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  • 新恭
  • 2012年08月10日 19:31

財務省の高笑いが聞こえる

「一体改革」とは名ばかりで、実は公共事業へのバラマキを潜ませる増税案に過ぎない「社会保障と税の一体改革法案」が、参院でも可決され、成立した。

12兆円の税金を使っている天下り法人という「シロアリ」退治に向かったはずの野田首相が、シロアリの巣窟の居心地の良さに魅了されたのか、もっと税金をよこせと、シロアリの味方になってしまった。

肝心の社会保障をどうするかは先送りで、国民には重税感だけがのしかかり、これでは景気が上向くはずもない。

シロアリ賊の頭目、財務省という集金・分配モンスターは、日本国のカネをあてにする米政府とも、大企業の論理しか頭にない日本財界ともつながって、庶民のフトコロからカネをむしりとる方策をかねてから用意し、国民の代表としてそれを実現してくれる人物の登場を待っていた。

「改革」の仮面をかぶっていた野田の本性を見抜き、大蔵OB、藤井裕久の引きを頼んで財務副大臣に迎えたことが、当時の主計局長で今の事務次官、勝栄二郎にとって幸いだった。

財務省が長年かけて増税派として育ててきた谷垣禎一が自民党総裁に、同時に野田が財務副大臣から財務大臣を経て総理大臣になるという、まさに千載一遇のチャンスを生かすべく、財務省官僚たちが民、自、公の間を消費増税法案の実現をめざして奔走した。

「社会保障と税の一体改革法案」は、社会保障という大義名分と改革の名のもとに国民の目をくらませ、将来に幻想を抱かせる内容だ。

「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能」とする「附則18条の2」を法案にくっつけて、巨額と見込まれる財源の余裕分を公共事業にまわす仕組みにした。

利益誘導政治の復活を熱望する自民党の政治家に歓迎されることはうけあいだ。こうして民自公三党の合意ができあがった。

冷静な頭で考えれば、増税で社会保障に対応できないのは自明のことだ。

社会保障は当面の間、年々増え続けるが、消費税を毎年のように上げ続けることなどできはしない。

にもかかわらず、欧州経済危機などを利用した財務省の巧みな「ご説明」によって、消費増税で財政再建ができ社会保障も安心であるかのごとき宣伝が大手メディア各社の編集幹部や、有識者、学者、評論家と呼ばれる人々に浸透し、テレビ、新聞、雑誌を通じて世間に広がった。

財政健全化というウソで塗り固められたこの悪法の参院における採決をめぐって、「国民の生活が第一」など自公以外の野党が不信任決議案と問責決議案を提出すると、それをきっかけに一時は財務省も頭を抱える事態に陥った。

自民党の谷垣総裁が「衆院解散を確約しなければ、不信任決議案と問責決議案を独自に提出する」と、三党合意に矛盾するようなことを言いだしたからだ。

早期解散で自民党が政権復帰できると踏む楽天主義者や、選挙資金が底をつかないうちにと焦る代議士浪人たちの激しい突き上げが、谷垣をうろたえさせた。

すかさず、財務省の影響下にあるマスコミが野田政権を援護射撃した。

◇首相と谷垣自民党総裁にあらためて求める。ここは一体改革の実行が最優先だ。両党首が先頭にたって事態を打開し、関連法案の成立を確実にすべきだ。(朝日社説)

◇実現目前の一体改革を白紙に戻すのは、愚の骨頂である。(読売社説)

◇首相と谷垣禎一自民党総裁の党首会談で民自公3党合意の崩壊を阻止しなければならない。(毎日社説) 

これらメディアを通じた財務省の間接支配ともいえる“指令”が谷垣に不信任決議案と問責決議案提出を思いとどまらせた。

ただ、谷垣は早期解散への党内の期待感に応え、民主党との妥協への反発を和らげるため、野田の「お告げ」を必要とした。

そこで、民主党の使者が伝えてきたのが「近い将来」の解散であった。わざわざ「将来」とつけて、削りやすくしたのがミソだ。

そのシナリオ通り、「将来」を削って、「近いうちに」の合意で自公が矛を収めるかっこうとなり、法案成立への道筋が整えられた。

民自公が“指令”通りにコトを運んだことをマスコミ各社は評価した。

◇改革の頓挫という最悪の事態だけは避けられた。(朝日社説)

◇「何も決められない政治」に再び戻る危機はどうにか回避された。自民党が強硬路線の矛を収めたことを、まずは歓迎したい。(毎日社説) 

◇野田首相は、低支持率にあえぎながらも、消費増税を実現し、国民に信を問おうとしている。党内外の妨害にひるむことなく、その信念を貫くべきである。(読売社説)

野田首相に歯が浮くような激励メッセージを贈る読売の姿勢といい、この法案を「改革」と言い切る朝日の能天気といい、読んでいるほうが気恥ずかしい。

明治以来続いているとはいえ、これほど大政党トップや大手マスコミが霞ヶ関の掌中で意のままに踊らされている図を見るのは、珍しい。

戦前のスローガン「満州は日本の生命線」を、今はやりの「決める政治」に置き換えてみると、どんな施策も決めればよし、といわんばかりの横並びマスコミ論調がいかに危険なものかがよくわかる。

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