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パンデミックに喘ぐ欧米の新聞業界

世界中に広がるコロナウィルス のパンデミック。あらゆる産業が打撃を受けていますが、とりわけ、パンデミック以前から追い詰められていた、米国の新聞は、広告の激減でつらい局面にあるようです。

隣国カナダ、さらに英国でも同じような苦境が伝えられ、なんとも切ないのですが、最近、目にしたそうしたニュースの数々を記録しておきます。

今週、明らかになったのは、米国で最大部数を誇るUSATodayはじめ多くの有力紙を抱える新聞チェーンGannettのケース。CEOが社員にメールを送り、<Collective Sacrifice>みんなが、犠牲になろう、と呼びかけ、社員は6月まで毎月5日間の無給休暇の取得(実質的な賃金カット)の実施と、詳細は不明ですがさらなる賃金カットも行うことを告げたのです。

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CEOによれば、パンデミック情報を求めてアクセスは増え、オンライン購読の契約は増えているものの、広告主はキャンペーンを打たず、広告収入が絶不調だそう。

CEOは状況が好転するまでサラリーは受け取らず、役員クラスは25%の賃金カットになります。

同じく、今週初めに、日曜日と水曜日以外の紙の新聞の印刷を止める、と公表したのはフロリダの中堅紙Tampa Bay Timesです。

ここでもCEOからスタッフにメモが送られ、「過去2週間だけで広告出稿の相次ぐキャンセルに伴い100万ドル以上のコストがかかった。オンライン購読は伸びてるが、広告のロスをカバー仕切れていない」として、新聞印刷の大幅カットに加え、何人かは8週間の無給休暇の取得、残ったスタッフは勤務時間の短縮(賃金カット)になります。

4月6日の月曜から、この体制がスタートします。

また、先週のCNN Businessによれば、ルイジアナ州バトンルージュのThe Advocate紙では400人の従業員中1割が無給休暇を取るよう求められ、残った社員も週4日勤務(賃金カット)になったようです。

編集局の人員は120人とのことですが、無給休暇を取らされるのは、パンデミック、ロックダウンで姿を消したスポーツやイベント担当の記者たちのようです。

なお、CNNのこの記事では、3月27日までに、新聞やデジタルニュースメディアで300人が失職したと記しています。

Alternative newspaperと呼ばれる一般紙より地元の文化や話題、主張に重点を置いた週刊紙も、広告激減に苦しんでいるのは同様で、DailyBeastの取材によればどこも人減らしと賃金カットが当たり前になっているとのことです。

NiemanLabの記事も「コロナウィルス でAlt-Weeklyは全滅だ!」と嘆いていました。

隣国、カナダの新聞も苦しんでいます。

CBC(カナダ放送協会)は「カナダ大西洋岸で最大の新聞チェーンで従業員の40%に当たる240人をレイオフ」という記事を1週間前に出しました。同じ日に「ケベック州の地域新聞協同組合が紙の印刷停止」という報道もありました。

前者は、Salt Wire Networkといい、日刊紙5紙と2ダースあまりの週刊紙があるようですが、週刊紙のほとんどが暫定的に停止しており、日刊紙5紙のうち、プリンスエドワード島の2紙は1紙に統合されるとのこと。これで240人を最大12週間、一時レイオフにしました。

残ったスタッフも、一定額以上のサラリーを得ている人は勤務時間を減らし、賃金を20%カットします。もちろん、パンデミック、ロックダウンによる広告急減で立ちいかないからです。

また、後者は、昨年8月に破産した新聞グループの再建にあたり、裁判所が認めた協同組合形式のグループで6つの日刊紙からなりますが、ここも広告の「brutal dropで痛みのある決断を迫られた」と従業員に告知し、6紙とも印刷版は土曜日1日に限ることになり、3月25日からスタートしたそう。

この結果、従業員350人中143人が”暫定的”にレイオフされました。主として印刷と配達部門のスタッフが対象のようです。

つまり、一挙に400人近くも、一応「暫定的」と称していますが、職を失ったわけです。戻れる保証はありません。

こうした事態を受けて、カナダのトルードー首相は「コロナウィルス 情報を周知する広告出稿」という名目で「3000万カナダドル(23億円)」をメディア(多くは新聞向け?)に支出すると表明しました。焼け石に水かもしれませんが、政府も深刻に捉えているということでしょうか。

一方、英国では、パンデミックによるロックダウン開始時から、新聞の売り上げが30%落ち込み、広告市場の崩壊で、「多くのローカル紙の記者は職務停止となり、何百人もの記者が職を失うと警告されている」と報じたのはGuardianの先週末の記事。

とりわけ深刻なのがフリーペーパー。無代紙は駅や街角に置かれていますが、ロックダウンで通勤客が激減し、出歩く人も同様で誰も手にしなくなっているのです。

無代紙は広告だけが収入源ですから、手にしてもらえなければ、誰も広告を出してくれない。それ以前に、広告主が激減しているという最悪事態。

そこで著名なフリーペーパーEvening Standardがとった手段は、193年の歴史で初めてという無代紙の宅配という試み。今のところ、ロンドンの中心部に限られるようですが、一軒一軒の郵便ポストに昼過ぎから夕方早くにかけて投函して回っているのです。

その配達要員は、街中で閉店を余儀なくされた新聞販売所のスタッフ。

Guardianの別の記事では、ロンドンの北80kmほどに位置するミルトン・ケインズを含む大きな街々では、唯一、宅配されていたJPIMediaの無代紙が、配達要員の不足に広告が入らなくなったのが重なって印刷を停止し、3月25日過ぎから配られなくなっているようです。

これらの地区では唯一の宅配新聞だったそうで、影響は数十万人におよび、とりわけコロナウィルス から身を守るため、自宅でじっとしていて、デジタルに縁のない多数の老人は「信頼できる情報源を失った」と記者は嘆いています。

コロナウィルス で連日、多数の死者が出ている、イタリア人の知人は母国の状況を「terrible nightmare」恐ろしい悪夢、とメールしてきました。新聞業界がパンデミック下で置かれている状況もそうかもしれません。

今こそ正確な情報を豊富に提供しなければならない時に、記者を減らし、苦境に喘ぐ様はとても悲しい。

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