記事

今日から子どもへの体罰禁止 背景に子どもの権利 理解はどこまで進んでいるか

今日、4月1日から親権者等は児童のしつけに体罰を加えてはならないことが定められた。周知不足のためか、あまり知られていないのではないか。

A3_poster-min

■しつけで子どもの命が失われる

 令和元(2019)年6月に児童福祉法等改正法が成立したことで、令和2年4月1日から施行されるもの。

 背景にあるのは、児童相談所への児童虐待の相談対応件数は増加を続け、子どもの命が失われる痛ましい事件が続いていること。

 日本では、「しつけのために子どもを叩くことはやむを得ない」という意識が根強くあり、そのためしつけの名の下に行われる体罰が徐々にエスカレートし、メディアで大きく取り上げられているように、深刻な虐待を引き起こしていることがある。

■背景に子どもの権利条約

 国際的にみると1979年に世界で初めてスウェーデンが体罰を禁止して以降、1990年に発効した子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)に基づき、58か国(2019年10月末現在)が子どもに対する体罰を法律で禁止している。

 日本は、1994年に児童の権利に関する条約を批准したものの、条約に基づき設置された国連児童の権利委員会から数回にわたり、体罰禁止の法制化とともに啓発キャンペーン等を行うべきとしての指摘されてきている。

 これらの背景から児童福祉法等の改正法が成立した。

 法の趣旨は、保護者が痛みや苦しみを利用して子どもを押さえつけるのではなく、体罰などによらない子育てを進めるため保護者への支援強化、児童相談所の拡充と社会全体への啓発をするものだ。

■体罰の具体例

 体罰の具体例は今後示されるとしているが、厚生労働省の「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」報告書には、何らかの身体的苦痛や不快感を意図的にもたらす行為(罰)は、どんなに軽いものであっても体罰に該当する。体罰ではなく、暴言やけなしたり、辱めたり、笑いものにするような言動も子どもの心を傷つける心理的虐待として禁止されるとしている。

 例えば、下記の例も体罰としている。

・ 言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
・ 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・ 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・ 他人のものを取ったので、お尻を叩いた
・ 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・ 掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
・ 冗談のつもりで、「お前なんか生まれてこなければよかった」など、子どもの存在を否定するようなことを言った
・ やる気を出させるという口実で、兄弟を引き合いにしてけなした

■具体的に何をすべきか

 では、具体的には何が変わるのか。

 家庭内で行われる体罰を見つける手段は、そう簡単ではなく罰則が現状ではないため、どこまで浸透できるかは未知数だ。法では、都道府県に加え東京23区などの特別区や中核市(都内では八王子市)など一定の規模以上の自治体に児童相談所の設置への支援を行うなど児童相談所の拡充、体制強化が中心だ。

 武蔵野市など一般的な基礎自治体には、国や都道府県が体制の整備などに必要な助言を行うことができるとまでしか示されておらず、予算も含めて何をすべきか明確ではない。

 唯一あるといえるのが、広報・啓発活動に活用できるパンフレットによる周知活動により体罰などによらない子育てが応援される社会づくりを進めていくことだ(画像がそのパンフレット)。自治体が法の施行により、この周知をどの程度進めていくのか、他にどのような行動をするかも注目される。

■武蔵野市議会は、子どもの権利への意見書を否決している

 体罰禁止のベースになるのは、子どもの権利だが、このことについても否定的な意見を持つ人は少なくない。

 武蔵野市では、松下市長が令和2年度施政方針で「子どもの人権について条例化していく必要性を強く感じています。就任以来、議会の皆様からも度々条例化の必要性についてご質問をいただきました。熟慮を重ねてまいりましたが、現状を鑑み、より進んだ対応を行っていきたいと思います」と述べ、制定へ踏み出している。

 しかし、制定を求める議員と疑問視する議員がいるのが実情だ。

 武蔵野市議会では、平成16(2004)年に議員提出議案として『「子どもの権利条約」に基づいた子どもの権利保障に関する意見書』を審議したが、賛成少数で否決されている。つまり、当時の議会では子どもの権利の必要性を認識している議員は少数だった。以降、子どもの権利について、注目されることは武蔵野市政では少なかった。

 議員は4年に一度、選挙で入れかわるが、当時否決した会派(政党がベース)が賛成に変わるのか、変わるとしたら理由が何かも今後は注目されるのではないだろうか。

 いずれにせよ、法改正の趣旨を具体的にどのように実現するのか。法改正の理念になる子どもの権利の趣旨を理解し、体罰などによらない子育てどのように支援できるのかが、自治体、議会には問われてきそうだ。

 その前に、法が改正されていることの周知も重要だ。

【参考】
厚生労働省 体罰等によらない子育てのために〜みんなで育児を支える社会に〜
内閣府 児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の公布について
文部科学省 児童の権利に関する条約
ユニセフ 子どもの権利条約
武蔵野市議会 平成16年 議員提出議案第25号 「子どもの権利条約」に基づいた子どもの権利保障に関する意見書

あわせて読みたい

「児童虐待」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    羽田で4人感染 ブラジルから到着

    ABEMA TIMES

  2. 2

    米の人工呼吸器 購入約束に呆れ

    青山まさゆき

  3. 3

    国難に際して非協力的な日本企業

    篠原孝

  4. 4

    文春の名前出さぬ日テレに疑問

    水島宏明

  5. 5

    米倉涼子「ドクターX」を降板か

    女性自身

  6. 6

    アベノマスクが唯一果たした役割

    田嶋要

  7. 7

    処分軽い黒川氏 裏に記者クラブ

    田中龍作

  8. 8

    パチンコ店団体の執行部総辞職へ

    東京商工リサーチ(TSR)

  9. 9

    森法相の国会答弁ねじ曲げに呆れ

    大串博志

  10. 10

    なぜ世界の株価は高くなったのか

    ヒロ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。