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【原発PR看板】福島県のアーカイブ施設「伝承館」初代館長に長崎大の高村昇教授。広がる「なぜ?」と落胆。県は「人格で選んだ」。ここにも山下俊一氏の影か

小さな新聞記事に衝撃が走った。福島県が双葉郡双葉町中野地区に今夏、オープンさせる予定のアーカイブ施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」初代館長に、長崎大学の高村昇教授(51)が就任したというのだ。非常勤で、任期は4月1日から5年間。推薦した福島県は「人格で選んだ」、「考え方に偏り無い」と説明するが、高村教授は原発事故後、山下俊一氏とともに福島県内で〝安全安心講演〟をした人物。一貫して被曝リスクを否定し続けている上に、そもそもアーカイブの専門家でも無く、驚きと落胆が広がっている。


【「考え方に偏りが無い」】

「伝承館」の指定管理者である「公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構」(斎藤保理事長、以下機構)は、福島県からの推薦を受けて高村氏に館長就任を依頼したとしている。ではなぜ、震災・津波・原発事故を後世に伝えるアーカイブ施設の館長に高村氏がふさわしいのが。福島県はどんな理由で機構に推薦したのか。取材に応じた福島県生涯学習課の担当者は「3つあります。まず、人格的なものが1つあると思います」と理由を明かした。
 「考え方に偏りが無い、人格的に温厚で高潔な方である。これが1つ目の理由です。もう1つは本県の復興、避難地域等の支援に関わってこられた方であるという事です。そして、伝承館の運営に必要な能力を持っている方であるという事。これらの3点が推薦理由です。検討過程で何人かの名前が候補に上がりましたが、最終的に高村先生が適任だろうという結論に至りました。高村先生には数カ月前に推薦の打診をし、『ご協力出来るのであれば』と快諾していただきました」
 原発事故直後に山下俊一氏とともに「福島県放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任。復興庁発行の冊子「放射線のホント~知るという復興支援があります。」の中でも被曝リスクを否定している高村氏の考え方に「偏りが無い」と県職員が評価しているとは驚く。結局、福島県が〝高村館長〟に望んでいるのは風評を払拭するような発信なのだ。
 「伝承館には博物館的な要素も当然あるのですが、研修・研究事業にも力を入れて行きたいと考えています。高村先生の発信力ですとか、リスクコミュニケーションにおける経験や知識を活かしていただきたいと期待しています」

「伝承館」初代館長に就任した高村氏は、復興庁発行の冊子「放射線のホント~知るという復興支援があります。」の編集にも関わっている。被曝リスクを全否定する人が本当に「考え方に偏りが無い」のか、大いに疑問がある

【山下氏とともに〝安全講演〟】

高村氏はそもそも、博物館や「アーカイブ」の専門家では無い。
 1993年長崎大学医学部を卒業。講師、助教授、准教授を経て、2008年度から長崎大学大学院・医歯薬学総合研究科の教授。2013年度からは長崎大学原爆後障害医療研究所の教授を務めている。原発事故直後の2011年3月19日、山下俊一氏とともに福島県の「放射線健康リスク管理アドバイザー」に就任。福島県内各地を巡って講演し、次のように語っている。
 「放射性セシウムはろ過されやすいので水道水には出てこない」
 「放射性セシウムセシウム 137 が体に入った場合の半減期は30年では無い。子どもであれば2カ月、大人でも3カ月程度で半分になる」
 「100 ミリシーベルトを下回る場合、現在の科学ではガンや疾患のリスクの上昇が証明されていない。一方、煙草を吸う人のガンになるリスクは、1000mSvの放射線を被曝するのと同程度のリスクと考えられている」
 「鼻血が止まらなくなったとか、同じような質問をよく受けます。そのような急性の症状が出現する被曝線量は500から1000mSv以上と言われています。福島の人がそのような線量を被曝しているとは考えられないので、放射線の影響ではないと思う」(公益財団法人福島県国際交流協会発行の講演録より)
 2013年6月の第11回委員会からは、福島県の「県民健康管理調査」検討委員も務めている。復興庁が2018年3月に発行した冊子「放射線のホント~知るという復興支援があります。」では、「作成にあたり、お話を聞いた先生」に名を連ねている。冊子は「原発事故の放射線で健康に影響が出たとは証明されていません」と断言している。
 県議会で「伝承館」の問題を継続的に取り上げている宮本しづえ県議(日本共産党福島県議会議員団)は、高村氏の館長就任に驚きの声をあげた。
 「高村さんは山下(俊一さん)と一体。考え方に偏りの無い人を選ぶのであれば、3月末で県立博物館長を退任した赤坂憲雄さんの方が適任だろう。アーカイブの専門家なんだから。機構が『伝承館』の指定管理者に選ばれた時点で、こうなる事はある程度分かっていた。そして、それは県の意思でもある。高村さんが館長に就任した事で『伝承館』の性格は決まったと言える」



(上)福島県立博物館で開かれている特集展「震災遺産を考える~それぞれの9年」。伝承館オープンの告知ポスターも掲示されている=福島県会津若松市
(下)撤去された看板を持つ大沼さん。「伝承館」での常設展示を望んでいる=2015年12月撮影

【「PR看板、常設展示を」】

「高村氏は、一定の放射線量は『むしろベネフィット』と語っていますよね。過去の発言や経歴から考えると、伝承館を通して、学びに来る人達に『放射能は正しく恐れろ』と誘導するような、禍々しい〝放射線安全PR伝承館〟になるような悪い予感がします。伝承館や福島イノベーション・コースト構想には、原発再稼働と復興PRを進める経産省が絡んでいますからね」
 原発PR標語「原子力 明るい未来のエネルギー」の考案者で、標語看板を原発事故の〝負の遺産〟として現場保存するよう望んでいた大沼勇治さん(44)=双葉町から茨城県古河市に避難中=は、高村氏の館長就任に落胆した。
 「標語考案者として、原発事故でかけがえのない故郷の『明るい未来』も奪われた者として、偽りとなってしまった看板の現場保存を切に訴えてきた当事者として、館長に就任した高村氏に伝えたいことがあります」として、次のようなコメントを寄せた。
 「撤去前、『復興祈念公園内に展示する』と伊澤史朗町長から告げられました。あれから4年余。結局、看板が『伝承館』で常設展示されない事を知りました。町長の言質と約束が反故にされたのです。
 原発PR看板が伝承館で常設展示されれば、多くの国内外の人々が双葉町を訪れるたびに国策に振り回された過去を猛省し、復興のあり方に問題は無いか確認し合う事が出来ます。看板は、写真ではなく町役場前に眠る本物の看板を展示して欲しい。館内が無理であれば、修繕して屋外に展示するべきだと私は強く願っております。
 あの看板は、原発事故を一目で伝える事が出来る震災遺構です。二度と同じ失敗を繰り返さないための教訓として、原発PR看板を必ず展示してください。私は双葉町民として逃げも隠れもしません。標語考案者として永遠に語り継いでいく覚悟です」

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