オリンピック委員会と世界保健機関(WHO)が、「たばこのない五輪」を提唱していて、最近開催された国ではタバコの煙のない五輪が実現しています。日本でも、他人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙の防止が、ずっと叫ばれていましたが、たばこ関連の企業や葉タバコ農家、飲食業界などの反対で実現しなかったものが、五輪を機会に前進しました。まだまだ緩い不十分な規制だと思いますが、まず一歩を踏み出したことは評価したいと思います。
改正法は、昨年7月に一部施行され、学校、病院、行政機関では、たばこが吸えるのは屋外の決められた場所だけになり、屋内は完全禁煙になっています。4月1日の全面施行で、オフィスや飲食店などの施設にも規制の対象が広がり、屋内に喫煙専用室を設けることはできますが、原則として禁煙になります。
ただ、飲食店には例外が設けられていて、客席面積が100平方メートル以下で個人または中小企業の既存店は喫煙が認められます。厚労省の推計では、全国の飲食店の55%が該当するということで、「経過措置」とされていますが期限は決まっていません。これに加えて、東京都の条例では、飲食店の面積に関係なく、従業員を1人でも雇っている店は原則禁煙になっています。
都内の飲食店の約84%(約13万軒)が該当して、国の規制を大きく上回っています。喫煙専用室を設ける店は、都のアンケートによると5%にとどまっている、とのこと。禁煙エリアで喫煙をした場合は、都道府県知事などの指導や勧告、命令に従わないと、改正法では30万円以下、都条例では5万円以下の過料が科せられます。喫煙者自身より、周りで煙を吸わされる受動喫煙の方が、健康に被害があることは知られています。受動喫煙による日本の死亡者は、年間1万5千人に上ります。厚労省の調査によると、習慣的に喫煙している人は、2018年には、17.8%で、長期的には低下傾向ですが、2017年より0.1%上がっています。喫煙者の3人に1人が禁煙したいという意思を持っているので、禁煙治療にも力を入れてもらいたいと思います。
また、先日亡くなった志村けんさんは、最近4年間は肺炎を患ったことをきっかけに禁煙していたということですが、それ以前はかなりのヘビースモーカーだったそうです。タバコによる体への悪影響は、禁煙しても一定期間残ると考えられています。新型コロナウイルスによる肺炎の重症化に喫煙がどの程度影響しているのかは、まだはっきりはしていませんが、世界保健機関(WHO)は、喫煙は重症化リスクを高めるとして「喫煙しないで」と呼び掛けています。