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内政問題でなければ何だというのだ

森本防衛相「韓国の内政問題」=玄葉外相らと認識の違い―大統領の竹島訪問(時事通信)

 森本敏防衛相は10日午前の記者会見で、李明博韓国大統領の竹島訪問について「韓国の内政上の要請によるものという印象を持っている。他の国の内政にほかの国がとやかくコメントするのは控えるべきだ」との考えを明らかにした。玄葉光一郎外相らは、「わが国の立場と相いれない」などとして抗議する姿勢を示しており、閣僚間で認識の違いが表面化した。

 

 さて、韓国の李明博大統領が竹島/独島を訪問したわけです。それに関して森本防衛省は「韓国の内政上の要請によるもの〜」と述べ、これに玄葉など民主党内からも噛みつく人が出ていることが伝えられています。どうなんでしょうね、民主党とはかなり右寄りの政党である一方、考え方が近いはずの右派からは毛嫌いされている党でもあります。民主党が左派なら保守本流と呼ばれた時代の自民党なんか極左どころじゃ済まないよと思うところですが、民主党の実像と右派の脳内民主党像はなかなか一致しません。もっとも自民党政権を激しく批判する一方、全国各地の自治体では自民党と手を携えて首長を支える与党の一員であるはずの民主党に票を入れたりするような人もいるのですから、民主党の実像を理解したがらないのは右派だけではなく支持層もまた同じなのではないかという気もします。

 森本防衛相の起用は、こうした実情を踏まえた上での民主党の答えだったように思います。政策的には右寄りである一方、考えを同じくする右派からは嫌われる、そうした行き違いを少しでも解消したいという意図があってこそ、この森本氏という閣僚起用するには大きく政治的なバランスを欠いたと言わざるを得ない人選があったはずです。ここぞとばかりに「右」の人間を起用することで、右派からの誤解を少しでも解きたかったのでしょう。しかるに今回の森本発言は、氏を起用した民主党執行部の期待を大きく裏切るものでした。民主党執行部としては、もっと威勢良く勇ましい発言を期待していたことと思われますが、出てきたのは意外や核心を突いた発言と言えます。これに我慢ならなかった一人が、玄葉外相だったりするわけですね。

 

国際司法裁提訴に応じず=竹島めぐり韓国政府(時事通信)

 韓国政府当局者は11日、玄葉光一郎外相が李明博大統領の竹島(韓国名・独島)訪問の対抗措置として竹島の領有権問題を国際司法裁判所に提訴することを検討すると表明したことに関し、応じない考えを示した。聯合ニュースが伝えた。

 当局者は「独島は明白なわが国領土であるため、応じないというのが韓国政府の立場だ」と強調。また「日本側が国際司法裁判所への提訴を検討するのは、紛争地域としようという意図だ」と警戒感を見せた。 

 

 これは二重の意味で内政問題と言えます。とりあえず今回の日本政府側の対応としては国際司法裁判所上の提訴をちらつかせるというもので、外交問題に発展させるぞというポーズを取ってみたのでしょうか。もっとも北方領土など日本が領有権を主張する問題に関しては、しばしば「領土問題など存在しない」という立場を我が国の政府は採ってきたはずです。「我が国固有の領土」であるからして、領土問題など存在し得ない、領土問題の存在を認めること自体が国辱だと、そういう見地も強かったように思います。今回こそ後手に回った都合上、国際司法裁判所云々が出てきたのでしょうけれど、逆に日本が「独島は側国の領土である」と訴えられる立場であったなら、韓国政府と同様に「紛争地域としようという意図だ」と突っぱねたであろうことは想像に難くありません。外交/領土問題とは認めたくないという思惑は、日韓双方が共有しているように思います。

 元より、日本では外交問題の内政問題化が顕著です。何かと日本人とメンタリティの近そうな韓国でも似たような状況が窺われるところでもありますが、一見すると外交上の問題に対処しているように装われていても、実際のところ国内の有権者向けのパフォーマンスが優先されている、そんな場面も頻繁に見られるのではないでしょうか。この竹島/独島の問題が日韓両国の関係に大きな影響を与えることはないかも知れません。両国政府ともに今回の李明博大統領の訪問で領土問題に何らかの進展があるとは、流石に考えていないでしょう。ただし、相手国に向けてどのような態度を取るか次第で、国内の有権者からの支持に少なからぬ影響が出ることは、例によって両国政府とも強く意識しているはずです。

 時に外交は、失敗した方が国内的には賞賛されることがあります。つまり外交上の成功とは本来なら相手国との合意であり軋轢の解消であるはずですが、むしろこれを快く思わない人が多い社会では逆になるわけです。相手国との関係を破綻させ、摩擦をより大きくした方が国内的には評価されるのですね。「連盟よさらば!」と国連を脱退した松岡洋右は英雄として当時の日本では大絶賛されました。その精神は、現代にも脈々と受け継がれているように思います。今回の竹島/独島の問題、ロシアとの領土問題に加えて北朝鮮との拉致問題、あるいは昨今のTPP「交渉」参加を巡ってすら同様です。政府が国民の支持を取り付ける上で求められるのは、外交の場面でいかなる成果を上げることなのでしょう? 粘り強い交渉の結果として双方の妥協点を見出すのか、それとも一方的に自国の主張を繰り返しては、国内に向けて相手国の非を訴えるのか……

 北朝鮮から拉致被害者を帰還させたことは小泉純一郎の唯一と言っていい正の功績ですが、当の拉致被害者家族や関係者が専ら支持してきたのは、拉致問題を何一つとして進展させることのなかった安倍晋三でした。そういうものなんだろうな、と思います。問題解決より、憎き相手に対して強硬な姿勢を取ってくれることこそ、これ見よがしに相手を非難することこそ望まれているものなのでしょう(この辺は原発/電力問題でも同様で現実的な解決策を模索するより、いかに原発と電力会社を罵れるかが競われているわけです)。竹島/独島訪問で領土問題に進展が出るとは考えにくいですけれど、李明博大統領の国内での支持率には寄与するものと予想されます。それは日本側も同様、韓国政府に対していかに「強い態度」を取れるかどうかで支持率が上下することもあるはずです。その辺、民間から起用された森本防衛相は鈍感でしたけれど、玄葉外相は敏感だったと言えます。外交面でどうこうと言うよりもまず、国内の有権者を前にどんなポーズを取れるか、そこが問われる事態なのです。

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