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「コメは不足しない。買い占めないで」は本当か~新型コロナが食卓に与える影響~ - 山本謙治(農と食のジャーナリスト)

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共同通信社

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は7日にも緊急事態宣言を出す方向で調整していると報じられた。先月末、首都圏では外出自粛要請を受けての消費行動で、スーパーなどで保存の利く食品が店頭から消えたが、今回も同様の事態が予想される。また外食産業の多くは前年対比を50%以上下回るなど、多くの経営者が頭を抱えている状況だ。

緊急事態宣言がしばらく続くと懸念されるのが、私たちが口にする食べ物は、今後も継続的に供給されるのかということだ。

国連の食料農業機関であるFAOによれば、ロシアやウクライナなどの小麦生産国、インドやベトナムといった米の生産国が輸出制限を始め、国際相場が上昇しているという。日本はこれらの国からの輸出に依存していないためいまのところ影響はないとされているが、今後はどうなるだろうか。

本稿では、食品の中でも青果物に主要穀物、卵や肉、乳製品といった畜産物について概況をみていこう。

最初に結論を述べておくと、「夏までの間、食料は潤沢に供給されるので問題はない。ただし、中期・長期にわたりコロナの影響が続くと、見通しは不透明になる」ということである。【農と食のジャーナリスト・山本謙治】(やまけんの出張食い倒れ日記

日本人の主食、お米は十分に足りているか

写真AC

3月25日、小池百合子東京都知事の緊急会見で、週末の不要不急の外出の自粛が要請された。これによって首都圏のスーパーや百貨店で米を購入する客が殺到、一時は売場に商品が並ばなくなる事態となった。この状況に対し、米を販売する米穀店の関係者は「お米は不足していないので、買い占めないで」と声を上げているが、実際のところはどうか。

日本における米の総需要は、昭和38年の1341万トンをピークに減少を続け、平成29年度には838万トンとなった。つまり年間の米消費は850万トンもあれば事足りる状態である。そして令和2年2月末現在の段階で米の民間在庫は270万トンもあり、業界からみれば「だぶついている」状態だ。

民間在庫だけで年間総需要量の1/4以上の在庫があるうえに、国として常に100万トン前後の備蓄米を保有している。しかも7月からは宮崎県や鹿児島県などから早場米が出荷される。どう考えても今年度の段階で米が不足することは考えにくいので、安心してよいだろう。

ただし、先に挙げた年間の米消費量は、パンやうどん、パスタなどの小麦製品が潤沢に出回り、消費者が米以外の主食を選択できる状況での需要量であり、小麦などの輸入が途絶しない前提である。これについては後ほど述べる。

国産と輸入で大きく事情が分かれる生鮮野菜・果物

食卓で重要な生鮮野菜はどうか。結論からいえばこれも潤沢に供給されるので、短期的には問題ない状況だ。もともと国産の野菜・果物といった青果物は、暖冬だったこともあって収穫は順調。一方で消費の方は暖冬ゆえ、鍋物などの需要が減少し、冬物野菜が売れずという状態だった。

これが2月に入ると、コロナの影響で中国産の野菜の一部品目の輸入が停まった。大きな影響が出たのは飲食店やホテル向けの業務用野菜で、皮を剥いた状態の玉ねぎなどが入ってこず、価格が前年35%程度上がるなどの混乱を招いた。ただ、こうした中国産野菜も現在は回復しているため、影響は軽微だ。

3月から4月下旬までの季節は「端境期(はざかいき)」と呼ばれ、青果物の出荷が例年、不安定になるものだ。この時期は産地が南日本から北上してくる過程にあり、気候的に不安定で収穫量も大幅に変動する。季節はずれの降雪や春雨があった影響で収穫作業ができず、3月最終週は大根が平常時の3倍となる一ケース5000円以上に値をつけもした。

とはいえこうした混乱は一過性であり、国産野菜は今後、通常モードに戻るはずである。

輸入野菜に関しては今後、注意が必要になってくる。先に中国野菜の混乱の話をしたが、これから起こるのはそれ以外の各国からの輸入不安定化である。いま最も影響を受けているのが航空便を使ってコストをかけて運んでくる高級輸入野菜だ。

Getty Images

初春といえばアスパラガスがシーズンで、とくにフランスやイタリアといったヨーロッパから極太のホワイトアスパラガスが輸入されるのを心待ちにしている美食家も多い。ところが、新型コロナの感染拡大が続くイタリアは、4月中のミラノ発~日本行きのアリタリア航空が全便欠航となった。このため輸入商社はフランスやドイツなどを経由して輸入するなどの策を講じているが、コスト等もかさむため、ほぼ輸入できない状況が続いている。

フランスからの便は現在のところ動いており、アスパラガスやトリュフなども輸入できる状況ではあるが、航空便を使用した食材運送は嗜好品・高級品が多いため、人の輸送よりは緊急性が低いと見なされる。このため、航空便を使用した高級食材の輸入は当面、見通しが悪い状況が続くだろう。

では世界各国の産地から船便で届く、一般的な青果物はどうか。これも、産地国の新型コロナの状況によって不透明感が増している。船便の場合はアジアであれば直近では、フィリピンで外出禁止令が発令されたことで出荷作業に遅滞が発生。多くの家庭で朝食に並ぶバナナの入荷が不確実になり、ゴールデンウィークあたりで顕著に品薄になるのではないかと言われている。それ以外の品目についても、各国で船便の荷積み作業を行う人員の確保ができず、スケジュールが大幅に乱れている状況だ。

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