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和歌山県に見る、クラスターを防いだ柔軟さと決断力 - 友森敏雄 (「WEDGE Infinity」編集長・月刊「Wedge」副編集長)

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新型コロナウイルスへの感染が疑われる人への早期検査と、濃厚接触者をはじめとした関係者の追跡を徹底することで、初期段階での感染拡大(クラスター)を防いだ和歌山県。現場のトップとして対応した福祉保健部・野尻孝子技監に話を聞いた。


(sasirin pamai/gettyimages)

2月初旬、和歌山県の済生会有田病院で、医師と患者に新型コロナウイルスへの感染が疑われる事象が発生した。この時点で、県内に感染者は発生しておらず、政府のガイドラインは、「中国への渡航歴がある人」か「重症者」であれば、新型コロナウイルスを調べるPCR検査をするというものだった。

政府のガイドラインには当てはまらなかったが、和歌山県福祉保健部・野尻孝子技監は検査を行う決断をした。

その結果は陽性。もし、ガイドラインに従って検査しないでいれば、病院内で感染拡大(クラスター)が起きていた可能性もあった。柔軟な考え方で、独自の判断をしたことがクラスターの防止につながった。

「もう少しファジー(柔軟)に対応しようと考えました」という野尻さんは、決断した理由を2つあげる。まず、感染が疑われる2人の医師に同じような肺炎の症状が見られ、診察した病院の院長からも疑いがあるという意見をもらったこと。もう1つは、感染が明らかになるのは、感染が病院や老人福祉施設等の集団に持ち込まれた場合だろうと考えていたことだ。

2月13日、仁坂吉伸知事が記者会見して陽性が2人、調査中が3人いることを発表した。野尻さんは、済生会有田病院に対して、外来の中止、入院の受け入れと入院患者の退院の中止、外来受診者のうち発熱などの有症状者に対応する接触者外来設置などを要請した。

全員検査

さらに仁坂知事は重要な判断をした。濃厚接触者、職場関係者など感染の可能性がある人、全員の検査をするというものだ。当初は、野尻さんも「全員」とは考えていなかったという。それもそのはずで、職場関係者など含めると、検査数は膨大な数になる。

検査には優先順位をつけた。濃厚接触者、家族など可能性の高い人から順に検査を行った。病院が電子カルテを導入していなかったこともあり、医師と接触した患者を追跡するには大変な手間がかかった。

接触者を抽出したうえで、これも国が出していたガイドラインとは異なり、無症状の人も含めてPCR検査を行った。その数は474人にのぼった。

「医師が感染したというインパクトは強烈でした。だからこそ、可能性のある人、全員を検査するというメッセージは、医療関係者を含む県民へ安心感を与える効果があったと思います」

さらに、「この時点ですでに地域に広がっている可能性もあるのではないか?」と、野尻さんは考え、県内にいる全ての肺炎患者(171人)も検査することにした。

検査数を多くすることで、感染者が大量に出た場合、医療崩壊が起きることが懸念されるが、初期の段階であるからこそ「県内の広がりを把握する方が大事で、広がらないようにすることが医療崩壊を防ぐことになる」と考えていたという。

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