マレーシアの首都クアラルンプール市内で警戒にあたる警察官。活動制限令下で飲食店が営業していないかなど厳しく取り締まりがされている状況だ - 撮影=海野麻実
強化される罰則、醸成される国民の危機意識
現在、世界各国は続々とロックダウン(都市封鎖)を宣言し、厳しい罰則や禁錮刑などを科す国も出てきた。私が住んでいるマレーシアでも、アジア初の「事実上の国境封鎖」と「活動制限令」が発動され、当初2週間(3月18日から31日まで)としていた外出制限が、さらに2週間延長された。

クアラルンプール市内のスーパーマーケットでは、入店前に必ず体温チェックのうえ、“ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)”を1m以上保つことが求められる - 撮影=海野麻実
医療や金融、薬局や食料品店など、生活に必要とされる業種以外の企業は休業し続けることになる。3月25日、マレーシアのムヒディン首相は「国民は負担に感じているだろうが、他に選択肢はない。延長はわれわれ自身の安全を守るためだ」と呼びかけた。27日には、新型コロナによる経済への悪影響を緩和する追加の経済政策を打ち出している。
事実上の国境封鎖および、外出禁止令が出た当初、数日間は各地でパニック買いが発生し、スーパーは混乱した。また、会社や学校が休みになったのをこれ幸いと、「田舎に里帰り」する人々が州をまたいで越境する許可証を求めて警察に駆けつけて長蛇の列ができるなど、普段は見られない異様な光景が繰り広げられた。
「ジョギングしただけで逮捕」の理由
22日からは政府が警察に加えて、軍隊を導入して取り締まりを厳格化。国民が「不要不急以外の理由」で外出していないか、監視を強めている。

首都クアラルンプールでは至るところで検問が行われ、行き交う車の通行理由などが細かく問われている - 撮影=海野麻実
そんな中、飛び込んできたのが、首都クアラルンプールにおける日本人拘束のニュースだ。
27日朝、クアラルンプール中心部から車で15分ほどの高級住宅街モントキアラで、警察の注意を無視してジョギングを続けたとして、日本人4人とアメリカ人、イギリス人、韓国人などあわせて11人が逮捕された。地元警察によるとジョギングをしていた11人は「警察の警告を聞き入れず、逮捕を避けようと不合理な言い訳をした」としている。

日本人4人を含む11人が活動制限令下でジョギングを続けたとして一時拘束されたニュースは、マレーシア国内で大きく報じられた
「30メートル歩くことさえ我慢しているのに」
実は、この拘束劇の発端の一因となったのは、ツイッターなどSNSへのいわゆる“ネット民”の投稿であると、地元紙で報じられている。
経緯はこうだ。
①あるツイッターユーザーが、モントキアラ地区でジョギングをする外国人駐在員と思われる男性や親子の写真を、「モントキアラに警察はいないのか?」というコメントを付けて投稿
②その写真があっという間に拡散
③マレーシア国民が、「なんと!? 外出禁止を忠実に私は守っていて、30メートル歩くことさえ我慢しているのに、この人たちはまるで休暇のように出歩いているわけなのでしょうか?」「この困難なときに、皆がお互いに敬意を払い合って行動する必要があることを信じています」「この人たちに自分勝手な行動をしないでほしいと言えないものか?」などとコメント
国民が一丸となってウイルス拡散のリスクを抑えようと外出禁止令を遵守している中で、憤りが渦巻いたかたちだ。モントキアラは外国人駐在員が多く暮らすエリアということもあり、「マレーシアの法律を守れないならば、国へ帰ってほしい」といった強いメッセージも散見された。
ジョギングをしていた11人はいずれも即日釈放されている。ただし、裁判で有罪判断を下された場合、約2万5000円の罰金か6カ月以内の禁錮刑、もしくはその両方が科される可能性があるという。

クアラルンプールの高級住宅街でジョギングをする外国人駐在員と思われる人々の写真が、市民によりツイッターに投稿された