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「ノマド」ってバブル期の「脱サラ・フリーター」と何が違うの?~オバタカズユキ×常見陽平×古市憲寿・三世代鼎談前編~

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「若者けしからん論」としての「フリーター悪玉論」


オバタ:「フリーター」という言葉はリクルートが編み出して、いろんな雑誌が「若者」特集を組むときに使いやすいキーワードということで、あちこちで使われることになった。それが徐々に抵抗なく使えるよう5~6年かけて広まっていった。アルバイト人数の統計は確かめてないけど、増えているなぁいう実感はあった。

でも、ある時急に「フリーター」に対するイメージが転換したんですよ。俺は99年から『大学図鑑!』という本を出していて、毎年キャンパスでスタッフが現地取材をかけています。そのレポートで、2003年頃からにあちこちの中堅大学で「フリーター撲滅」みたいなポスターを見かけた、と報告されるようになった。

常見:それは、どういうことですか?

オバタ:キャリアセンターが増え始めた頃に一致しているんだけど、就職課の入り口のところに「フリーター撲滅」的な張り紙や看板が置いてあったんです。「フリーター」が社会問題化したんですよ。新聞も「フリーターが問題だー」と騒ぎ始めた。確かに、卒業しても就職しない大学生が増えているっていう実感は中堅以下の大学であったのだけど、「なんだこの右向け右は」と思った。いっせいに風向きが変わって、日本全体に「フリーター=社会悪」という空気が広がった。

常見:2002年に、リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫さんが『新卒無業。』って本を書いて話題になりましたね。

一つ流れの中で言うと、大学が増えて就職率を売り物にするようになって、その後いかにフリーターが少ないかをアピールするようになった。実際は多いんだけれど、詐称した数字でやって、「いかに就職率がいいか」をアピールするようになった。これも大学のランクや学生のタイプによって違うけど、胸が痛んだのは、いわゆる「Fランク」の大学の学生と面談した時に、「もういいです。フリーターにさせてください」って言われたことがある。

―キャリアセンターできたのは、1999年の立命館大学が最初です。その後に2002年に帝京、2003年辺りから立教、早稲田、駒沢、明学、東洋が開設しています。

オバタ:一気に増えたのは、2003年ですよね。ざっくり言えば、偏差値階層で横並びしている大学の間、例えば日東駒専の層が1つでもやると、「うちの大学もやらなきゃ」ということになる。一番必要だった層に火がついたってことじゃないかな?

古市:僕はちょうど2003年に大学に入学しました。2003年に「若者自立再生プラン」が厚労省など4つの省庁合同で出されているんですけど、冒頭が面白い。「フリーターは悪だ」って価値観に染まっているんですよ。フリーターが増えると、社会はやばいことになるって。さらに、後半では、「起業をいかに増やすか」という話になって、「若者を起業させればいい」という話が非常に大きな紙幅をとって書かれている。実際、「フリーターブーム」は終わりますけど、今度は2004年くらいから第三次ベンチャーブームが起こります。

常見:「フリーター悪論」は何年かに一回流行る。起業ブームも何年かに1回流行りますね。

オバタ:フリーターから起業へって、飛躍があるよなあ。「フリーター個人に問題がある」という安易な見方が強かったんだよね。「自分のキャリアプランをちゃんと考えてない」「大人がお説教しなきゃいけない」というようなことですよ。産業構造的なことが背景だったということが後から解明されるんだけど、その前までは学者も若者個人を責めていた。

常見:どちらかというと「若者けしからん」の文脈でしたね

―現在だと、「学生の公務員思考が高まっている」という話がありますよね。

常見:それも何年かに一度、繰り返されてますよ。

オバタ:景気の変動に、影響されて出てくる。

古市:生産性本部のデータで「一つの会社に勤めたい」という人が一番少なかったのが2000年ぐらいなんですよ。本当の大企業は、あのデータでは補足できていないですけど、2000年ぐらいに「一つの会社に勤めたい」人が最も少なかったことを考えると、実はムードとしては2000年ぐらいは、社会の雰囲気に余裕があったのかも知れませんね。バブル崩壊以降、1997年から2000年くらいは景気が一時的に回復する時期でもありました。

以下、後編に続く

プロフィール

おばた・かずゆき1964年東京都生。コラムニスト。上智大学文学部社会福祉学科卒業後、2カ月間の出版社勤務を経てフリー。硬派な社会批評からペットエッセイまで、幅広く執筆・編集活動を行う。著書に『何のために働くか』などがある。また、『大学図鑑!』『資格図鑑!』の各年刊シリーズ(いずれもダイヤモンド社)も手がける。




常見陽平(つねみようへい):著述家、株式会社クオリティ・オブ・ライフフェロー、HR総合調査研究所客員研究員。1974年宮城県生。株式会社リクルートで、「とらばーゆ」編集部などに在籍。2005年に玩具メーカーに転じ、2009年に株式会社クオリティ・オブ・ライフに参加。2012年に退社し、フェロー就任。一橋大学大学院社会学研究科修士1年にひっそりと在籍中。執筆・講演の専門分野は就活、転職、キャリア論、若手人材の育成、若者論、サラリーマン論、社畜論、ノマドワーク、仕事術など。就活、キャリアに関する著書多数。
Twitterアカウント:@yoheitsunemi



古市憲寿(ふるいち のりとし):1985年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。著書に、「絶望の国の幸福な若者たち」、「希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 」、「上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください」など。
Twitterアカウント:@poe1985



資格図鑑!2013
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オバタ カズユキ
ダイヤモンド社



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