記事

【新型コロナウイルス】「まだ2人だけ…」。不安拭えぬまま福島県できょうから学校再開、始まった部活動。「原発事故後を思い出す」の声も

福島市内で2人の新型コロナウイルス感染者が確認された3月31日夜、福島駅の土産物店では「感染ルートが分かっていないだけに不安が大きい」と販売員が表情を曇らせた。一方で福島県教委は4月1日、当初の方針通りに学校を再開。県立高校の校庭には部活動を再開させた子どもたちの声が響いた。

福島県感染症対策アドバイザーは「まだ2人」と楽観的だが、このタイミングでの学校再開には疑問の声もある。原発事故から10年目の春。福島県は今度は新型コロナウイルスからどのように子どもたちを守るかという課題に直面している。




【「9年前を思い出す」】

 福島市内の県立高校では早速、野球部やソフトボール部、サッカー部に所属する生徒たちが校庭で部活動を再開させた。

 「昨日まで〝自粛〟でしたから、ようやくです」と女子生徒。一方で「昨日、発表された2人の感染者は感染ルートが分かっていないという事なので不安はあります」とも話した。

 生徒たちが身体を動かしている様子を男性教諭が複雑な想いで見つめていた。

 「難しいですね。子どもたちは走り回りたいでしょうし、でも昨日の事(福島市内で2人の感染者が判明)を考えると…」

 この高校では部活動を再開させるにあたって、なるべく密集しない事や普段よりは時間を短縮して効率的に練習する事などを生徒たちに注意喚起したという。これ以上感染者が増えなければ、予定通り8日に始業式を行うという。

 「状況はなかなか厳しいですよね。9年前を思い出します。震災・原発事故と同じように、新型コロナウイルスとの戦いも長期戦になるでしょうね」

 マスクをした生徒たちが次々と登校してくる。野球部員の声が校庭に響いた。男性教諭の表情は終始、硬かった。あの時、放射線から子どもたちをどう守るかという問題に直面した福島再び、子どもたちを守れるかという試練を迎えている。


福島県感染症対策アドバイザーを務める福島県立医科大学の金光敬二教授(感染制御学)。31日夕の囲み取材では「現時点で2人の患者さんしかいらっしゃらない」などとして、学校再開方針を変更しない福島県教委の判断に理解を示した


31日夕に福島県が公表した県内3例目4例目の概要。知事会見ではいくつもの質問が出たが、内堀知事は「詳細は調査中」と答えるにとどまった

【「感染拡がれば再考するべき」】

 「1例目2例目は輸入感染だったが、今回の3例目4例目は市中感染という事になるので、大変重く受け止めている。ただ、市中感染と言っても3例目4例目の方が福島県以外の方と接触して感染したのか、そうでないのか。今後、しっかりと疫学調査をして事実を明らかにしていく必要がある。それまで私たちは生活パターン、行動をそれぞれが考えて、少し寂しいと思うが人となるべく合わない方向で調整をしていく必要がある」

 31日17時から開かれた「第8回福島県新型コロナウイルス感染症対策本部員会議」の席上、福島県感染症対策アドバイザーを務める福島県立医科大学の金光敬二教授(感染制御学)は改めて、県民に慎重な行動を求めた。それではなぜ、予定通りに学校を再開させるのか。そこにリスクは無いのか。会議後の囲み取材で筆者は質問した。金光教授の答えは会議での発言と異なり、思いの外楽観的だった。

 「私、厳しめに人と人との接触はなるべく避ける方向でという風に言っております。確かにそうすると学校なんかまさに密に集まっている所じゃないかという事も言えるかもしれませんけれども、現時点でですね、2人の患者さんしかいらっしゃらないという事ですよね。学校もいつまでも休校にしておくわけにもいきませんし、国もそれをですね、状況を見ながら各地方自治体で考えなさいという風に言っています」

 「感染がもっと拡がる、あるいは学生、あるいは教職員のなかで感染者が出るという事になれば当然、再考していかなければいけないと思います。けれども、この2例をもってですね、学校再開が出来ないという状況では無いという事だと思います。やはり学校生活やる上では感染対策あるいは出来る限りの、〝3密〟みたいなものを避けながらという事になろうかと思いますけれども、現時点では(県教委の)判断は変わらないのかなと思います」


「第8回福島県新型コロナウイルス感染症対策本部員会議」に出席した内堀知事。会議中、ハンカチを口にあてて咳払いをする場面も。1日から学校を再開させる県教委の方針に異を唱えなかった=福島県危機管理センター


2例の市中感染が確認されたが、福島県教委は当初の方針通りに1日から県内の学校を再開させた

【再開を疑問視する県議も】

 16時から記者会見を開いた内堀雅雄知事は、「正確な情報に基づいて冷静に行動していただくようお願いを致します。これまでと同様、咳エチケットや手洗いの励行をはじめとした感染症予防を徹底するとともに、発熱等の風邪症状がみられる場合には外出を自粛するほか、改めて『密閉』、『密集』、『密接』の〝3つの密〟が重なる場所を避けていただく行動。

 特に感染の発見が難しいとされる若年層のみなさんも含め、慎重な行動、人混みへの不要不急の外出の自粛、イベントなどへの参加の自粛についてご協力をお願いを致します」と県民に呼びかけた。

 「風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続いている方、強いだるさや息苦しさがある方、また海外から帰国された方で発熱などの症状のある方は最寄りの保健所のセンターに御相談ください。今後も検査体制の強化や医療体制の確保に取り組んで参ります」

 学校再開方針については「現時点では1日再開に変わりは無い」と繰り返した内堀知事。記者から「今後、どういう状況になったら対応が変わるのか」と問われたが、「全国的な感染の状況等もふまえながら、今後、どういった形の子どもたちの対応が良いのかという事を県教委において真剣に検討していただいていると思います。現時点においては方向性は変わっていないという事で伺っております」と答えるにとどまった。

 専門家も県知事も〝様子見〟の状態。ある県議は「子どもたちの気持ちも理解出来る」とした上で、「危機管理は最悪の状況を想定するものだろう。学校を再開させてしまって本当に良いのか」と県教委の対応に首をかしげた。

 放射線の次は新型コロナウイルス。大人たちの「本気度」が試されている。

(了)

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    アビガン承認煽る声に医師が苦言

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    賭け麻雀苦言の労連トップが朝日

    和田政宗

  3. 3

    羽田で4人感染 ブラジルから到着

    ABEMA TIMES

  4. 4

    森法相の国会答弁ねじ曲げに呆れ

    大串博志

  5. 5

    安倍首相の言葉と行動大きく乖離

    畠山和也

  6. 6

    アベノマスクが唯一果たした役割

    田嶋要

  7. 7

    処分軽い黒川氏 裏に記者クラブ

    田中龍作

  8. 8

    パチンコ店団体の執行部総辞職へ

    東京商工リサーチ(TSR)

  9. 9

    誹謗中傷の規制急ぐ政治家を危惧

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  10. 10

    首相を猛批判 小泉今日子に変化?

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。