小池百合子さんのような女性論客は女性であることを意識して話すけど、田嶋さんは女性である前に“田嶋”でした。ベースがしっかりして勇気があるので本音をしゃべれたのでしょう」

 とりわけ白熱したのは、当時東大教授だった舛添要一さん(71才)との激しいバトルだ。時には互いに激高し、「ブス!」と声を荒らげる舛添さんに、田嶋さんが「ハゲ!」と怒鳴り返すこともあった。

「当時はコンビみたいにやりあっていましたが、台本なんてありませんでした」

 そう振り返るのは舛添さん。

「彼女のように声を荒らげて議論する女性はそれまでいませんでした。当時はよく『男はパンツを洗え』と言われたけど、私は家族の洗濯係で女房のパンツまで洗って干していた。家事もやっていたから『すべての男をダメって言うな!』と反論したのを覚えています」

うるさい女だ、いい加減にしろ!

 多くの男性の反感を買った〈男はパンツを洗え〉発言で、家庭内がガラリと変わったと語る女性もいる。

「テレビを見た母から『田嶋さんが言うんだから、やってくださいよ』と言われた父がなんと翌日に洗濯機を買ってきて、自ら洗濯するようになったんです。それまで“家事は女がやるもの”という考えだった父は、田嶋さんのおかげで大きく変わり、その後は料理までするようになりました」(40代会社員)

 ほかにも〈男手放しても職手放すな〉や、若い女性の性被害を議論した際に言った〈たとえ鍵がかかっていない家でも勝手に入れば泥棒〉などの名言に救われたと振り返る女性は少なくない。

 電車の中で突然見知らぬ女性が「私が言いたくても言えないことを言ってくれてありがとう」と泣きながら田嶋さんに告げたこともあった。

 だが当時は「女は人前で怒ってはいけない」とされた時代だ。テレビを見た男性からは「生意気」「うるさい女だ」「いい加減にしろ」といった激しい批判が殺到し、女性のファンや味方が大勢いた半面、「あんなに怒って同じ女性として恥ずかしい」という意見も散見された。

 このとき、当の本人は何を考えていたのか。

 田嶋さんは、「賛否両論の否がつらくて、誰の声も届かない山奥に住んでお粥をすすっていた」と振り返る。

「あの頃の女性論客やフェミニストってみんなズルかった。テレビを軽蔑したふりをして私のように表に立って主張しませんでしたから。だから当時は男性視聴者のバッシングだけでなく、アカデミズムの女性学の人からもそっぽを向かれたんです。私だけが死ぬほど叩かれたけど、いちいち反応していたら病気になるから一切耳を傾けなかった」(田嶋さん)

 あまりの悪口に耐えかねて新聞もテレビも見なくなったが、それでも『TVタックル』の出演は辞めなかった。

「本を書いても数千部しか売れないことがほとんどだけれど、テレビに出ると1%の視聴率だったとしても、およそ100万人が視聴します。当時の私は20%を叩き出していたから、2000万人が見ているわけ。もちろん私の意見に賛成の人りじゃないけど、2000万人の中にはわかってくれる人もいるはずだから、嫌な思いをするたびにいつやめようかと迷い、それでも少しでもフェミニズムを広められるなら、ここで頑張ってみるしかないって」(田嶋さん)

 テレビ出演の前に書き上げた『愛という名の支配』も田嶋さんの背中を押した。

 同書で田嶋さんは、「女らしさ」という規範を押し付ける母親との関係に苦しみながら、その束縛と抑圧を乗り越えるまでの長い歩みを描いた。

「私は母親からいじめられてボロボロになったけど、本を書くことがセラピーになりました。自分なりのフェミニズムの視点を深めて、母の呪縛や支配から自立できました。自分を解放できたから、頭の中が岩のように固い世のオヤジたちから何を言われても怖くなかった。自分の頭で考えて自立することは、自信につながるんです。私はそのことをオヤジたちの向こう側にいる、多くの女性に伝えたかった。テレビの中ではオヤジたちと闘っているように見えたかもしれないけれど、私はつねにブラウン管の向こうに向けて発言していました」(田嶋さん)

 同書に田嶋さんの原点があると語るのは作家の山内マリコさんだ。前述した『エトセトラ』の責任編集を務める山内さんは同書に解説文を寄せている、

「田嶋先生はご自分の体験から、苦しみの根っこにあるものは何だろうと考え抜いて、“構造としての女性差別”という答えにたどりついた。血の通った優しさがあって、そこが好きです。フェミニズムは女性を、いつの間にか背負わされている苦しみから解放してくれるんです」(山内さん)

 2001年、田嶋さんは当時の土井たか子社会民主党党首に誘われて参議院選挙に出馬し、見事に当選した。

『TVタックル』の初出演から10年の時が流れていた。田嶋さんの登場以降、社会は少しずつ女性の自立に寄り添ったかのように見えた。1998年には江角マキコが主演したドラマ『ショムニ』(フジテレビ系)の“闘うOL”がブームに。同年ケアマネジャー試験も開始され、多くの女性が受験した。社会で闘い、働く人が目指すべきモデルとされた。その一方で、働く女性が専業主婦にノーを唱える「専業主婦論争」も勃発している。

 女同士が綱引きをするなかで国会議員となった田嶋さんは児童虐待防止や原発反対を訴えた。しかし北朝鮮による拉致問題の対応などをめぐって社民党との間に亀裂が生じ、わずか1年で離党した。

 田嶋さんと同じ時期に国会議員となった舛添さんは、「彼女は政治家に向いていなかった」と振り返る。

「政治家は組織人であり、党や支持者の縛りがあるから本音を語れません。田嶋さんのように媚びずに意見を忌憚なく言えるように見える福島瑞穂さんだって、党の公式見解以外のことは一切しゃべりません。田嶋さんは群れをなさない孤高の人で、自分の意見に合わないことには従えないから、きっぱりと政治家を辞めたのでしょう」(舛添さん)

※女性セブン2020年4月16日号

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