太田光が4月5日(日)にTBS『サンデージャポン』で発言した内容はコロナウイルス感染で重苦しい空気が広がる今の日本で多くの人に聞いてもらいたいものだった。
ネットニュースでもスポーツ紙などが書くとは思うが、言葉の一つひとつに重みがあると感じた。
太田光の言葉は国民一人ひとりがどうこの問題に向き合えばいいのかを考えるうえで参考になるものだ。
内容を詳しく書き起こしておく。
番組ではVTRで、新型コロナウイルス感染の拡大で東京では前日1日あたり118人の過去最多の感染者が出たことや安倍首相による全世帯に布製マスク2枚を配布するという「アベノマスク」問題や1世帯あたり現金30万円を支給するという政策や閑古鳥が鳴く繁華街の店の様子を映像で伝えた。その後で今後の問題をめぐってこの番組らしく、ジョークを交えたトークが続いた。
特に安倍首相が打ち出した2枚のマスク配布政策、いわゆる「アベノマスク」問題については、そもそもマスクは効果があるとかないとかWHOの見解も揺れるなかでマスク問題についての爆笑問題・太田光の以下の言葉は注目に値する。
(太田光)
「安倍さん、いろいろ言われているけど、これ(安倍首相がマスクをしている画像)も間抜けな画だからね。突っ込むとは突っ込むのでいいと思うんだけど、いろいろやっているうちの一つで(このマスクには)洗濯できて使えるという利点もあるわけだし、
今はとにかく分断を・・・
なんかオレが言うと本当に説得力がないんだけど・・・(笑)
言い争いとかそういうのを、突っ込む気持ちはね、ギャグとして突っ込む気持ちはあるんだけど、トンチンカンなこともいっぱい出てくると思うんだけど今はとりあえず、あの人と小池さんと・・・それから厚生労働省の人たちがまあ一生懸命やっているところであってそれに突っ込みたい気持ちはわかるけれど、我々がそこを疑い出すとさっきも花田君がちょっと疑わしいみたいなことをね、あったじゃない?検査の・・・それはもう
陰謀論というのは一番効率が悪くなる
ような気がするんだよね。
とりあえずは行き先を決めている人たち(首相や知事ら)にとにかくがんばってもらいたい
ということと
一番守らなきゃいけないのは医療現場
だから、そこに混乱させるようなことに我々が揉めだしてなっちゃうとそれは一番効率が悪い」
この後にスタジオ出演者のテリー伊藤らから「こういう状況で誰かからもらうという『おねだり』していてもしょうがないじゃないですか」「作ろうと思えば作れる」「政府に文句を言っているんだったら」などの声が上がって、太田は再び続けた。
(太田光)
「(政府に)文句を言っている時間が無駄になっちゃう。もったいない・・・」
"薄口政治評論家”と名乗る元衆議院議員・杉村太蔵も、北海道で鈴木知事が道内で感染が拡大しつつあったときに感染拡大地域に徹底的にマスクを配ったら、高齢者が行政からマスクが届いたことで「しなきゃならないんだ」と意識が高まったという事例を挙げて「何にでも根拠はある」と発言した。
いま、日本で医療崩壊が起きてしまう瀬戸際に来ているあることは客観的な事実だろう。
我々一人ひとりの国民にできることはないのか問われるなかで、首相や知事らの政策で揚げ足を取ることよりも、国民が心を一つにして南極を乗り切っていくべきだという考えを太田は示したのである。
(太田光)
「(マスクの効果についての)WHOの情報も二転三転しているように見えるけど
マスクが足りないときだったら、その発症している人は別にそこまでマスクをする必要はないメッセージも伝えているし、情報が変わってきたら、またその都度メッセージが変わってくる。とにかくパニックにならないってことが一番重要」
番組では「医療崩壊」の危機にある日本の現状を、すでに医療機器や医療スタッフ不足が続くニューヨークの現地報告も交えて伝えた。
(太田光)
「いまニューヨークの現状を見ると確かにもう言葉も出ないというくらいな感じになっているけれども、正しく怖がるということがやっぱりいまも重要であれで(映像を見て)怖いといって病院に行っちゃうとさらに医療崩壊につながっちゃうわけだからそこは落ち着いて家で療養するとかの意識も大事」
(太田光)「発症している人の数を見るとやはり日本では抑えているのは事実・・・」
この発言を受けてスタジオにいた呼吸器外科医で肺炎や肺がんのスペシャリストの奥仲哲弥が「太田さんの言う通り!」と賛同した。
新型コロナで死去した志村けんについても太田光は発言している。
(太田光・志村けんの死去で悲しむ芸能人の反応を聞いて)
「本当になんと言うんでしょう。整理はできない。たぶん当たり前だと思うんですよね。
もう1回・・・この(コロナ)騒ぎが終息したら、もう1回ちゃんと志村さんの追悼番組をみんなで楽しくやりたいなと思うしみんな本当に遺族みたいなものだから心の整理がつなかないのは当たり前でまだ初七日ぐらいですよね。
それから四十九日。一回忌。一周忌となっていって。
そうやって徐々にしか心の整理はついていかないから、今は言葉がないのは当たり前のことなので、ましてや今医療に当たっている世代の人たちにも、みんなこれは同時に起きていて、だけど目の前の患者さんを救わなきゃいけないというのでかなりやっぱりつらいと思うし、『外に出るな』と言われていまテレビを見ている人たちだって『ああ、志村さん・・・』というのはダブルでつらいと思うから、本当にいまみんなつらいのは本当しょうがないと思うけど。
これは何かこう、もうちょっと時間が経って自分の心も・・・
いろいろ怒られたりするじゃない。外に出てどうこうと。
だけど志村さんって『変なおじさん』って、ああいうのを表現して、それで人を救ってきた一面もあるんだから、やっぱり今、自分の心も大事に過ごしてほしいなと思うし」
他方で太田は、志村けんが死去したことでコロナの怖さを改めて分かったという声に対して、冷静に考えることを求める発言をしていた。
(太田光)
「本当に残酷な言い方だけど、志村さんが亡くなったことでコロナの毒性が上がったわけではない
って、そこは冷静にそこは切り離して考えてほしいとも思う」
さらに太田は新型コロナの影響でテレビ番組にも自粛や延期などが進んでいることについて以下のように発言した。
(太田光)
「僕はどう思うかというと、こういうのって、我々、お笑いっていうかバラエティーというか、芸人というのは、まあ、とにかく一番必要ない仕事
なわけで「不要不急」と言われると一番最初に「要らない」という仕事なんで、この番組だって、それこそどうかね?というのはみんな思うのだけど、これは世代的なものもあるかもしれないけど、テレビが日常的に(放送を)やっているということは僕にとってはすごく重要なこと
でだからこそ、もちろん今日も初めてTBSで楽屋が別々になったんですよ。
スタッフもみんなそれぞれ検温してあらゆること、とにかくふだんの私生活から『他人に感染させないこと』とか、みんな注意して、厳重に注意してやれるとこまではやっていく。それしかできない」
杉村太蔵が突っ込みを入れた。
(杉村太蔵)
「以前、1か月ほど前に太田さんは『ちょっとテレビが不安を煽りすぎているんじゃないか?』とおっしゃっていましたが、何か心境の変化あります?」
(太田光)
「それは今でも思う。
だから、特にこうやって志村さんが亡くなったり、そういうときに外国ならこうとか(報道する)。
もちろん、そういう番組があるのは重要だけど、そうじゃない番組もあるのが・・・(望ましい)。要するにそこで追い詰められていく人たちが、逆に『これは大変だ』と思って病院に駆けつけたらそれが医療崩壊になる。
テレビって、それこそ志村さんがやってきてくれたような、『人の気持ちを柔らかくすること』
だったり、そういうことで僕はね・・・テレビに救われてきた部分がある」
この日の『サンデージャポン』は太田光の独壇場だった。
いつもは他の出演者の発言を遮って我先にと発言機会を追求するゲストたちもこの日は影を潜め、太田の話を静かに聞いていた。
新型コロナウイルス、政治家との向き合い方、志村けんの死、テレビというメディアのあるべき姿・・・。
当代一流の芸人でかつ文化人でもある太田光。
「いま私たちが私たちが考えるべきこと」を示唆する言葉をテレビで放った言葉の意味を噛みしめたい。
※Yahoo!ニュースからの転載