新型コロナウイルスについて感染のリスクが身近に迫っている実感がある中で、人々の関心が高まっているのは感染を拡大させかねない場所をいかに少なくするかだ。
テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』は4月2日(木)、前日に施行された改正健康増進法によってパチンコ店も全面禁煙となって、フロア内の喫煙専用室でタバコを吸っている客の姿を放映した。冒頭の画像はその一部だが、新型コロナウイルスのリスクを下げるために多くの人が集まる場所を避けるべきなのに、かえって狭い密閉空間に喫煙者が密集している光景が衝撃的だった。
タバコ
ヘビースモーカーだったタレントの志村けんが新型コロナ肺炎で死去したことで、喫煙の習慣と新型コロナ肺炎の重症化との関連に関心が集まっている。
パチンコ
密集した場所で人々が接近して楽しむ遊技だが、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の要請が広がって繁華街で商店などが一時閉店を決める中で営業継続するパチンコ店が多く、そのリスクが注目されている。
『モーニングショー』はこの日も大半の時間を新型コロナウイルスの感染拡大についてさいていた。
筆者が注目したのは、街の中の光景として、改正健康増進法の施行で店内で全面禁煙を始めたばかりのパチンコ店の様子を取材していたことだ。
''' タバコとパチンコ。
'''新型コロナで多くの人がいま気になっている問題だ。
番組ではパチンコ店で全面禁煙が始まって喫煙室などが設けられた様子を取材。しかしかえって喫煙室に喫煙家が「ひとだかり」をつくって感染リスクを高めているような実態をリアルな映像で示していた。
そのうえで番組コメンテーターの玉川徹が迫っている感染の爆発的拡大を防ぐには政府、その最高権力者が「やれ」と命じて対策を進めるしかないという強い危機感を改めて示した。
番組は政府の専門家会議が前日に行った記者会見の内容をまとめて解説した。
東京や神奈川など「感染拡大警戒地域」では「家族以外での多人数での会食は行わない」などの対策を示したことを伝え、これについて出演者らが議論した。
(玉川徹)
「それも読みました。
『分析と提言』という中に入っていたので。
さっきも言ったが『分析と提言』に多いのが
行動併用を求める部分が非常に多いことですね。
つまり、市民が繁華街とか行かないような、ということで意識を変えてほしい、というようなことをすごくいっぱい書いてあるんですけど・・・
それは可能か?と。
つまりこれだけテレビでもメディアでも大変なことになっているよと言って
『あっ、これは大変だ。自分の報道を変えなきゃ』
という人はもうとっくに変えてますよ」
この後でコメンテーターの玉川徹は「パチンコ」を例に出して次のように発言した。
(玉川徹)
「いまだにパチンコ屋とか飲みに行ってる人たちにいまさら『考えを変えてください』と言っても無理なんじゃないかと僕は個人的に思っている。
たとえば勉強しない子にいくら『勉強しろ』と言っても勉強しないじゃないですか。
それと一緒ですよね。
勉強した方がいいに決まっているのにしないでしょ?」
(羽鳥慎一キャスター)
「じゃあ、どうするかというと閉めた方がいいと?」
(玉川徹)
「そう。だから、そこに踏み込むしかなくて。
だから(強制的に営業中止や立ち入り制限などの命じるなど)法律がある国では”ロックダウン(都市封鎖)するわけです。
日本は繰りかえし言ってきているように法律的にロックダウン(都市封鎖)することはできないです。
でも一方で日本はお上が言ったことには言うことを聞くわけです」
この後、玉川は行政がもっと強い指導をすべきとして再びこの業界を例示した。
(玉川徹)
「たとえばパチンコ。
パチンコ業界だって、(管轄する)警察庁が『(店を)閉めてくれ』と言ったら閉めるでしょう。
理由は言わないけれど。
それぞれお上に対してはいろいろな部分があるので。
そこは『(店を)閉めてください』と(警察庁が言うべき)。
これもそんなに長いことじゃないと思います」
これに対して、業界への経済的な影響を考えた羽鳥キャスターがバランスをとる発言をする。
(羽鳥慎一キャスター)
「あんまり長いと経済的な影響が出てきますからね。
もちろん命の方が大事ですが・・・」
(玉川徹)
「そうです」
筆者が知る限り、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、「パチンコ業界」に関連して監督官庁である「警察庁」に強い指導を求める提言がテレビ番組の中で出演者が行ったのはおそらく初めてだろう。
パチンコ業界に行政がどのように働きかけるべきなのかはテレビ番組でまだ大きなテーマにはなっていない。
ニュースでは菅官房長官が3月10日に記者会見で言及した事例がある程度だ。
菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、パチンコ店への対応について「警察庁が業界に対して、従業員に感染拡大しないような職場の整備についての特段の配慮、遊技機のハンドルなど、不特定多数の人が触れる場所を消毒するなど感染防止措置を要請している」と述べました。
そのうえで「パチンコ業界も自主的な取り組みとして、集客を目的とした広告宣伝の自粛を各パチンコ店に求めたほか、感染拡大を受けて、休業日を設けた店舗もあると聞いている。引き続き、警察庁が政府の基本方針を踏まえ、パチンコ業界で適切な対応が取られるよう指導する」と述べました。
出典:NHK NEWS WEB(3月10日)「警察庁がパチンコ業界に感染防止措置を要請」官房長官
そんな状況の中で数日前にTBS『サンデーモーニング』の中で司会の関口宏パチンコ業界に疑問を投げかけた。
筆者が関口宏と専門家のやりとりをヤフーニュース個人に書いたところ大きな反響があった。
そのときの記事は以下のものである。
「『パチンコはいいんですか?』関口宏が新型コロナ自粛で投げかけた素朴な疑問」
出典:ヤフーニュース個人(3月29日)「『パチンコはいいんですか?』関口宏が新型コロナ自粛で投げかけた素朴な疑問」
テレ朝『モーニングショー』で玉川徹が「警察庁は『パチンコ屋に(店を)閉めろ』と言うべきと発言したことはさらに一歩踏み込んだものだということができる。
小さなことのように思われるかもしれないが、新型コロナウイルス対策で具体的な官庁を名指ししてこうするべきだと注文する形の報道はこれまでなかなかなかったスタイルだ。
感染拡大でイタリアやアメリカのように医療崩壊などが起きてしまったら、半年や1年の問題では問題は終わらない。
すでに飲食店など様々な業種で自粛を求められて営業停止を強いられている状態だ。その中で「パチンコ店」だけが例外的に営業を続けていい理由は見当たらないように思われる。
むしろ玉川が言うように警察庁がパチンコ業界に「店を閉めてくれ」と強い指導を行うことこそいま求められるのではないか。
パチンコ店への行政指導はどこまで行われているのか。
ニュース番組では新宿歌舞伎町や銀座のバーなどの風俗店や飲食店など次々に営業を自粛に追い込まれている様子が日々放送されている。
ことは全国民の命にかかわることである。
本当に様々な個人や業界が「痛み」を分け合って最悪の事態を避けようとしている。
なぜパチンコ店だけは営業を続けたままなのか。
他の飲食店などと比べて、リスクが低いというような客観的な証拠があるのか。
もしパチンコ店が感染症拡大のクラスターになったときに警察庁のトップは責任をとってくれるのか。
政府のトップである内閣数理大臣の責任はどうなるのか?
パチンコ店については多くの国民がモヤモヤしている。責任者は明快に答えてほしい。
※Yahoo!ニュースからの転載