
一方、武蔵野市は、下記の理由から6日の新学期から学校を4月17日(金)まで暫定的に再開すると決めた。17日以降については、再開後の状況を見て判断し、児童・生徒、教職員に感染者が発生した場合や地域における感染拡大の状況に応じても学校休業について検討する。
また、再開にあたっては「新型コロナウイルス感染症に対応した武蔵野市立小・中学校における学校再開ガイドライン」により最大限の感染防止策を行うとしている。
■再開の理由
▼国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議での議論・現在の知見では、子供は地域において感染を拡大する役割をほとんど担っていない。子供は地域において感染を拡大する、いわゆるドライビングフォース、になっているということはほとんどない。
・学校は、県という大きなくくりではなくて、地域や生活圏ごとの蔓延の状況を踏まえて判断していくことが重要。
▼児童・生徒の現状
・3月からの休業実施によって、学校から家庭学習の課題を提示していたが、自習であるため、学校は学習の定着状況を把握することができず、家庭での取組状況も個人差がある。
・起床時間が乱れていたり、パソコンやスマートフォンなどで動画を見続けていたりと生活リズムが崩れている。
・家に一人でいる場合があり、食事についても、準備されている家庭もあれば、コンビニ弁当やファーストフードを買いに行かせる家庭もあり、栄養バランスが崩れていることも散見される。
・吉祥寺という繁華街を抱えており、現状でも時間を持て余した多くの生徒が街に出ている状況があり、リスクを高めている恐れがある。
▼休校中の学童クラブの課題
・学校を休業とした場合、学童クラブによる対応が主体となるが、学童クラブでの保育環境は、学校と比較して密集度が高い。
・新1年生の入会申請状況が、令和2年3月30日現在、515名であり、平均出席率が約8割と高く、現行の体制での特別措置の継続は、安全確保の面から課題がある。
■すでに限界
この決定について、4月3日に会派代表者会議が開かれ、市から議会へ説明があった。説明の概要は、上記の理由に加えて、長期期間にわたっての休校で子どもが限界にきている。学習の機会を確保したい。5月6日まで休校を延長してもこの日で再開できるかは見通せない。学年末とは違い、新学期となり新たな学級をつくる大切な時期であることなどを考慮し、臨時の教育委員会を2日に開催し決定したとしていた。
特に休校期間に子どもたちを受け入れている学童クラブでは、支援員は超過勤務(残業)として対応しており疲労がたまっている。学校を再開したほうが環境は良くなるとの説明もあった。
学校の教室よりも密接な関係になる保育園や学童クラブで子どもから感染が広がった事例が現状ではない(保育士が他所から感染した例はある)ことを考えれば、より広い空間になり、養護教員もいる学校のほうが安全性は高いとの考え方は理解できる。さらに、休校中の子どもたちの生活が現状で良いのかと問われると、答えに窮してしまうのも現実だ。6日から再開したいとする武蔵野市の選択は、理解できるともいえる。政治的にも大きな決断だ。
■経験のない現状
新型コロナウイルス感染症は、これまでに経験したことのない状況を生み出している。休校が良いのか、再開が良いのかの正解は誰にも分からないのではないか。私自身も判断に迷う。賛否の意見は市民の間でも分かれているようだ。この状況で、今回、教育委員会が判断したのであれば、まずは尊重したい。
そのうえで、最大限の注意を払い、状況が変われば躊躇なく休校をすることが必要だ。そのさい、誰が悪い、判断を間違えたなどの批判や政局にするのではなく、では、どうすればより良くなるのか、現状からの最善策を行政だけでなく、市民も議会も話し合える土壌が必要になってくる。足の引っ張り合いをする場合ではない。
また、子どもに持病などがあり、登校に不安に思うことはあるだろう。子どもと保護者が話し合い、登校をしないで自宅で待機すると判断した家庭があれば、そのことも尊重することも必要だ。
繰り返すが、今までに経験したことがないことが起きている。正解はすぐに見つからない。その前提での最善策を考えることこそが、今こそ必要だ。
【参考】
武蔵野市
市立小・中学校の暫定再開について
市立小・中学校における学校再開ガイドラインについて