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なぜ安倍首相と小池都知事は「不要不急の会見」を繰り返すのか

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相と小池百合子都知事がたびたび記者会見を開いている。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「どちらの会見もあいまいな表現ばかりで、国民の不安を高めるばかりだ。全米で最悪の状況にあるニューヨーク州知事のスピーチとは正反対だ」という――。

なぜ安倍晋三首相と小池百合子都知事のコロナ会見はダメダメなのか

新型コロナウイルスの世界的大流行という未曾有の危機にあって、リーダーたちの「真価」が試されている。

安倍内閣総理大臣記者会見=令和2年3月28日
安倍内閣総理大臣記者会見=令和2年3月28日 - 首相官邸の公式チャンネルより

日本はこれまで最前線の医療や行政関係者の地道な努力で乗り切ってきたが、ついに感染が爆発的に拡大するかどうかの重大局面に差し掛かっている。そうした状況における不安材料が、安倍晋三首相と小池百合子都知事のリーダーシップの欠如だ。3月下旬に行われた2人の記者会見は、「日本流コミュニケーション」のダメダメさを凝縮したような大変残念なものだった。

一方、アメリカでは、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が天才的なコミュニケーション手腕を発揮し、絶望的な状況での「希望の星」として、人気を集めている。

今回は、リーダーとは危機のときにどんなコミュニケーションを心がけるべきかについて考えたい。

「ご協力を」「きめ細かな支援」……抽象的な言葉を並べた安倍首相

安倍首相は3月28日、コロナウイルスの感染拡大について3回目の会見を開いた。

安倍内閣総理大臣記者会見=令和2年3月28日安倍内閣総理大臣記者会見=令和2年3月28日 - 首相官邸の公式チャンネルより

その会見スタイルはこれまでと同じで、プロンプター(原稿が映し出される透明のボード)を見ながら、用意された原稿を一字一句漏らさず、読み上げていた。安倍首相は両側に設置されたプロンプターを交互に見るため規則的に左右に目をやる。その姿はロボットのように不自然で、聞き手(視聴者である国民)からすると、誰を向いて話しているのかわからない居心地の悪さがある。

何より、「彼自身の言葉」という感じが全くしない。

「ご協力を」「徹底的に下支え」「きめ細かな支援」「笑顔を取り戻す」といった抽象的な言葉を並べながら、行間にメッセージをにじませる。これこそ日本のお家芸である「以心伝心」「忖度」のコミュニケーションスタイルだろう。

「○○してまいります」という未来形に国民は不安を覚える

また、これまでと同じく「○○してまいります」という未来形が続くため、本当にこれで有事対応できるのかと心配になる。

もちろん人々の安全を確保しながら、経済を回すというのは大変に高度なかじ取りを求められる。あいまいな物言いをしなくてはならないのだろう。だが、そのあまりの歯切れの悪さ、中途半端さが、なんとももどかしい。

さらに気になるのは、このご時世に、ぎゅうぎゅう詰めの記者席だ。記者は記者で、事前に用意してきたような質問を順番に読み上げているようで、緊張感も臨場感もない。結局、せっかくの記者会見が「記者クラブ向けの内輪の儀式」になっていて、国民に正面から向き合っているようには見えない。

世界のリーダーたちは違う。ドイツのメルケル首相、イギリスのジョンソン首相などは、動画を通じて、国民に向けて直接メッセージを送るというスタイルをとっている。

会見にせよ、ビデオメッセージにせよ、本人の思いのこもった切実なメッセージであるべきで、国民一人ひとりの心にしっかりと届くような情報発信の形を考える必要があるだろう。

小池都知事はデータや医学的根拠がなく、あいまいな説明に終始

一方、小池都知事は3月25日夜に新型コロナウイルスについて初めての会見(※)を行った。フリップ(説明用の資料)を用意し、「感染爆発 重大局面」と視覚的にアピールするなど工夫も見られたが、データや医学的根拠がなく、あいまいな説明に終始した。たとえばこんな発言だ。

「平日につきましては、できるだけお仕事は、ご自宅で行っていただきたい。もちろん職種にもよりますが。それから夜間の外出についてもお控えいただきたい。この週末でございますが、お急ぎでない外出はぜひとも控えていただくようにお願いを申し上げます」

説明用の資料説明用の資料説明用の資料説明用の資料

非常にまどろっこしい。外出を控えるのはこの週末だけで、平日はいいということなのだろうか。「お急ぎでない」とは何だろうか。なぜ、「職種にもよるが、仕事はなるべくご自宅で行い、今後は、平日・夜間・週末を含めて、外出は控えていただきたい」とシンプルに言えないのだろう。

彼女のプレゼンでの強みは、決して怒りを見せない感情のコントロール力である。それは今回も発揮され、常に柔らかい表情をつくっていた。ただ、ときおり笑顔ものぞかせていた。それは緊張を和ますための戦略なのか、単なる愛想笑いなのか。平時ではない「重大局面」にありながら、なんだかひとごとのような、のんびりとした印象を受けた。

言葉を発すれば伝わると思い込んでいる

小池都知事は3月27日と30日にも会見を開いたが、残念ながらその印象は初回から変わっていない。直近の30日の会見は表情が厳しくなり、配布資料なども用意されたが、結局、印象に残ったのは、「夜のクラブやバーを控えて」と言うメッセージだけ。「外出自粛」を求めるものではなく、これでいいのかと戸惑いを覚えるものだった。しかも会見場はぎっちりで、ゴホゴホとせきをしている人がいるのがとても気になった。

小池知事 記者会見(令和2年3月27日)
小池知事 記者会見(令和2年3月27日) - 小池知事「知事の部屋」より

有事のときのリーダーは、自らの一挙手一投足が国民一人ひとりにメッセージを発していることを強く意識すべきだ。しかし日本の多くのリーダーは、ただ言葉を発すれば伝わると思い込んでいる。それだけでは意図通りの効果を発揮するとは限らない。

言葉を発することはあくまで手段であり、目的とすべきはどういった行動や感情を喚起するかだ。安倍首相や小池都知事をはじめ、日本の多くのリーダーはそうしたゴールイメージを計算できていない。

「プレゼンやスピーチは音響芸術である」

これは、くしくも、安倍氏のスピーチライターで、内閣官房参与である谷口智彦氏が筆者に述べた言葉である。であれば、こうした非常時にはなおさら、舞台装置も演出もジェスチャーも声も含めた総合的なパフォーマンス戦術を徹底して考え抜き、「演じ切る」覚悟が必要なのではないか。

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