1――強制力のない「緊急事態宣言」でも、自粛は一気に広がる可能性
政府から、改正「新型インフルエンザ対策特別措置法」に基づく「緊急事態宣言」が発令されるのではないか、との観測が高まっている。宣言されると都道府県知事による、教育機関の閉鎖、不要不急の外出自粛、集会やイベントの開催制限といった措置が、法的根拠をもって実施できるようになる。強制力が伴う措置には、患者の急増に対応する目的で臨時に医療施設を開設する場合や、必要物資の売り渡しを業者や生産者に要請する場合などが該当する。その場合、知事が必要と認めれば、所有者の同意が無くても、土地や建物を使用することができるようになり、建築基準法や消防法などの規制に従う必要もなくなる。また、衣料品や食料品などの売り渡しを求めた際、正当な理由なく指示に従わなかった場合は、罰則として30万円以下の罰金を業者などに科すこともできるようになる。
一方で、強制的な措置で民間に損失が生じた場合は、国及び都道府県が補償するとの規定が設けられている。ただし、緊急事態宣言に基づく措置の多くは、国民に協力を求める“要請”と法的な履行義務を有するが罰則を伴わない“指示”であるため、イベントの開催中止や飲食店の閉鎖などに伴う損失は補償する規定が設けられていない。
感染拡大の収束が見通せない中で事態が長期化すれば、企業や個人は回復不可能なほど、深刻なダメージを受ける可能性がある。政府には、今後起こり得る最悪を想定したうえで、政策を前倒しで準備し、実行するようにしてもらいたい。