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書き手の責任について考察してみる

 前回のエントリー「影響力がなくても発言に責任はあるでしょ」に対して、イケダハヤト氏から、「書いたことに対して責任が存在すると常に襟を正すべきだろうって曖昧でよくわからない。個人攻撃ではなく、ここら辺を具体的に読みたいです」というリクエストを頂いたので、もうちょっと噛み砕いて考察してみることにする。少し長くなりそうなので、飛ばし読み推奨。あ、あと「個人攻撃」という表現、Parsleyからしてみればとても不本意だし不快だということは明言しておきます。どのあたりが「攻撃」なのか、明示して頂きたいですね。

 参考リンクはこちら。

 情報の受信責任と発信責任(Film Goes with Net)
 情報発信者の責任は「規範」に過ぎない(カエルの卵)

 まず、前提として以下3つの点を明確にしておきたい。

 「責任」と「文責」

 Wikipediaの「責任」の項には「元々は何かに対して応答すること」とある。また、日本においては「義務」と混同していることが多いともされている。イケダ氏もこのあたりがごっちゃになっている印象を個人的には感じているが、ひとまずおいておく。
 基本的に、社会において自由があるところには責任が発生する、というのは広く認識されていることのはず。つまり、「発信」する自由を行使したことに対する責任、というものからは逃れられない、という理屈になるね。

 また、メディアにおいて近年「文責」というものを明確にすることが求められている。新聞を全て記名記事にすべき、という議論も随分なされているし、個人運営のメディアが次々に生まれている現在に置いて、「誰によって書かれているのか」ということを明示し、疑問点や事実と異なる可能性があったことに対して「応答責任」がある、というのは社会的な「ルール」として運用されつつあるように思える。

 「発信責任」と「受信責任」

 杉本穂高氏がおっしゃっている、「情報の取捨選択の責任は受信側にある」というのは、責任を「自由」という言葉に置き換えればほぼ同意できる。一点補足するとするならば、受信したことをblogなりtwitterなり、誰でも閲覧できるネットで見解や意見を書いた際に、そのひとは直ちに発信側になる、ということ。つまり、ネットで何かを書くということは、受信者でもあり発信者でもある。

 だから例えば、受け手が「こんなアホなこと主張して死ねやボケ」ということを書いたとすれば、公の場で面罵しているのと同然だし、元の書き手がその気になれば名誉毀損と恐喝だと相手に「責任」を問えることになるね。
 イケダ氏にしろ、杉本氏にしろ、この「受信責任」というものを自己責任である、という意味合いで捉えているような印象を受ける。要は間違って解釈したりするのは、受け手の勝手でしょ、と述べていると私は読んだ。それに対する「責任は持てないよ」というのは書き手からしてみれば素直な感覚だし無理もないよなぁ、と個人的にも思うし過去にそう明言もした(拙エントリー参照)。その時もえらく叩かれましたがね(笑)。

 「責任」は「取らされる」ものではなく「取る」もの

 これはParsleyの感覚なので異論がある方も多いのではないかと推察するのだけれど、「責任」は誰かから強要されるものではなく、自覚するものなのではないかと考える。
 最近だとトライバルメディアハウスの植原正太郎氏が、「Lineが流行ってmixiは死ぬ」と題したエントリー(参照)で多くの批判を受けたが、その後にタイトルを変更して謝罪をしたのは、誰かに強要されたものではなく、ご本人が責任を感じたから措置を取ったという認識でいる。
 政治家もよく不祥事を起こした当事者について「出処進退はご自身がお決めになること」とコメントをするのも、基本的には「責任は自分で取るもの」という意識でいるものだと考えられる。

  
 前置きが長くなってしまった。ここからが本題。
 Parsleyが主張したいのは、次の二点になる。

 ・書き手は発信したことに対する「責任」を感じるべき
 ・「責任」に無頓着な書き手は信用されなくなっていく

 まず前者。これはネットでも紙媒体でも同様に、公の場に発信した文章に関して、誰かに何らかの影響を与える可能性があることを自覚することが大事だと思う。

 その上で、影響を与えられた側から感想なり批判なりを受けたり、自身の意図とは違う解釈をされることになったりすることが起きた際に、それに応答するなり甘受するなり、する必要がある。批判に対して反論する自由もあるし、スルーしたっていい。誤読やミスリードが起こった際、黙って受け止めて自責の念を感じるのも、立派な責任の取り方だろう。

 イケダ氏に関して特に感じるのは、「スルー耐性の低さ」。現代ビジネスの記事に対して徳力基彦氏が指摘しているけれど(参照)、ネット上ではエントリーやツイートに対してネガティブな反応があることなんて日常のこと。twitterのフォロワー1670、ブログのアクセス1万/月というParsleyでさえ、時には激しい批判を受けることがある。徳力氏はおやさしい方だからマイルドな表現にしているけれど、本音では「何を言っているんだこの青二才は」って思っていたに違いない。

 いずれにしても、ネットにしろ紙媒体にしろ、何かを書いて主張したり、情報発信をするした以上、他人からの眼差しからは逃れることはできない。そこには好意的なひとだけではなく、ネガティブな感情をぶつけてくるひともいるだろう。それを全部払拭しようとするのは、まぁ無理だよね。だから、「責任」を受容するということは、批判を甘受できるかどうか、にかかっているのではないだろうか。

 そういった中、「発信の責任よりも受ける側に責任がある」って強調したなら、「自分が書いた内容は適当なんだから信用しないでください」と捉えられても仕方ない。「それでほんとうにいいの?」というのが、イケダ氏に対するParsleyの問いかけになる。

 ということで、後者について。
 影響力の多寡によらず、書いている内容に対して誠実な対応をしているひとは信用される。先程も数字を挙げたけれど、木っ端ブロガーに過ぎないParsleyがネットメディアを中心にお仕事させて頂いたり、エントリーがYahooトピックスに取り上げられたり、Wikipediaの参照元にされたりするのは、書いていることに対して責任を持って発信していると認められているからだと思っている。

 一方で、面白くてエッジの利いた情報を提供したり、セルフブランディングによりアクセス数を増やしていくという手段を取るのは、短期的に効果を得ることがあるかもしれない。だが、先に記したような「責任」を軽視しているとすれば、「そういうひとなのだ」と判断され中長期的に見て信用が落ちていくのではないだろうか。
 現在多くのメディアは、アクセスが即ビジネスになる広告モデルを採用しているところが多いので、どうしても目先の数字を追いがちになっている。新聞でさえ、飛ばし記事や吊りタイトルを付けているところが珍しくなくなっている。その方向性は正しいとは思わないし、新興のネットメディアや個人運営のサイトほど、情報の信頼性や発信に対するクオリティには敏感にならなければならないのではないか。

 「書いたことに対して責任が存在すると常に襟を正すべきだろう」というのは、つまりそういうこと。
 たぶん、イケダ氏は情報発信することに対してもっとカジュアルでいいじゃん、というお立場なのだと推察するのだけど、ある程度、誰かに対して影響を与えたいと望んでいて、プレゼンスを高めようとするのであれば、ご自身が書かれている記事やツイートに対する責任を自覚しないと、どこかで落とし穴にはまるよ、と思うわけです。

 あと、イケダ氏は「法的責任」というところに対してご関心があるようなので付け加えると、最近では民事訴訟で名誉毀損など、メディアではなく筆者に対して問われるようになっているのは、2006年の烏賀陽弘道氏とオリコンの裁判(Wikipedia参照)が示している。

 例えばイケダ氏のニュースでは海外事例の紹介が多いけれど、その情報源があいまいなものだとしたらどうするのだろうか。IT企業の増資や減資、買収の検討といったものも扱っているので、もし虚偽だった際に、該当企業から訴えられる可能性はあるかもしれないね。もっとセンシティブなのは政治関連。最近ではミット・ロムニー氏のtwitterアカウント買収疑惑についてエントリーにしていたけれど(参照)、同じことを日本の政治家をしていたとして、疑惑レベルで発信していたのなら訴訟マターになるのは充分にありえるだろう。

 その時に「いやー情報の取捨の自由は読み手にありますから。あははは」なんて言説は通用しないでしょ。

 そんなこんなで。ネットでどんな小さいことでも発信する際には、自由を行使した責任というものが発生するし、その自覚と覚悟がないひとは、永久にROMっていればいんじゃないですかね、というのがParsleyの意見。私はイケダ氏からの応答責任を果たすという選択をしたが、このエントリーに対して、イケダ氏がどのような対応を見せるのか、期待せずに期待したいと思います。

 ついでに。「責任」ということに関しては、以下の書籍がおススメです。

小浜 逸郎
PHP研究所
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大庭 健
講談社
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