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100万人あたりの死者数推移から見るCOVID-19感染抑止の現状

日本の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数が統計上では圧倒的に少ないことに対し、欧米メディアは、日本が単に検査不足で実態が反映されていないのか、それとも感染抑止がうまくいっているのか疑心暗鬼になっているようだ。国内でもその点を不安に思っている人も多いだろう。筆者もその一人だ。

一方で死者数に関しては、比較的実態に即したデータが得られていると見られており、日本の死者数が少ないことを根拠に、日本の感染抑止は「いまのところ」機能しているとされている。

人口が多ければ死者数も多くなるので、各国の人口で除して100万人あたりの死者数の推移を示したのが以下のグラフだ(対数軸)。インタラクティブ版では右上のメニューボタンから各国の表示ON/OFFをできるように作成しているので気になる人は試してみてほしい。

COVID-19-2020-03-31
医療崩壊を起こしたイタリア(191.8:2020/3/30現在の100万人あたりの死者数。以下同様)、スペイン(165.1)を始め、国家非常事態に突入している欧米諸国は軒並み20以上の高い数値を示している。数字の絶対値も重要だが、感染爆発の抑止の状況を見るにはグラフの傾きに注目すべきだ。これらの国は3月の上旬から中旬にかけて死者数を一気に伸ばした。最近緊迫度が上がってきた米国(9.1)、ドイツ(7.8)に関しても、グラフの上がり方を見れば、のっぴきならない状況であることがよく分かる。

一方で日本(0.4)は下位に位置し、薄青で示されているオーストラリア(0.7)と似たような傾向をたどっていることがわかる。数値的にはフィリピン(0.7)やブラジル(0.8)もほぼ同じ位置にいるが、特にブラジルはグラフの上がり方が急でこの先が不安だ。ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は「どうせ誰もがいつかは死ぬ」とロックダウンを拒否しているようだが、このままでは悲劇的な結末が待っている。

感染抑止に成功したとされる中国(2.4)はグラフ中ほどで特異な存在感を放っている。100万人あたりの死者数が2人を超えた程度で止まっており、このまま推移すれば中国の対応は成功だったと言えるだろう。

韓国(3.1)に関しては2月末の上昇具合は欧米諸国と同様の惨状だったが、3月以降は比較的抑止に成功しており、傾きで言えば日本と同様の推移を示している。このまま収束できれば称賛されるべき成果だ。オレンジで示されているイラン(33.7)に関しても収束の兆しが見え始めており、拡大が止まらない欧米諸国とは明らかに傾向が異なる。都市間移動禁止などの封じ込め策の強化が奏功すれば欧米に先んじて収束する希望が見えてきた。

感染症対策に関して見本となるのが台湾(0.2)だ。昨日3人増えたものの、現時点の死亡者数は5名に過ぎず、非常によくコントロールされていることがよく分かる。中国の意向を汲むWHOは台湾を排斥しているようだが、この未曾有の危機に何をやっているのだろうか。

これらの傾向を見る限り、少なくとも現状においては日本は菅官房長官の言うように「緊急事態宣言前のぎりぎり持ちこたえている状況」であると言えるだろう。罹患者は医療キャパシティの中に収まっており、死亡者数の増加という形では現れていない。

ただし、死者数という指標は一番遅れて現れる指標だ。死者数が急増してから慌てても遅い。より速く変化を知るためには、重症者数や感染者数の把握が重要になる。現状では日本の感染者数のデータは実態に即していない可能性が高く、即応が求められる事態の変化を見過ごしてしまうリスクがある。感染者は無症状であっても入院措置という原則を改め、無症状なら自宅隔離とし、医療崩壊を防ぎつつ検査数を増やす対策が必要だ。諮問委員会において緊急事態宣言を出したほうが良いという意見が大勢を占めているのも限界が近づいているという懸念からだろう。

本日東京都は7人が死亡、新たに78人の感染を確認をしたと発表した。確認された感染者数はこれまでで最も多く、6割が感染経路不明ということで、クラスター回避による感染抑止対策が崩壊しつつあることを示しているように見える。

日本が感染爆発抑止に成功するのか否か、答えはまもなく出る。

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