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地下アイドルの自宅を特定しトップオタが襲撃 瞳に映った景色と自室からの生配信が仇に

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは地下アイドルとして活動する20代女性のマンションに侵入し、わいせつな行為をしたとして、住居侵入と強制わいせつ致傷の罪に問われた無職、佐藤響被告(27)の裁判員裁判。

初公判は2月18日に行われました。傍聴券24枚に対して傍聴希望者が43人というやや注目されていた裁判です。

起訴状によると2019年9月1日の夜10時50分〜10時52分。被告人は被害者(21)が自宅の玄関ドアを開けようとしたところ、被害者の口をタオルでふさいで転倒させ玄関内に侵入して、お尻の辺りを服の上から触り全治1週間のケガを負わせたという内容です。

裁判員裁判のため、検察官もわかりやすい冒頭陳述でした。

検察官「被告人は2009年にアイドルヲタクとなり、2014年にグループBのファンになりました。2018年2月にグループBに被害者が加入。被告人は2018年7月〜2019年4月、被害者のファンとして週5〜6回イベントに通っていました。被告人はグループBのCDを数百枚購入。熱心なファンです。そのあと、被害者がグループAに移籍しました」

被告人は大学で自動車整備を学び、卒業後は自動車整備会社に就職。整備士として勤務していました。現在27歳のため勤めていたのは約5年です。「被告人は2009年にアイドルヲタクとなり…」と、検察官がアイドルヲタクを職業かのように説明していたのが印象的でした。

被告人は有名な自動車ディーラーで勤務。土日祝日は休みにくいためアイドルのイベントに参加できませんでした。そこで被告人は7月1日に退職。仕事を辞めたあとは、消費者金融から借金をしてイベントに参加していたそうです。

イベント参加のために仕事を辞めるほど熱心なアイドルファンだった被告人。被害者がTwitterに投稿した自撮り写真を見て、撮影場所が東京都江戸川区の東京メトロ東西線葛西駅だと気がつきました。なぜわかったのかはこのあとの被告人の供述調書によって明らかになります。

被告人は、8月25日に葛西駅で被害者を待ち伏せて被害者を尾行し、被害者が住むマンションを特定。そして被害者が住むマンションの敷地内に入る方法を調べていました。犯行当日は、目立たないように黒いTシャツに着替えてマンションの踊り場で被害者を待ち伏せ。自宅の鍵を開けた時に後ろから襲いました。

被害者の隣人が「警察を呼びますよ」と大声を出したため、被告人は焦って逃走。この時、被告人は紐の切れたマスクと花柄の黒いタオルを現場に忘れていきました。大変焦っていたことがわかるエピソードです。防犯カメラの映像もありますが、逮捕のきっかけは現場に残された忘れ物でした。

ファンの間で被害者の自宅が特定されつつあった

弁護側の冒頭陳述です。

弁護人「(被告人は)仕事では高い評価を得ていたのですが、アイドルに人生が変わるほどのめり込んでしまいました。グループAのファンの中でも1番のファン、いわゆるトップヲタと言われていました」

弁護人がわざわざ“トップヲタ”と強調していました。続きます。

弁護人「被害者も被告人のことを、「ひびき君」と呼び、あくまでもアイドルとファンの関係でしたがチェキでツーショットを撮るなど親密な関係を続けていました」

ファンとアイドルの関係でツーショットチェキを撮ることを親密な関係と呼ぶのかと疑問にはなりました。

弁護人「被告人は土日のイベントに足を運ぶため仕事も辞めました。明らかに度が過ぎていました。当然、お金は底を突いていきます。そうすると被害者の被告人に対する態度は冷たくなり、被告人は自殺を考えました。自殺をする前に…と決意したのが今回の事件でした」

被告人の行動はすべて極端です。被害者のライブに行くために仕事を辞め、収入がなくなったので自殺を考え、死ぬ前に被害者を襲う計画を立てています。すべて針が振り切れている印象を受けますね。弁護人としては、それだけ思い詰めていた心境での犯行でしたが事件から5ヶ月経って拘置所で反省していると。そして、被害者が地下アイドルということとTwitterにアップされた写真がきっかけということでマスコミに大きく報じられ、社会的制裁は受けているという主張になります。要するに、起訴状の内容は事実で量刑をどうするのか話し合いましょうという裁判です。

被害者の供述調書です。幼い頃からアイドルになることを目標にしていた被害者。小学生の時の将来の夢はワンマンライブをすることでした。去年11月、所属するアイドルグループのワンマンライブが決定。長年の夢が叶うというところで今回の事件が発覚し、予定されていたワンマンライブは中止。手が届きかけていた長年の夢を叶えることができませんでした。

被害者は現在、実家で暮らしているそうです。今後についてはアイドル活動を続けたい気持ちはありますが、事件のショックから立ち直れていません。また、メンバーに迷惑をかけてしまったと責任を感じているといいます。

事件を受けて被害者の所属事務所が「次のイベントに(被害者は)出ません」とツイートしたところ被告人は「大丈夫?」とリプライを飛ばしています。この時、事件の犯人はまだ特定されていません。被害者もまさか顔なじみのファンである被告人が犯人だとは想像もしていなかったようです。「警察に怪しい人物の名前を挙げて」と言われても、被告人の名前を出していませんでした。犯人が被告人と知った時は相当ショックを受けたそうです。

被告人の取り調べでの供述です。8月25日、駅で待ち伏せをして被害者のマンションを特定。2日後の8月27日には、マンションのエントランスまで行きますがオートロックのため侵入を断念しました。


興味深いのは葛西駅だと特定した方法です。ニュースでは被害者の瞳に映った情報のみで被告人が自宅を特定したかのように受け取ることができましたが、事実は違いました。被告人は、被害者がグループBに所属していた時に、ファンの噂として「彼女(被害者)が浦安辺りで電車に乗っているのを見た」と耳にしていました。

さらに被害者が自らの動画配信の中で「引っ越しをしたけどそんなに遠くないんだ」との発言も耳にしています。この2点から被告人は「彼女は今も浦安の近くに住んでいるのかな」と推測したそうです。

そして3つ目の情報が問題のツイートです。被害者がTwitterにアップした写真を見ると、私でも瞳に何かが映り込んでいることを確認できました。被告人は瞳の写真から、駅のホームが地上に出ていることに気がついたそうです。さらに目を凝らして見るとホームの壁際に段差があり、線路の数は3〜4本。反り返っている駅舎の屋根という特徴がありました。

これまで耳にしていた被害者の住まいは浦安付近という推測と照らし合わせると、地域がかなり絞られてきたわけです。自らの推測をグーグルストリートビューで確認。「あれ?この条件に該当するのは葛西駅だけしかない」と気がつきました。


そして部屋の特定について。被告人は被害者の生配信を何度も見ていました。自宅のピンクのカーテンの前で毎回配信していること、角部屋と話していることも知っています。マンションに行くとピンクのカーテンの部屋は1つ。8月25日、マンションの玄関にいた被告人は、被害者の生配信中にピンクのカーテンの部屋があるフロアの部屋のインターホンを順番に鳴らしていきました。それで配信の映像から音が鳴ったことで部屋番号を特定しました。

被告人はスマホの検索履歴の解析によると『ストーカーが教えてくれた住所特定』というスレッドを見ていました。他に検索していた事件に関係ありそうな単語は、「葛西駅」「地下アイドルと繋がる方法」「ファンとアイドルが付き合うこと」「SNSでの住所バレ」「うまく失神させるコツ」「絞め技」「レイプ被害」「睡眠薬」「手足拘束Q&A」でした。

ちなみに消費者金融への借金は780万円。この理由はのちほど明らかになります。法廷には被告人の母親が情状証人として出廷しました。母親は被告人がアイドルにハマっていたことは認識していて「やり過ぎはホントいけないと、趣味程度に抑えて欲しいとは言ってたんですけど」と度が過ぎていることを注意していたようです。そして今後の監督を約束していました。

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